
伊勢丹新宿店本館6階のアートギャラリーで毎年のように作品展を開催されている作家は数名いらっしゃいますが、その中のお一人である切り絵画家の久保修氏はご自身の誕生日に合わせた個展が恒例となっています。「今日は先生の誕生日なので作品を見に来ました」というファンも年々増え、久保氏も「ファンからの作品への感想が創作意欲をさらに掻き立てる」と語っており、両者の間に交流も生まれています。もちろん2023年も新作を揃え、久保氏のバースデーを祝う作品展を開催いたします。
記憶に残るあの頃の夏を呼び覚ます「古き良き日本の風景」
「力強さ」と「しなやかさ」をあわせ持った美しい線を作品の特徴とする久保修氏。日本の四季折々の風景や旬の食材をテーマに、パステルやアクリル絵具、さらには砂など多彩な手法で創り出される作品から感じられるのは自然の空気感や匂い。今回の個展では切り絵作品を約25点、ジクレー版画を約20点展示。誰もが胸の奥に残している「あの頃の夏」が目の前に蘇ってくるような作品の数々に、心を揺さぶられるはずです。

バースデー個展のきっかけは作品集編集者の粋なアイデアから
久保氏にとって伊勢丹新宿店での初個展は2001年。それから現在まで2013年を除いて毎年開催されていますが、バースデー個展が定着したのは2015年からです。その年は会期日程が久保氏の誕生日である7月11日とも重なっていたこともあり、久保氏の作品集「二十四節気・旬の食材」を担当した出版社の方から「誕生日当日にアートギャラリーでハッピーバースデーの曲を流してください」と依頼がありました。それに快くお応えしたところ、ご本人はもちろん作品を観賞していたお客さまも突然のサプライズに大いに盛り上がることに。皆さんがそれだけ喜んでくれるなら伊勢丹新宿店としてもひと役買いたいと、2015年以降は久保氏の個展は必ず誕生日を含んだ日程としています。

お祝いされてきた久保氏がお返しとしてファンの誕生日を祝う
「誕生日を祝う」というのはとてもプライベートなこと。そのため久保氏とお客さまの関係はより親密になり、なかには小学3年生から毎年個展を見に来ているというファンもいらっしゃいます。その方は初めて来場した際に自分が作ったカブトムシの切り絵を久保氏に見てもらったそうです。現在は社会人となりデザイン関係の会社に就職したそうですが、それも久保氏の作品に触れ続けたことがその道に進むきっかけのひとつになったといいます。会うのは一年に一度の伊勢丹新宿店の会場だけ。久保氏としても長年成長を見守ってきたような思いがあり、そのお客さまが20歳になった時にはお祝いとして一緒に食事を楽しんだそうです。
ちょっとした演出がきっかけとなったバースデー個展ですが、現在では夏のアートギャラリーにかかせない風物詩に。「誕生日をきっかけに、本当に素敵な出会いがたくさんあります。今年も新たな出会いがあればうれしいです」。これは2023年の個展に向けての久保氏の言葉です。
久保修 紙のジャポニスム「移りゆく風」
□2023年7月5日(水)~7月11日(火)[最終日午後6時終了]
□伊勢丹新宿店 本館6階 アートギャラリー