
“新しい生活様式”が求められる時代に、スイーツ業界のトップクリエーターの言葉を届ける本連載。
今回は、21世紀のスイーツを先導してきたブランド<ピエール・エルメ・パリ>の考える「スイーツの未来」です。

【ピエール・エルメ氏 プロフィール】
フランスのアルザス地方に4代続くパティスリー・ブーランジュリーの家系に生まれる。14歳でガストン・ルノートルの元で菓子修業を始める。常に創造性豊かな“オート・パティスリー”(高級菓子)のノウハウの伝授にも意欲を燃やしている。“パティスリー界のピカソ”と称賛され、あふれる菓子作りに挑戦し続け、2016年には≪世界のベストレストラン 50アカデミー≫による「世界の最優秀パティシエ賞」を受賞。近年は他業種とのコラボレーションも積極的に展開している。
<ピエール・エルメ・パリ>への質問状とその答え
Q 緊急事態宣言下、スイーツは人々にどんな機会や時間を与えましたか?
A 緊張を強いられる状況のなかで、ふと心が安らぐ機会を与えた存在であったと思います。スイーツを作る側である我々も、少しでもみなさまに心安らぐ時間を持っていただければと、できる範囲でしたが、医療従事者の方々へスイーツをお届けしたり、ご自宅で過ごされているお客さまとSNSを通じたコミュニケーションを取っていました。

医療従事者にも届けられた。マカロン15個詰合わせ 5,940円 ※パッケージ等は2020年取材当時の画像です。
Q 外出自粛生活の中で試作されたスイーツや、その魅力を再発見されたスイーツ、食べたくなったスイーツはどんなものでしたか?
A チョコレートムースやフランといった家庭でよく食べられるスイーツが食べたくなりましたね。しかし、自宅で自分や家族の作るものをずっと食べていると、ときには“オート・パティスリー”(高級菓子)が食べたくなることもありました(笑)。
お客さまも同じではないかと思い、こういう状況だからこそ“オート・パティスリー”を気軽に味わっていただけるよう、「おうちエルメ」というパティスリー(生ケーキ)のホームデリバリーを東京では行っていました。
※ピエール・エルメ・パリのホームページ限定のサービスです。現在は「プライベート デリバリー」と名称を変えて実施中です。

ブランドを代表するイスパハン。こちらは皆でシェアできるサイズ。イスパハン 1個 4,320円
※9月8日(火)まで販売休止
Q 今回の経験を経て、あらためてこれからスイーツは、人々にとってどんな存在であるべきだとお考えですか?
A 安らぎや、ときには勇気を与えるものであってほしいと思います。
また、スイーツはコミュニケーションのツールでもあります。「今日はどのスイーツにしようか」と店頭で選ぶ段階からセールススタッフやパティシエとのコミュニケーションが始まります。お店に行きにくかった自粛生活期間中は、それが難しくなってしまったのが残念でした。これからは、お客さまの安心安全を確保しながらも、コミュニケーションの楽しさが失われない方法を考えていかなければならないと思っています。