美味しいコーヒーを作り出すワザと知識 BEHIND THE DOOR<キャピタルコーヒー>

2021.8.4 UP

家庭で愉しむコーヒーを届けて75年。変わらないおいしさを支える熟練の技の秘密に迫ります。きれいなコーヒーを維持する裏に、ワザと知識の継承がありました。

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五感とデータの両面を駆使して いつもの味を生み出し続ける。

「まろやかな味わいの中に果実の甘みも感じられ、清々しさを覚える。」〈キャピタルコーヒー〉のコーヒーは、新たな目を開かせてくれる一杯なのかもしれません。創業時の1946年は喫茶店で嗜むことが主流であったコーヒーを、家庭で、特に女性に楽しんでもらいたい、という想いから“きれいな味”を追求。年を経た今も受け継がれています。

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創業直後に稼働していた焙煎機を展示。

「畑からカップに注がれるまで、顔の見えるお付き合いのもとに成り立っています」。そう話すのは〈キャピタルコーヒー〉の営業部長・渡邊綾子さん。キリマンジャロやマンデリンの風味に魅せられ、この世界へ入りました。

「取引の前には現地を訪ねて、良質な豆が育まれる環境を確かめ、農園主と対話を重ねます。関係を長く続けるためにも、人柄を知ることはとても重要です。これまでタンザニア、ハワイ、インドネシア、コロンビア、小笠原、沖縄など、年に3〜4回は産地に赴いていました」

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1988年からブラジルで自家農園も営む。

真摯な姿勢は職人も然り。埼玉県川口市にある工場では毎朝、生豆の精錬から作業が始まります。機械を通して大方の異物や欠点豆を取り除きますが、最後に人の目でのチェックも行います。サイロに格納された後は2階にある熱風式焙煎の150㎏釜へと運ばれます。そこでザーザーザーと転がっていた豆は10分を過ぎた頃、パチッと爆ぜた音を立て始めました。温度計に目をやると203℃をマーク。水分が飛び始めた証です。内部の変化に耳を澄ませていた焙煎士は、テストスプーンを取り出し、頻繁に香りを確認。ローストの進行度は耳と目と鼻の感覚をフル活用して見極めていくそうです。その様子を目の当たりにしたシェフズセレクションバイヤー・五藤も「芳しいかおりが広がってきましたね」と期待に胸を膨らませます。冷却器で粗熱を取った後、さらに人の目と手で欠点豆を除去し、粉砕。ローストの具合をチェックするL値検査を行います。

 

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「有機栽培珈琲」シリーズで販売されているグァテマラの生豆。まだ香りはしない。

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精錬した生豆を品種ごとに格納するサイロ。12基あり、豆はほぼ毎日入れ替わる。

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ツヤを放つ豆を冷却している間、焙煎機周辺はコーヒーの芳しいアロマで満ちていた。

 

 

「職人が感性を研ぎ澄まして仕上げた豆を、今度はデータで測定します。果実は気候に左右されやすいのですが、カップへ注ぐ際にはいつもと同じ味でないといけない。生豆の状態に振り回されない焙煎技術は、職人の知恵と工夫の賜物で、脈々と受け継がれています。一方で、測定値は理論的な面での指針になる。この両立は〈キャピタルコーヒー〉に欠かせません」と渡邊さん。

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甘い香りが特徴のエメラルドマウンテンブレンドを焙煎中。豆のかおりを嗅いで釜から引き上げるタイミングを計る。品質を守るために、数値面からもローストの度合いを確認。

 

 

 

歴史を刻む同社には、容量が90㎏の炭火焙煎機もあり、しかも、1960年代から現役。芯までむらなく焼き上がるため、豆の香りとまろやかさが引き立ちます。火持ちの良さが特徴の紀州備長炭を採用し、この道20年超の焙煎士が腕を鳴らします。火加減を含めて熟練されたテクニックが求められるのです。

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炭火焙煎の90㎏釜。コーヒーに適した火の温度に調整するための技術力が問われる。

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炭火焙煎の熱源となる美しい炎。料亭でも重宝される「佐藤燃料」の紀州備長炭を使用。

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光沢のある断面が良質な炭の証であるそう。

 

 

 

この特別な釜で焙煎する銘柄の一つに「ハワイコナ山岸農園スクリーン18/19」があります。山岸秀彰さんがハワイで営む農園で完熟実だけを手摘みした希少品。渡邊さんは、山岸さんの畑へのストイックな姿勢が、心に沁みて離れないそうです。「土砂降りの中でも、収穫期には奥様と2人で黙々と実を摘みます。それは最高においしい完熟期を逃したくないから。熱い想いのこもった行動に衝撃を受けました。クリーンカップが際立つ、浅煎りなのに甘い一杯。唯一無二の味を再現するために、当社でも指折りの焙煎士を派遣。味だけでなく生産地の空気を感じてもらいました」

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ハワイコナ山岸農園スクリーン18/19(100g豆) 2,700円

畑の閉鎖に伴い今季で販売が終了。

 

 

 

情熱のバトンをつなぐ締めの工程はカッピング。挽き豆の状態でまず香りをチェックし、湯を注いでさらに嗅ぎます。4分後に攪拌をしてアロマを確認。その後、テイスティングを2回行います。温度の高低によって生じる味の違いを見分けていくのです。

 

 

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外観もチェック項目の一つであるため、カッピングのエリアでは焙煎前後の豆も並ぶ。圧巻!

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中粗挽きにした豆のアロマを嗅ぐ。ドライと呼ばれる工程で、この後に湯を注いでいく。

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湯を注いで1分ほど待ち、香りを嗅ぐ。1銘柄につき3カップを用意し、すべてを確認。

 

「山岸農園の新豆や〈マンデリンルビー®・グレード1〉など、〈キャピタルコーヒー〉さんらしい5種をカッピングさせていただき、手技とテクノロジーの結晶であることを実感。おいしさと安心を届ける。その誠実さに心を動かされました」(五藤バイヤー)

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〈キャピタルコーヒー〉

(左)炭火焼夢のかけ橋ブレンド(100g豆)735円

(右)ベストクオリティーブルーマウンテンno.1(100g豆)4,381円

 

写真:太田隆生

取材・文:松岡真子

 

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