2023.6.1 UP
野菜ソムリエとは、一般社団法人日本野菜ソムリエ協会が認定している民間資格です。2001年から資格事業がスタートし、6万人を超える野菜ソムリエが全国に誕生しました。協会認定の野菜ソムリエは、ソムリエバッジとカラーのチーフを着用して任務にあたります。伊勢丹新宿店には、赤のチーフの野菜ソムリエ、緑のチーフをつけた野菜ソムリエプロが常駐。野菜ソムリエの有資格者中でも、ソムリエプロの認定者は2,801名(2017年)と狭き門です。伊勢丹新宿店勤務歴6年のソムリエプロに話を聞きました。
フレッシュマーケットの店頭。シーズンの野菜がどんどんリレーしていきます。
―野菜ソムリエの資格を取得しようと思われたのはなぜですか?
「栄養士の資格は持っていたのですが、青果についてより専門的で正確な知識をつけたいと思ったからです」
―店頭でお客様からよく聞かれるのはどのようなことですか?
「野菜・果物のお日持ち、保存方法、調理方法、目利きの仕方などが多いですね」
―おすすめの野菜をひとつ、特長や食べ方を教えていただけますか?
「コールラビをご紹介します。ドイツ語のコール(キャベツ)とラビ(カブ)が名前の由来です。原産地は地中海エリアでアブラナ科の野菜。カブのような丸い形でほのかに甘いのですが、魅力は不思議な食感にあると思います。おすすめの食べ方は、オリーブオイルでグリル焼き。味付けは塩・黒胡椒のみで、お肉料理の付け合わせで食べるのもおすすめです。生食もいいですね。拍子切りにしてポン酢×マヨネーズやわさび×マヨネーズで、ユニークな食感を味わってみてください」
―伊勢丹新宿店ならではの野菜・果物やお客様に人気の野菜・果物を教えてください。
「野菜ですと、トマトや枝豆は種類がとても豊富で、ファンがついている品種も多いです。藤十郎だだちゃ豆(8月上旬~9月)、月兎豆(8月上旬~8月下旬)、ミニトマトの優糖星(11月下旬~7月上旬)、フルーツトマトのアメーラ(通年)、朝採れのとうもろこし(時期確認)や寒じめほうれん草(11月下旬~1月中旬)も人気があります。果物になりますと、太陽のタマゴ/マンゴー(4月下旬~6月下旬)、ルビーロマン/ブドウ(8月中旬~9月上旬)、まりひめ/苺(1月上旬~4月上旬)などが人気で、季節ごとに人気野菜・フルーツがあります」
年間を通じて全国から様々なトマトが並びます。
―お客さまとのやりとりで印象的な経験はありますか?
「電話で冬瓜を注文されたお客さまがいらっしゃったのですが、天候不良で欠品していました。代わりに青パパイヤを提案しました。下処理の方法や調理方法などをお伝えしたところ、後日遠方からご来店いただき『とても美味しくできました。家族も喜んでくれました!』と言われたことです」
―野菜の情報や日々の接客のためにどんな勉強をされていますか。
「栄養士、野菜ソムリエプロの教科書はよく復習します。新しい情報の入手のためには青果ニュースなどにアンテナを貼っています。野菜ソムリエ同士の情報交換も役に立ちます。新しい野菜は自分で購入して、家で調理して、自分の言葉でお客様に伝えられるようにしています。栄養士の資格もあるので、メニュー提案は得意です」
かつて、町の商店街などでは八百屋さん、お客さまの間で「今日のおすすめは何ですか?」のような会話がよく交わされていました。伊勢丹新宿店のフレッシュマーケットでは、今なおそんな光景が繰り広げられます。生の対話を楽しみ、新たな野菜や季節の野菜、食べ方の発見をライブで知る楽しみ。赤(野菜ソムリエ)や緑(野菜ソムリエプロ)のチーフの野菜ソムリエを見かけたら「今日おすすめは何ですか?」と聞いてみてください。
伊勢丹新宿店フレッシュマーケットでは、定番の野菜とは別に<ファーマーズ クリエーション><オーガニック ベジタブルズ>といったコーナーがあります。伊勢丹新宿店独自の目利きが特に発揮されているコーナーで、この2箇所だけでも年間1,200種類以上、1ヶ月で100種類以上の野菜が扱われています。
<ファーマーズクリエーション>
ファンの支持の厚い人気生産者のコーナー。海老原ファーム/エビベジ(栃木県)、高農園(石川県)、コスモファーム(香川県)、かほくイタリア野菜研究会(山形県)などがラインナップされている。
<ファーマーズクリエーション>の生産者は、お客さまのニーズを常に研究し、彩り豊かな野菜や使い切れる野菜セットのアイテムなど、常に新たな提案にチャレンジ。美味しさも一味、二味違います。都内有名レストランでも扱われていることの多い野菜です。
<オーガニックベジタブルズ>に並ぶのは、有機JASの野菜の他に、在来種のような地域に根付いて固定種の野菜も。なかなか一般のスーパーではお目にかかれない野菜が並びます。
<オーガニックベジタブルズ>
オーガニックの自然薯も特定のファンのついている野菜。少々ニッチな野菜でも、ファンのついている野菜が選ばれます。
すっかり定着したエディブルフラワーも伊勢丹新宿店らしい野菜売り場の光景です。
日々の食事を自ら選び、作ることを楽しむお客さまに支えられているフレッシュマーケットは、実は食品フロアの隠れた花形といって良いかもしれません。毎日移り変わる野菜・果物たちが、見る人々の目を楽ませんてくれます。そして、この場所を使いこなすのには、野菜ソムリエの存在が欠かせません。
Text : FOOD INDEX編集部
Photo: Yu Nakaniwa