2021.3.24 UP
今春からお弁当作りに挑戦という方々や、お弁当作りがどうも苦手という方々へ。毎日のお弁当作りの時間に頭を悩ませず、快適な時間にするには、ちょっとしたルールを自分の中に持つことが大切ですよ。
春はお弁当の季節。お弁当づくりをマスターすれば一生の財産になります。お弁当は食べる人のことを考えながら作るのがコツ。蓋をあけた瞬間の喜びを大事にしましょう。もちろん「食べる人」には自分も含まれます。僕も時々、自分のためにお弁当を作りますが、テレワークなどで在宅勤務という方も、朝に作ったお弁当をお昼に食べるというスタイルはオススメです。
お弁当作りは短期決戦。時間勝負です。手際よく、進めるためにはいくつかのルールがあります。今日はそのあたりを解説していきますね。
お弁当の基本はご飯。ご飯をしっかり食べる料理と考えてください。そのため、まずはご飯を炊きます。これが最初のルールです。
次にご飯とおかずのバランスを考えます。ご飯にあう甘辛い味のおかずを中心にして、甘いもの、淡白な野菜、漬け物のような味の濃いものを組み合わせます。水分の多い料理は汁がこぼれたり、早く傷んだりするので避けましょう。
お弁当の黄金比率は、
ご飯2:メインおかず1:サブおかず1の2:1:1です。お弁当箱の仕切りもそうなっているものが多いはずですが、色で考えるとメインのおかずとなる茶色に鮮やかな緑の野菜、卵の黄色、それに差し色となる赤が入ります。お弁当作りの初心者は「鶏そぼろと卵そぼろのお弁当」からはじめるのがオススメ。必要十分な要素がわかります。
また、お弁当作りには砂糖が大活躍。普段の料理よりも多めに入れると砂糖の保水性で、冷めてもしっとりと仕上がり、味付けもはっきりします。分量は出していますが、時間勝負なので目分量でつくれるのが理想。はじめは計って、次は目分量で作ってみましょう。
<鶏そぼろ>
[材料]
鶏ひき肉・・・150g〜200g
醤油・・・大さじ2+1/2〜3
砂糖・・・大さじ3
酒・・・大さじ3
[作り方]
① 小鍋にすべての材料を入れ、箸でほぐす。
② 箸で混ぜながら中火にかけ、そぼろ状になるまで火を通す。水分が飛び、箸で混ぜたときに鍋底が見えるくらいの状態になれば出来上がり。
<卵そぼろ>
[材料]
卵・・・2個(<那須ファーム> ぴよっこ(6個入)432円)
砂糖・・・大さじ1
塩・・・ひとつまみ
[作り方]
① ボウル(または小鍋)に卵を割り入れ、砂糖、塩を溶き混ぜる。
② 中火にかけて箸で混ぜながら火を通す。鍋に卵が固まってきたら火を弱火に落とし、鍋肌についた卵をかき取るようにしながらさらに火を通す。そぼろ状になればできあがり。
<スナップえんどうの塩ゆで>
[材料]
スナップえんどう・・・7本
[作り方]
① 鍋に湯を沸かし、吸い物くらいの濃さになるまで塩を入れる。(塩分濃度で0.8%が目安)筋をとったスナップえんどうを入れ、弱火で3分茹で、冷水にとる。
さて、組み立てです。炊きたてのご飯をお弁当箱に詰め、冷まします。冷ましたところに冷めたおかずを詰めていきましょう。
今回は春らしい色に仕上げたかったので、卵そぼろ2:鶏そぼろ1:スナップえんどう1の割合にしましたが、鶏そぼろを2にして、卵を1にしてもかまいません。スナップえんどうにマヨネーズを添え、赤は紅生姜で添えました。
どうでしょう。簡単ですが、彩りのバランスがとれていると思いませんか? そぼろは多めの分量になっているので、残ったら冷蔵庫で2〜3日保存できますし、冷凍すれば1ヶ月は保存でき、次にお弁当をつくる際に利用すれば手間を省けます。
お弁当は味の構成も大切。味の濃いそぼろに甘い卵、紅生姜でアクセントをつけたので、そこに加えるのは味の淡いスナップえんどうという具合です。
基本をマスターした後は、鮭弁当といきましょう。鮭弁当の鮭は自分で焼いてもいいですが、既製品があるのでそれを使います。お弁当は既製品と手作りを混ぜるのも効率的。おかずにはごぼうのきんぴら、卵料理は甘い卵焼き。緑はブロッコリーの塩ゆでにしましょうか。
鮭弁当
[材料]
鮭
<ごぼうのきんぴら>
ごぼう・・・100g(1本)
にんじん・・・50g(小1/2本)
ごま油・・・小さじ1
赤唐辛子(輪切り)・・・少々
醤油・・・大さじ1/2
みりん・・・大さじ1/2
[作り方]
① ごぼうは4〜5㎝に切り、太めの千切りにする。にんじんも同様に切り、ごま油と一緒に鍋に入れる。
② 中火にかけて炒める。2〜3分加熱し、しんなりしてきたら醤油、みりんを加えて、火を弱火に落としてさらに1〜2分炒める。皿にとって冷ます
<ブロッコリーの塩ゆで>
[材料]
ブロッコリー・・・適量
[作り方]
① ブロッコリーは小房にわけ、スナップえんどうと同様に塩を入れた熱湯で2分茹でる。冷水にとり、水気を切る。
<甘い卵焼き>
[材料]
卵・・・2個
砂糖・・・大さじ1(甘いのが好きなら1と1/2がオススメ)
醤油・・・小さじ1/2
[作り方]
① 卵をボウルに溶き、調味料を加えて混ぜる。
② 卵焼き器を中火で熱し、サラダ油大さじ1(分量外)をなじませる。箸の先に卵液をつけ、卵焼き器に落としたときにチュンと音がして、卵が固まる温度が理想。
③ 卵液を2/3注ぎ、焼き始める。四方から中央に箸で寄せるようにして、卵が半熟になったら、火を弱火に落とし、卵を上に寄せる。
④ 手前に残りの卵液を注ぎ、箸で上に寄せた卵を持ち上げ、卵液を滑り込ませる。
⑤ 奥から手前に巻いていき、手前にきたら卵焼き器の角をつかって形を整えたらできあがり。
さて、鮭弁当の組み立てです。まずはご飯を弁当箱の半分に詰めます。
次に手前に卵焼きを入れていきましょう。
さきほどはご飯でお弁当の真ん中に縦のラインをつくりましたが、今度は卵焼き器で横のラインをつくります。お弁当におかずをきれいに詰めたいときのポイントは縦と横の線を意識すること。お弁当は幾何学なのです。
空いている上部にきんぴらとブロッコリーを詰めます。
鮭をご飯とおかずの上に載せました。
差し色はミニトマトの赤。ご飯のお供に冷蔵庫にあったしば漬けとごま塩を振りました。
出来上がりです。ご飯さえ炊けていれば詰めるのはあっという間。それではルールを復習しましょう。
1 まずはおいしいご飯を炊くこと。
2 構成の黄金比率は2:1:1。色は茶色、緑、黄色があればよく、そこに差し色として赤が入ると気分が上がります。味の変化を大切にし、濃いもの薄いもの、辛いものと甘いものという具合にコントラストを出します。
3 ご飯は温かいうちにお弁当に詰め、きちんと冷まします。おかずも冷ましてから盛り込みます。熱い状態で蓋をしめないようにしましょう。
ここに一つだけポイントを付け加えるなら、蓋を開けた瞬間、喜びを感じられるように丁寧に詰めることです。僕が子供の頃の定番は唐揚げと卵焼きでしたが、食べたいものを詰めるのもいいものです。前日の夜に準備できるものを組み込むのも賢い方法。
お弁当は今では海外でもBENTOとして広まりましたが、日本独特の料理。詰める料理はかんたんなものでいいのですし、詰め方や構成もルールに従えば考えずに済みます。疲れた
ときも、忙しい時も、お弁当を前にするとほっとするでしょう。お弁当には日本料理のおおらかな部分が詰まっているように思います。
Text&Photo:Naoya Higuchi