【日本橋三越本店】清流と育む川の幸。
奥多摩やまめのふるさとへ

“渓流の女王”と称されるやまめ。焼き物や天ぷらが一般的ですが、刺身にできる特別なやまめが存在するのをご存じでしょうか。その名も「奥多摩やまめ」。その味わいに魅せられて、奥多摩町へ移住し養殖業をはじめた若き生産者がいます。今回、日本橋三越本店にやってくる奥多摩やまめのふるさとを、三越のバイヤーたちが訪ねました。
人生を変えた「奥多摩やまめ」
「きれいですね!今何センチくらいですか?」
「この区画にいるのはまだ30センチ程度。ここからもっと大きくなりますよ!」
奥多摩駅から車で30分ほど山を登ったところに広がる養殖場。ここは日本橋三越本店で販売するやまめを生産する<奥江戸水産>の養殖拠点のひとつです。
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現在養殖中の奥多摩やまめ。ここからさらに1年かけて体長約50センチ程度まで成長する。
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9面の養殖池がある、奥多摩山中の養殖場。
現場を訪れた和洋総菜担当の鈴木と生鮮・グローサリー担当の南雲に、<奥江戸水産>代表の西方 亮さんと技能長の持田さんが、奥多摩やまめをたらいに入れて間近で見せてくれました。
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奥多摩やまめを見せてもらう和洋総菜担当の鈴木と生鮮・グローサリー担当の南雲
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魚の体長を計測する機器は手作り
「この養殖場では、一般的なやまめと、奥多摩やまめの両方を育てています。元来やまめは寿命が約2年、体長は20~30センチほどのため、大きさ的に刺身を取ることはできません。
一方、奥多摩やまめは寿命が3~4年、体長50センチ程度まで大きくなります。」
そもそも、一般的なやまめと奥多摩やまめの違いとは?なぜ、そんなに大きくなるのでしょうか。
「食用利用を広げるために、1998年に奥多摩さかな養殖センターが品種改良に成功したのが奥多摩やまめです。受精卵を温度処理する技術によって、生まれる魚がすべて雌になり、産卵をしない個体になります。そのため、卵に栄養をとられることがなく、魚体が大きくなり身に脂もしっかりのって、おいしくなるんです。」
これは種なしスイカなどと同じ原理で、遺伝子操作ではないため安心して食べることができるそう。
「また、天然の川魚は人体に害のある寄生虫がついているリスクがあるので生食ができません。しかし、私たちのやまめは管理した養殖池で、配合飼料で育てているので、刺身で食べることができるんです。」
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鶏肉由来の配合飼料。魚粉ベースの飼料よりも身の魚臭さがなくなる。人体に害があるものは含まれず、人が食べても平気。
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養殖場の水域には、きれいな水にしか住まないヤマアカガエルや蛍も生息。
西方さんが奥多摩やまめに出合ったのは2022年。旅行に訪れた奥多摩で刺身を食べ、あまりのおいしさに驚いたといいます。「真鯛のように上品で淡泊、でもブリのように脂がのっている。とにかくこれまでに出合ったことにない美味しさに感動したんです。」
もともと都市部で証券会社や広告事業などの会社勤めをしていた西方さん。自分が感動した魚を作る側になろうと、一念発起して養殖業へ転身したというから驚きです。
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真冬には0℃近くなる水に浸かり池の掃除や魚の世話をする。
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<奥江戸水産>では、稚魚から出荷まで育ちあがる生存率が約95%と非常に高い。ていねいな世話のたまもの。
西方さんは奥多摩さかな養殖センターでのアルバイトからスタートし、地域おこし協力隊へ就任して地元の漁協で働きながら養殖のノウハウを身につけ、2025年1月に<奥江戸水産>を設立しました。現在スタッフは西方さんと持田さんの二人のみ。養殖池の掃除や水の管理、餌やりなど、365日欠かすことができない作業は大変では?と思いきや、「毎日やまめとふれあうのが楽しくて仕方ありません」と笑う西方さん。心底やまめに惚れ込んでいる気持ちが伝わってきます。
養殖池で育てるやまめの数は、一般的な養殖場の半分程度。ゆとりのある環境なので体表面に傷がつきにくく、のびのび泳いで元気に育ちます。そして、一番重要なのは水の管理です。生活用水が入り込まない上流の河川水を、紫外線殺菌した上で、100%掛け流しで使用。毎日水を抜いてかかさずブラシで壁や底を掃除する養殖池の水は、泥や糞ひとつなく澄み渡ってとても気持ちよさそう。
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峰谷川の上流にある取水口は、文字通り養殖の生命線。
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取水口の付近にはわさび田も。清らかな水環境。
「奥多摩やまめは、ありがたいことに味に高い評価をしていただき、注文したいというご要望をたくさんいただいています。でも出荷できるまでに3年かかるので、すぐに数を増やすことはできなくて、育った分からすぐに売れていく状態。正直、3年育てるということはコストがかかるので、おいしいけどなかなか育てる方が増えない魚だったんです。でも、僕はこのおいしさをもっと多くの方に知って欲しいし、水産業で生計を立てられる人を増やして、この地域の産業として盛り上げていきたい。自分たちが奥多摩やまめの生産をきちんと経済的に成立させることが第一歩だと考えています。」
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<奥江戸水産>の西方さんと持田さん(右から2人目と3人目)を囲んで。三越の鈴木、南雲は二人の想いのバトンを受け取って、お客さまに商品を届ける。
昨年度、<奥江戸水産>の奥多摩やまめの出荷量は130kgほどだったが、今年度からはさらに増産していく予定だそう。
「稚魚を作る水産試験場に数を増やしてもらうようお願いしたり、東京都に働きかけて、僕達が協業している小河内漁協で奥多摩やまめの採卵場を作ることも検討しています。奥多摩やまめが広がっていくために、日本橋三越本店という場所でお客さまに知っていただくのはとても嬉しいこと。ぜひ、僕たちの育てたやまめを食べて、感想を聞かせてください。」
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<𠮷川水産>奥江戸水産 奥多摩やまめ お造り 1パック 1,080円
[販売場所]日本橋三越本店 本館地下1階 生鮮
[販売期間]2025年7月2日(水)~7月15日(火)
[販売個数]各日30点限り
貴重な奥多摩やまめのお造り。ぜひその美味しさをお試しください。
※エムアイカード会員さま限定販売となります。詳しくは店頭係員におたずねください。
<奥江戸水産>のやまめを、素材の味をいかす和食の技で
一般的なやまめも育てている<奥江戸水産>。奥多摩やまめと同じ環境でおいしく育てたやまめの味わいは格別。和食の匠たちによる素材の味を引き出すシンプルな調理でどうぞ。
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<𠮷川水産>やまめの蒸し焼き 1尾 1,080円
[販売場所]日本橋三越本店 本館地下1階 生鮮
[販売期間]2025年7月2日(水)~7月15日(火)
[販売個数]各日30点限り
蒸し上げてから軽くあぶったやまめは、しっとりやわらか。身の繊細な甘みを堪能できます。付属のたで酢で爽やかさを添えて。
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<築地なが田>やまめ 塩焼き 1尾 1,944円
[販売場所]日本橋三越本店 本館地下1階 和総菜
[販売期間]2025年7月2日(水)~7月15日(火)
[販売個数]各日5点限り
姿良く串打ちし、味わい豊かな塩を振ってふっくらと焼き上げました。頭もうま味が詰まっていますので丸ごとぜひ。
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<てんぷら 山の上>やまめ 天ぷら 1尾 1,001円
[販売場所]日本橋三越本店 本館地下1階 和総菜
[販売期間]2025年7月2日(水)~7月15日(火)
[販売個数]各日20点限り
上質な油でからりと揚げたやまめは、繊細なうまみが衣の香ばしさに包まれ絶妙な味わいに。頭まで柔らかく食べられます。