【三越イタリア展】伝統に革新の風を吹かせる 陶絵画作家マリア・アントニエッタ・タティッキ

【三越イタリア展】伝統に革新の風を吹かせる 陶絵画作家マリア・アントニエッタ・タティッキメインビジュアル

一目で彼女のものとわかるような、個性的で、心に訴えかける繊細な作品を創作しつづける陶絵画作家、<Maria Antonietta Taticchi/マリア・アントニエッタ・タティッキ>。アントニエッタさんが陶芸家を目指したきっかけや、古都ペルージャの歴史地区にある工房で意欲的に活動する彼女の創作の歴史や背景に迫ります。

代表作 絵皿「ウンブリアの天地」の画像
代表作 絵皿「ウンブリアの天地」

―アントニエッタさんが陶芸の道を志したきっかけをお聞かせください。

イタリア中部のウンブリア州の州都、ペルージャ市郊外の美しい田園地帯の中、すぐ近くを流れるテーヴェレ河のほとりに建てられた広大な“Villa Taticchi”「タティッキ荘」で、大家族の一員として私は生まれました。幼少の頃から祖母のマリアと父のチェーザレに手ほどきを受け、絵を描くことが大好きな少女でした。

16歳の頃、陶器に絵を描くことにも興味を持ち、近くにあったイタリア陶器の中心地、デルータで名人といわれた「グイド・モンタナリ」の工房に通ってマヨリカ焼きの秘技を教わりました。高校卒業後、ペルージャの「ピエトロ・ヴァンヌッチ」美術院に進学してすぐに、両親の支援を受けて初めての焼成窯を購入し、タティッキ荘の一室に最初の小工房ができました。はじめは家族や友人のための陶器を焼いていましたが、その後たくさんのお客さまの後押しを受けて各地の展示会に出品するようになり、大きな成功を収めることができたことは幸運でした。こうして陶芸家としての道を歩むことを決意しました。

ーご自身の工房を開かれてから、大切にしていること、こだわりを教えてください。

結婚してデルータ旧市街にある現在の家に移り、すぐ近くに現在の工房を立ち上げました。今でも二女のカテリーナと二人で楽しく創作活動に励んでいます。
私の工房では、すべて一点ものであることへのこだわりを持っています。特に絵付けは細い筆の先を使ってフリーハンドで施します。その結果、あたかも手描き絵画のように、一つひとつ異なる一点ものに仕上がります。私が特に好む手法は、顔料を混ぜ合わせたり、塗り重ねたりして無数の異なる色合いを表現するものですが、これこそまさしくキャンバスに絵を描く油絵画家が使う手法にほかなりません。

親子で絵付けを楽しむマリアさんの様子
親子で絵付けを楽しむマリアさん

陶器の絵付けでこれを実現することには、実は大変な苦労がありました。伝統的なマヨリカ焼きでは顔料はできるだけ混ぜずに単色で使うことが基本です。しかしこれでは私が表現したい無数の色合いを出すことができません。また、どうしても欲しい色の顔料すら当時は十分にありませんでした。自分自身で調合したり、実験したりすることを繰り返し、やっと自分の欲しい色を表現できるようになったのです。私の陶絵画がユニークなものであると評価していただけるのは、陶芸の手法と絵画の手法を融合し、誰もやらない世界で仕事をしていることにあると私は思っています。

好みの色を作り、表現したい作品を生み出すイメージ画像
好みの色を作り、表現したい作品を生み出す

ー色彩豊かな作品は、そのようにして作りだされるのですね。創作の源や、創作する過程で刺激を受けるものはどのようなものでしょうか。

父方の祖父、ジュゼッペはタティッキ荘の主人である一方、ウンブリア州の農業改革の推進に一生をかけた人でした。この祖父に連れられて麦畑やひまわり畑やワイナリーなどを見て回るうちに、私もウンブリアの田園や自然を深く愛するようになりました。今でも私の創作の主な対象は、ウンブリアの広々とした田園風景、中世のままの古都や村落・水辺・オリーブの樹々・葡萄畑・ヒナゲシの咲き乱れる原野などです。

ウンブリア州の美しい風景
ウンブリア州の美しい風景

「色彩にあふれたこの美しい大地は、一年を通じて私に訴えかけてきます。私の描くものは、自分を取り巻くこの大地を注意深く、かつしばしば大きな驚きをもって観察した結果にほかならないのです。私の陶絵画をご覧になる方々が、陶器の表面からさらに奥への広がりを感じ、あたかもその内の空間に入っていって、私と一緒に散策するような感覚すら覚えていただければ・・・それが私の創作の無上の喜びとするところです。」(訳注:アントニエッタの手紙から)

ウンブリアの四季を描いた代表作の画像
ウンブリアの四季を描いた代表作

ー三越イタリア展に来日するにあたって、楽しみにしていることは?

偶然ですが、先月末までペルージャで開かれていた「筆の先で描かれた日本」展では、1585年に日本から来た天正遣欧少年使節の特集がありました。彼らはイタリア各地を訪問する途上、ペルージャに3日間滞在しましたが、ペルージャとしては当時最大級のイベントだったようで、これら4人の若い人たちは「永遠に記憶される思い出となった」とあります。
今年、3年ぶりに再び日本を訪れることができることは、私にとってなによりの喜びです。日本では、まさにこの“Japan at the tip of brush”「筆の先で描かれた日本」絵画や芸術を見ること、そしてまた、デリケートな美味しさでいっぱいの日本料理をいただけることがなによりの楽しみです。

暮らしの中にもたくさんの作品が
暮らしの中にもアントニエッタさんの作品がたくさん

ー最後に、三越イタリア展にメッセージをお願いします!

私は日本の文化と美術が大好きです。自然に対して繊細で、注意深く細部を見つめる姿勢は、私自身、いつもそうありたいと思っているものにほかなりません。イタリア展に向けて創作した陶絵画の作品では、私の愛するイタリアの大地や美しい街角などの風景を、何千もの色彩と微細な表現で描きました。

三越創業350年に思いを寄せて描きあげた新作
三越創業350年に思いを寄せて描きあげた新作

特に三越創業350周年という節目をお祝いできる機会をいただいたことは、私にとってこの上ない喜びです。ご期待に応えるためにはどうしたらよいかと考え、350年前の私の街、空想のペルージャを描いた特別作品も数点ご用意いたしました。
私がイタリア展会場におります4月26日から5月1日までの間、お客さまとお会いできることをとても楽しみにしています。ハガキ大の小さなものですが、イタリアの風景を明るい色彩で描いた水彩画を、その場で描いてお見せしたいと思っています。

工房でのアントニエッタさんの画像
工房でのアントニエッタさん

アントニエッタさん、素敵なお話をありがとうございました。
三越イタリア展では、<マリア・アントニエッタ・タティッキ>の作品を取り揃えてご紹介いたします。

2023年 三越イタリア展

Part1:2023年4月26日(水)~5月1日(月)[最終日午後6時閉場]
Part2:2023年5月3日(水・祝)~5月8日(月)[最終日午後6時閉場]
※5月2日(火) 三越イタリア展はお休みです。
□日本橋三越本店 本館7階 催物会場

マリア・アントニエッタ・タティッキ氏来場

□2023年4月26日(水)~5月1日(月) 各日午前11時~午後6時
※5月1日(月)のみ午前11時~午後2時

※掲載情報につきましては、諸般の事情により予告なく変更・中止させていただく場合がございます。予めご了承ください。

一部の商品は、オンラインストアでも販売しております。

マリア・アントニエッタ・タティッキさん顔画像
マリア・アントニエッタ・タティッキ/Maria Antonietta Taticchi
陶芸家・工房運営
イタリア中部ウンブリア州ペルージャ郊外に生まれ育ったアントニエッタは、デルータの工房で伝統的な陶器の技法を習得。その後、ペルージャの「ピエトロ・ヴァヌッチ」美術大学を卒業。結婚後はペルージャ歴史地区のプリオリ通りに現在の工房を構え、陶器の絵付けを油絵のような技法で行うというユニークな手法を用い、オリジナリティに溢れる作品を創作している。工房にはいつも多くの友人やお客さんたちが訪れ、おしゃべりと笑い声が絶えない。ペルージャを代表する親善大使として、世界各地でイタリア陶絵画の普及活動を行っている。