
日本人ならではともいえる、繊細な感性や手仕事から生み出されるジュエリー。伊勢丹新宿店のジュエリーアテンダントが出会った日本人宝飾作家やジュエリーデザイナーによる作品の思わず手に取りたくなるような魅力と、ジュエリーという小さな芸術品に秘められた情熱を解き明かします。

今回の案内人:ジュエリーアテンダント 武田奈津美
2013 年入社以来、伊勢丹新宿店 本館4階 ジュエリーで宝飾品の販売に携わり、2019 年よりジュエリーアテンダントに着任。日本ジュエリー協会認定 ジュエリーコーディネーター。ファッションジュエリーからブライダルリングまで、日々お客さまの特別なお買い物をお手伝いしています。
武田:今回は、「幻」と呼ばれた技術を現代に復元させた<Pique/ピクウェ>のジュエリーをご紹介いたします。<ピクウェ>のジュエリーは、華やかさと上品さが共存するデザインで身に着けるアートのよう。金やプラチナで象嵌された文様が、ジュエリー上級者のお客さまの目にも新鮮に映るのではないでしょうか。そんな<ピクウェ>の美しさは、宝飾作家である塩島敏彦さんの熱き探求心、そして堅実な手仕事から生み出されています。
ゴールドとプラチナのラインが奏でる優美なコントラスト

武田:幻想的な輝きの黒蝶貝にゴールドとプラチナで装飾を施し、ダイヤモンドや小さなパールで縁取った華やかなデザインのリングです。黒蝶貝から浮かび上がるグリーンやピンク、紫色と変化していく光、繊細に象嵌された文様の金銀色がお互いを際立たせます。ボリュームのあるリングですが、エレガントな曲線で女性らしい印象です。驚くほどなめらかに仕上げられており、着け心地も抜群。ドレスアップシーンにおすすめです。

武田:思わず目を奪われる、艶やかな帯留め。飴色のべっ甲に、地金でフラワーバスケットのモチーフが施してあります。温かみのあるべっ甲と、少しひんやりとした冷たさのある金属。質感の異なるもの同士から生まれるコントラストで、お花のモチーフがより活き活きと浮かび上がります。実は、こちらはペンダントトップ・ブローチとしてお使いいただける2WAY のジュエリーです。今回はブローチ専用の金具を使って、帯留めとしてお着物にあわせるご提案をさせていただきました。どんなファッションに、どんな風に合わせよう?とコーディネートを考えるのが楽しくなるジュエリーです。

<ピクウェ>
左:ペンダントトップ 1,430,000 円(K18YG、べっ甲、ダイヤモンド、K24、Pt999)
右:リング 2,530,000 円(Pt、K18YG、黒蝶貝、ダイヤモンド、パール、K24 、Pt999)
※ペンダントトップはブローチ、帯留めとしてもご使用いただけます。
□伊勢丹新宿店 本館4階 ジュエリー
現代に蘇る「幻の技法」ピクウェ ~宝飾作家 塩島敏彦さんインタビュー~

武田:白蝶貝や黒蝶貝、べっ甲などの有機物に金銀色の細工が映えるこれらのジュエリーは「ピクウェ」という特殊な象嵌技法でつくられています。この技術はかつて14 世紀頃にヨーロッパで生まれ、ジュエリーの装飾技法へと発展しました。しかしながら、19 世紀には伝承が途絶えてしまい、アンティークジュエリーの世界では「再現不可能な幻の技法」と呼ばれてきました。その技法を独自に研究し、現代に蘇らせたのが塩島敏彦さんです。塩島さんにピクウェ技法復元までの道のりや他にはない魅力についてお話を伺いました。

1954 年 山梨県に生まれ、象嵌作家でもある父 塩島東峰氏のもとで象嵌技術を取得する。アンティークジュエリーの文献で幻の宝飾品「ピクウェ」と出会い、イギリスに渡って研究。3 年の歳月を経て再現技法を確立し、世界で唯一のピクウェ作家となる(2021 年3 月現在)。
その他、アイボリーカーヴィングやパート・ド・ヴェールなど様々な技法を用い「人を飾る美しさ」を追求するジュエリー作家。1988 年、日本象牙工芸展において東京都知事賞を受賞。
武田:再現不可能と言われていた技法を再現するというのは、周りからするときっと無謀な挑戦とも言えることだったのではないかと思います。そんな中でピクウェを復刻しようと思ったきっかけは何ですか?また、復刻させるまでにどれくらいかかったのでしょうか?
塩島:美術品の象嵌作家である父親の元で幼少期から象嵌技術を間近で見て育ちました。そんな中、アンティークジュエリーの文献で「ピクウェ」を見た時に父親の象嵌技術を使って再現できるのではと思い挑戦したのが始まりです。ピクウェ技法で作られた品をロンドンのアンティーク市場を回って手に入れ分解してみたら、自分の想像していた通りの造りだったので、技法自体の再現は3か月ほどでできました。けれども、商品として精度の良いものを作り上げるためのシステム作りには3年くらいかかりましたね。途絶えてしまった技術が故に、使う道具も自分で作らなければならなかったから。
武田:最初にピクウェ技法で装飾されたジュエリーを見た時、失礼ながら表面に金箔やプラチナ箔を貼っているのかと思ってしまったんです。それほどに表面がなめらかで、まさかこれが金属を叩き込みながら嵌め込んでいるなんてとてもびっくりしました。制作の過程で特に大変なことはどういったところなのでしょうか。
塩島:まずプラチナやゴールドのパーツを作って、貝やべっ甲などの有機素材にパーツを入れるスペースを彫っていき嵌め込んでいくのがピクウェ象嵌の技術です。パーツにぴったり合う深さに彫らなくてはいけないのだけど、実は深さに関しては「勘」。深すぎても浅すぎてもだめで、誤差は100 分の2~3 ㎜の精度で仕上げなくてはいけません。さらに有機素材は宝飾品の表面形状としてそのほとんどが平らなものではありませんから、そのカーブに沿って作るというのも難しいところのひとつです。
武田:さすがの職人技ですね・・・。塩島さんの「技術力」あってのピクウェなのだと実感しました。最後に、塩島さんから見たピクウェの魅力を教えてください。
塩島:一言で表すなら、“光”です。宝飾品はすべてにおいて“光”があってこその美しさがあると考えています。その中でも、有機素材と金属とをミックスすることで生まれる独特の“光”は、ピクウェでしか再現できないものです。
―異なる素材が組み合わさることで生まれる光のハーモニーを、ぜひ<ピクウェ>のジュエリー
で楽しんでみてはいかがでしょうか。―
□3 月31 日(水)~4 月20 日(火) ー終了いたしました。ー
□伊勢丹新宿店 本館4階 ジュエリー/プロモーション
ジュエリーアテンドサービス
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