
シャンパーニュにおける格付けの価値とはなんでしょうか。有楽町のフランス料理店「アピシウス」でシェフソムリエを務める情野博之氏に、シャンパーニュの格付けの基本から選び方までお伺いしました。グラン・クリュなら高級でおいしいんでしょ、というイメージを持っている方は必見です!
1. シャンパーニュ(シャンパン)の格付けとは?
シャンパーニュ独自の格付け「エシェル・デ・クリュ」は1919年に導入。ブドウは天候により収穫量にバラつきが出やすいため、栽培農家の保護制度として生まれたといわれています。
格付けは村(コミューン)単位で行われ、その基準となるのはブドウの取引価格。シャンパーニュにある319の村それぞれに対して、公定価格から100%〜80%で取引価格の格付けがされ、村ごとに比率に応じた価格で取引が行われていました。
中でも格付け100%の17村はグラン・クリュ、格付け99%~90%の44村はプルミエ・クリュと認定され、複数の村で収穫されたブドウでもグラン・クリュのみであればシャンパーニュのラベルに“Grand Cru”と表記することができます。
1999年からは格付けによってブドウの価格を決定する制度は廃止され、自由取引となっていますが、実際は廃止以前から定められた価格よりも高値で取引されることが多かったようです。現在は格付けが価格の高さと比例するとはいえませんが、ブドウの品質の評価基準として機能しています。
2. 押さえておきたいグラン・クリュは?
シャンパーニュのブドウ栽培エリアでグラン・クリュに認定されている村があるのは、ピノ・ノワールの生産地として名高い「モンターニュ・ド・ランス」、ムニエを得意とする「ヴァレ・ド・ラ・マルヌ」、シャルドネの聖地として知られる「コート・デ・ブラン」の3地区です。ここではシャンパーニュをもっと深く楽しみたい方におすすめの4つのグラン・クリュをご紹介します。
【メニル・シュル・オジェ村(Le Mesnil-sur-Oger)】
コート・デ・ブラン、そしてグラン・クリュの中で最南に位置する「メニル・シュル・オジェ村」。ミネラル感が豊富で鋭い酸を持っておりブレンド用として重宝されていますが、長期間の瓶内熟成を経ることで最もエレガントでパワフルなシャンパーニュとなります。唯一無二のシャンパーニュと称される「サロン」に使用されるのは、このメニル・シュル・オジェ村のシャルドネのみです。
【シュイイ村(Chouilly)】
グラン・クリュの中で最大の栽培面積を誇る「シュイイ村」。コート・デ・ブランのシャルドネでは珍しくミネラルや酸が控えめで、やさしい果実味と上品なボディやボリュームを感じさせる味わいが特徴です。
【アヴィーズ村(Avize)】
北のクラマンと南のオジェ、2つのグラン・クリュに挟まれた「アヴィーズ村」の作付け比率はシャルドネ100%。コート・デ・ブランを代表する畑の1つであり、しっかりとしたミネラルと酸を備えた存在感のあるボディが特徴です。RMでは、「アグラパール」「ジャック・セロス」など優れたRMを多数擁しています。
【アンボネイ村(Ambonnay)】
シャンパーニュの中心地であるランス周辺、モンターニュ・ド・ランスにある「アンボネイ村」。生産の80%以上がピノ・ノワール。その特徴は、ふくよかでエレガント、なめらかでやさしく豊満な果実感で、多くのラグジュアリーキュヴェで採用されています。アンボネイ村を拠点とするRMの注目生産者として「エグリ・ウーリエ」が知られています。
3. グラン・クリュ=おいしいシャンパーニュ(シャンパン)?
大手メゾンのシャンパーニュ(NM)は、ブレンド(アッサンブラージュ)して造られることが一般的です。そのためテロワールについて言及されることは少なく、「ドン ペリニヨン」や「クリュッグ」などプレステージシャンパーニュでさえグラン・クリュのブドウ100%で造られているわけではありません。
一方、自社畑のブドウのみで造る生産者(RM)のシャンパーニュでは、“Grand Cru”と表記されたラベルも比較的多く見られます。コストパフォーマンスに優れたものもありますが、あくまで産地の特徴を踏まえたうえで好みの味わいのものを選ぶことが大切です。
そしてブドウの質は、シャンパーニュのおいしさの基準の一つ、熟成期間の長さにも関わります。熟成により味わいのまろやかさ、深み、奥行きが出て、落ち着いた発泡感できめの細かい泡立ちとなりますが、もちろん長く熟成すれば良いというものではなく、原料のブドウや原酒のポテンシャルにもよっておいしく飲める熟成期間は変わってきます。グラン・クリュとされる畑のブドウは総じてポテンシャルが高く、長期の熟成に適しているため、多くのプレステージシャンパーニュではグラン・クリュのブドウが100%ではないものの大きな割合で採用されています。
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情野博之(せいの ひろゆき)氏
アピシウス シェフソムリエ。第6回ポメリースカラシップ優勝、第3回全日本最優秀ソムリエコンクール第3位、2019年ゴ・エ・ミヨ ガイド「ソムリエ オブ ザ イヤー」受賞。
監修協力

【ワインプラスカレッジ】
2022年1月、広尾に開校したワインスクール。全くの初心者から、プロフェッショナルまで様々な方々が楽しめる講座があり、国内外のコンクールで活躍するトップソムリエはじめ、各ジャンルの専門家が講師を担当。これまでのワインスクールとは一線を画し、内装にもこだわったスクールで、通うこと自体が楽しみになる場所を目指しています。