おいしさを創る。おいしさを届ける。

2023.4.7 UP

パリに本店を構え伝統的な味と職人の手ワザを大切にする<メゾン・ランドゥメンヌ>。看板商品のバゲット作りに密着。

 

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左から、<メゾン・ランドゥメンヌ>グループオーナー・石川芳美、伊勢丹新宿店 デリ エ ブーランジュリー バイヤー・上小園結花

五感をフル稼働して焼き上げる。 全工程で生地の状態をつぶさに観察し、音も聞く。

「いい“手”を持っている」。仏では腕が立つ職人をこう例えるそうだ。オーナーでブーランジェの石川芳美さんは続ける。「そう呼ばれる人は、触るだけで生地の状態を見極められます。一聴すると、技術の習得とともに身に付きそうな気がしますよね。でも、そうじゃない。五感を研ぎ澄ませながら実践を重ねる必要があります。なぜなら、湿度や気温で生地のコンディションは毎日変わるから。触感、音、色、香りなど生地が放つ微細な変化を察知して、水分量や捏ね具合などを調整して完成させるのです」

 

仏発のブーランジェリー<メゾン・ランドゥメンヌ>が日本に上陸して8年目を迎えた。シグニチャーでもあるバゲット・トラディションは、自家製酵母を用いて焼き上げる。

 

「実はパン作りの現場をゼロからじっくり見学するのは、初めてなんです」と、バイヤー・上小園結花は貴重な機会に嬉しさを隠せないでいた。

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<メゾン・ランドゥメンヌ>バゲット・トラディション 日本製(1本)330円

伊勢丹新宿店本館地下1階 デリ エ ブーランジュリー

バゲット・トラディションは、のべ2日かけて製造される。小麦粉、水とモルトエキスを混ぜて寝かせるオートリーズから開始。「15〜30分ほど過ぎると小麦粉がグルテンを形成し始めます。それにより次のミキシングがしやすくなります。ここで注意をしたいのが生地の温度。バゲット・トラディションの捏ね上げの適温は22〜23℃が理想的。温度が高いと水で調整を図ります。いま、工房は21℃なので水を足さずにこのまま上がるのを待ちましょう」と、石川さんは温度計で測る前に生地に触れて判断していた。

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小麦粉、水とモルトエキスを混ぜるオートリーズ。捏ねながら理想の温度22℃を目指す。

下準備を経たらいよいよ本捏ねへ。オートリーズをした生地に自家製天然酵母、塩、イーストを加える。

「’06年に友人のブーランジェから分けてもらった酵母です。パリから日本へ運び、その都度、継ぎ足しています。(※1)天然酵母が100%では酸味が強過ぎるので(※2)イーストを足しています。そうしてまろやかな酸味を実現しました」(石川さん)。およそ20分間ミキシングしたら、ポワンタージュ(一次発酵)。30分ほど経過すると膨らむ生地のガスを抜き、ひと晩寝かせたら分割からスタート。楽器を奏でるかのごとく、リズミカルに生地を伸ばして整える石川さんの手捌きに上小園は釘付けに。

 

※1天然酵母:乳酸菌を含む自然界に存在する酵母。多種多様な酵母は旨味と奥行きを生み出す。

※2イースト:天然酵母の中から製パンに最も向いている酵母を取り出し、工業的に培養したもの。

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塩、天然酵母、イーストを加えてミキシングへ。

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ミキシングによって、グルテン膜を作っていく。

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バットに移して一次発酵。生地が放つツヤが美しい。

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天然酵母には高栄養でミネラルも豊富なフランス製オーガニックの石臼挽き全粒粉を使用。

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成形。焼く寸前までバゲット生地を守るため、キャンバス地で畝を作る。

形を作り終えたら、焼き上がり後の香ばしさを際立たせるためにさらに60分ほど発酵。丹念なステップを踏んで、いざオーブンへ。250〜260℃で25分間火を通す。

「あくまで時間は目安です。生地の状態で前後するのでオーブン前で観察し、ベストなタイミングでオーブンから出す。オートリーズからすべての工程で気は抜けませんが、ブーランジェとしてはもっとも緊張するステップですね。そして、私はこの瞬間がもっとも好き」。

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火を通している間もオーブンの前を離れることなく、焼きの進み具合を観察し続ける。

タイマーが25分を知らせる直前、石川さんが扉を開いた。その瞬間、香ばしい香りが広がる。できたての一本を手にした上小園は「焼きたてに触れさせていただき、パン作りにかける情熱と愛の深さを改めて実感しています」

 

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この日は焼き上がりの目安である25分の直前でストップ。ふっくらこんがりに完成。

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ずらりと並ぶ姿は圧巻。裏をトントンと叩いて焼け具合を確認。

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焼きたてを手にする上小園。香ばしく軽やかな仕上がりに感激。

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焼き立てを愛おしそうに手にする石川さん。

石川さんは日仏を往来するなかで、酒粕を加えたバゲットを考案。兵庫県で306年続く酒蔵<沢の鶴>の酒粕を混ぜて焼き上げている。「フードコレクションでの催事『SEA FOOD STYLE』の連動企画として販売した鯖サンドは、口にした瞬間に新しい扉が開けました。パンなのに和食との相性抜群」(上小園)

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コクと飲みやすさが同居する酒「沢の鶴」。

 

 

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<メゾン・ランドゥメンヌ>酒粕と青のり 日本製(1個)300円

伊勢丹新宿店本館地下1階 デリ エ ブーランジュリー

※販売期間:3月下旬まで

「酒粕特有のふくよかな発酵の香りが、そうさせるのかもしれないですね」と、石川さんが話すように、単品の酒粕バゲットは日本酒とも好相性。日本とフランスの食文化が融合する味を求めて伊勢丹新宿店本館地下1階<メゾン・ランドゥメンヌ>へどうぞ。

 

※パリ在住の石川さんが来日した時期に取材を行いました。

 

写真 太田隆生 

取材・文 松岡真子

 

 

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