2021.9.14 UP
秋の味覚、栗。煮物や肉の詰め物といった料理からデザートまで、使い方は様々。食材の旬に対する意識が薄くなった現在でも、栗はやっぱり特別な存在です。今くらいの時期から青果売り場につやつやとしておいしそうな栗が並びはじめます。
一方「どんな風に扱ったらいいかわからない」という人も多いのではないでしょうか。今日は栗について解説し、かんたんなデザートを二品紹介します。
〈フレッシュマーケット〉茨城県産 栗(1パック)1,080円
※時期により価格は変更になる場合がございます。
※生鮮品は天候等の諸事情により入荷のない場合がございます。
まずは栗の選び方から。上質な栗はツヤツヤとした薄茶色をしています。粒が大きいものほど高価ですが、小粒なものでも十分おいしいので大丈夫。保存はポリエチレンの袋に入れて、冷蔵庫のチルド室に入れましょう。
意外と知られていないのですが、栗は0℃〜-2℃で保存することでデンプンが分解し、糖に変わるので、甘くおいしくなります。兵庫県立中央農業技術センターの報告によると0℃で2週間貯蔵したところ、糖の量が1.7倍〜3.1倍になった、とのこと。品種によって異なりますが、2〜6週間でピークになり、その後ゆるやかに減少していきます。逆に言うと栗は長期間、保存できる食品。買ってきてもすぐに使えないかも……と焦ることはなく、じっくりと料理に取り組みましょう。
さて、栗の外側の硬い皮を〈鬼皮〉といい、それを剥くと身を覆っている皮を〈渋皮〉といいます。包丁で皮を剥く時は硬いので手を怪我しないように注意してください。もっとも、栗の味をシンプルに楽しみたければたいへんな思いをして、包丁で皮を剥く必要はありません。栗はまるごと茹でるか、蒸せば、それだけでおいしく食べられます。
たっぷりの水に栗を入れ、火にかけます。茹でる前に栗を水に浸ける、と指示している料理本もありますが、それは皮を剥きやすくするためと、栗に虫が残っていた場合の対処法。青果店で販売されている栗に虫はほとんどいないので、そのまま食べるのであればいきなり茹ではじめて大丈夫です。
沸騰したら弱火でことこと、1時間茹でます。串が刺されば大丈夫です。
とりだして半割にして、スプーンで中身をとりだしながら食べるのがいちばん素朴な食べ方。個人的な話ですが、僕も子供の頃はこんな風に食べていました。ちなみに茹で上がった栗を煮汁につけたまま冷ますと、幾分栗の中身はしっとりします。ほくほくが好きな方はザルにあげて、しっとり派は浸けた状態で少し冷ましてから食べるといいでしょう。
そのまま食べてもいいのですが、今日はマロンシャンティ風のデザートにします。
(材料)
茹で栗の中身 120g
グラニュー糖 20g
ラム酒 小さじ1 ※お子様向けの場合は、なしでも結構です。
マスカルポーネチーズ 100g
カステラ 好みで
チョコレート 少々
(作り方)
1 茹で栗は、中身をくりだし、ボウルに入れて、熱いうちにグラニュー糖とラム酒を混ぜる。マスカルポーネチーズを加え、さらに混ぜる。
2 グラスに小さく切ったカステラを入れ、上に1のクリームをのせる。
3 チョコレートを包丁で削ぎ、ふりかけたら出来上がり。
シャンティとは生クリームを泡立てたホイップクリームのことで、茹でた栗とホイップクリームを混ぜ合わせたデザートです。今回はホイップクリームの代わりにマスカルポーネチーズを使うことで、泡立てる手間も省いたバージョンです。
左〈烏鶏庵〉烏骨鶏かすていら(プレーン)(1個30g)249円
伊勢丹新宿店本館地下1階 甘の味/名匠銘菓
右〈タカナシ乳業〉北海道マスカルポーネチーズ (250g)636円
伊勢丹新宿店本館地下1階 シェフズセレクション
マスカルポーネチーズは生クリームにクエン酸を加え固め、水気を切ったもの。イタリア、ロンバルディア地方のチーズで、ティラミスの材料としても有名です。乳酸発酵の工程を踏まないフレッシュタイプのチーズで、クセがないのでジャムやコーヒーなど、何にでも合わせられます。
カステラを加えることで、味にボリューム感が出ます。好みでカステラにもラム酒やブランデー、グラッパなどいい香りのするお酒を染み込ませれば大人な仕上がりになります。
栗が温かいうちに砂糖やラム酒を混ぜると味のまとまりがよくなります。混ぜて栗が冷めたところでさらにマスカルポーネチーズを加えて混ぜるだけです。スプーンでとりだした茹で栗をフードプロセッサーなどにかければ滑らかになりますが、ホクホク感を生かしてそのまま混ぜたほうがおいしいと思います。
トッピングにはココアでもいいのですが、ここで一工夫。市販の板チョコレートを包丁で削って使うのです。脂肪分や砂糖が含まれていないココアに対して、チョコレートはリッチな味が魅力。お腹を支えにして(布巾などを挟むといいでしょう)包丁の刃を立てて手前に引くようにして削ぎます。
チョコレートの茶色が加わると栗のお菓子っぽい印象が強くなります。
スプーンですくってお召し上がりください。
次はもう少しさっぱりとしたスープ仕立てのデザートです。こちらも茹でた栗と牛乳、砂糖をミキサーにかけるだけ、と簡単ですが、口一杯に栗の味が広がる仕上がりです。栗のホクホクした食感が苦手、という方にオススメします。
(材料)
ゆで栗の中身 120g
牛乳 200ml
グラニュー糖 20g
タピオカ 15g
(作り方)
1 タピオカは一晩水に浸け、熱湯に入れて10分を目安に茹でる。水にとって冷ます。
2 茹で栗の中身、牛乳、グラニュー糖を滑らかになるまでミキサーにかける。1のタピオカを加え、器に盛り付ける。冷たくしても、温かくしてもよい。
おまけ タピオカの扱い方
〈朝岡スパイス〉タピオカパール小袋(85g)508円
伊勢丹新宿店本館地下1階 シェフズセレクション
数年前、流行したタピオカ。今ではすっかり影が薄くなりましたが、フランス料理の世界では昔からスープの浮身にしたり、牛乳で甘く煮てデザートにしたりと使われてきました。タピオカの袋には熱湯で50分茹でる、と書いてありますが、そのまま茹でるのはなかなか難しいもの。
タピオカは一晩、水に浸けてから茹でるとかんたんです。というのもタピオカはデンプンを固めたもの。熱い湯にタピオカを入れると表面のデンプンが先に糊化してしまい、水分がなかなか入っていきません。そこであらかじめ水を含ませておくことで、火の通りを早めることができます。
タピオカは水にとってから食べて、芯がかすかに残る感じが理想。冷蔵庫に入れるとデンプンが老化してボソボソになってしまうので、常温で早く食べるか、一度、温め直してからもう一度水にとって使います。シンプルで素朴な栗の香りが生きたスープにモチモチしたタピオカの食感がよくあいます。「今更、タピオカ」と思わずに料理やデザートに使ってみると楽しいでしょう。
Text & Photo Naoya Higuchi