
世界でもめずらしい百貨店の中の劇場として長い歴史を誇る「三越劇場」。新春恒例の劇団新派公演として、2024年は小津安二郎の名作『東京物語』を、山田洋次脚本・演出で上演します。三越劇場の魅力や作品の見どころなど、公演スタッフに伺いました。
舞台と客席のちょうどいい距離感。
演劇の歴史とともに歩む三越劇場
三越劇場のはじまりは1927年。「三越ホール」の名称で、世界でも類を見ない百貨店の中の劇場として誕生しました。第二次世界大戦により一時閉鎖されましたが、1946年に再開。名称を「三越劇場」と改め、戦後の演劇復興の一端を担いました。劇団新派が三越劇場で初の公演を行ったのは1947年のこと。以来、昭和、平成、令和と3代にわたって上演を続けています。
「三越劇場は、舞台と客席のちょうどいい距離感が魅力。お客さまの反応がすぐ感じ取れるため、出演者はいい意味で緊張感をもち、演技のメリハリをつけることができます。お客さまからは、出演者の吐息や表情の変化、汗の一筋まで見える距離感がいいとお声をいただいています」(新派公演スタッフ)
古き良き日本を次世代へ。待望の『東京物語』を再演
劇団新派は、新しいものを取り入れながら日本人の古き良きこころを次世代につなぐために表現し続ける劇団。その理念は三越劇場の想いと重なり、2008年からは毎年の新春公演を劇団新派が飾ってきました。
2012年の鏡開きの様子。
左から:英太郎、波乃久里子、山田洋次、水谷八重子、安井昌二、瀬戸摩純
そして、三越創業350周年、劇団新派創始135年の記念すべき年に上演するのは、山田洋次脚本・演出の『東京物語』です。
「巨匠・小津安二郎の代表作『東京物語』をもとに、山田洋次が脚本・演出を手がけ、劇団新派によって舞台化した本作。2012年1月の三越劇場を皮切りに全国でも上演を果たし、大きな反響を呼びました。2020年には再演が予定されていましたが、コロナ禍により中止に。しかし、上演に向けて準備を重ねてきたスタッフ・キャストの熱意、そして何より公演を楽しみにお待ちいただいておりましたお客さまの想いを受けて、この度待望の再演が決定しました。創始135年を迎える劇団新派が総力を挙げてお届けする『東京物語』に、どうぞご期待ください」(新派公演スタッフ)
舞台『東京物語』あらすじ
昭和28年の夏。尾道で暮らす老夫婦の妻・とみ(水谷八重子)と夫・周吉(田口守)は離れて暮らす子どもたちに会いに上京する。開業医の長男・幸一(丹羽貞仁)は往診で忙しく、上京した両親の世話を妻・文子(石原舞子)と幸一の妹・志げ(波乃久里子)に押し付けてしまう。しかし、志げと夫の庫造(児玉真二)もまた日々の生活に追われて手が回らず、幸一と志げは両親に熱海旅行を提案する。とみと周吉は熱海に向かうが、旅館のあまりの騒がしさに疲れ果て、早々と東京に戻ってきてしまう。あいにく東京には老夫婦の居場所はなく、周吉は旧友と朝まで居酒屋で飲み明かすが酔いつぶれ、飲み屋の女将・加代(河合雪之丞)に介抱してもらう。一方、とみは戦死した次男の妻・紀子(瀬戸摩純)のアパートに泊めさせてもらうことになる。紀子の優しさに触れたとみだったが、その晩急に倒れてしまい、大阪から三男・敬三(喜多村一朗)も急遽上京してきて……

左から:瀬戸摩純、田口 守、波乃久里子、水谷八重子、安井昌二

左から:波乃久里子、水谷八重子、安井昌二
初春新派公演『東京物語』
□2024年1月2日(火)~1月26日(金)
□日本橋三越本店 本館6階 三越劇場