
日本美術展覧会で活躍し、現在名古屋芸術大学で後進の育成にも力を入れる長谷川喜久氏が推薦する、個性豊かな若手アーティスト6名によるグループ展を開催します。
日本橋三越本店ともゆかりのある長谷川喜久氏が主宰のグループ展
日展に軸足を置きながらも、多方面での企画展やグループ展、個展など精力的な活躍を見せる長谷川喜久氏。これまで、日本橋三越本店でも4度、個展を開催いただきました。
そんな長谷川氏が、今後活躍を期待する作家6名を選抜し、グループ展を開催します。グループ展名の「-EMOTIONAL COLORS-」は長谷川氏が考案。感情、心の在り方が表現と直結していることから名付けました。
開催にあたり、長谷川氏からのコメントを紹介します。
「現在、団体展やコンクール、個展などで活躍する方々の中で、特に個性がはっきりと際立ち、今後の展開にも大きな期待を持たせる作家の皆さんに声を掛けさせていただきました。
グループ展を企画したきっかけは、個人として人の心に残る作品を発表している皆さんが一つの会場に展示することにより、お互いへの刺激が相乗効果となり、また新たな潮流を生み出す予感があったからです。
その会場が、多くのアートファンの皆さまから大きな信頼を集める日本橋三越本店であることにも、大きな意味があると思います。」
個性豊かな新作が集う「-EMOTIONAL COLORS-」
今回のグループ展では、長谷川氏を含む7名の作家の個性豊かな約35点の新作を展示する予定です。展示予定作品の中から、一部を紹介するとともに、作品に込めた思いを聞きました。
【長谷川喜久】
1964年岐阜県生まれ。88年金沢市立美術工芸大学大学院修了。現在は日展特別会員、名古屋芸術大学教授を務める。近年は、現代的な感覚を取り入れた花鳥図屏風や瑞龍寺塔頭天澤院の水墨による大迫力な龍の襖絵といったトラディショナルな仕事の一方で、名古屋芸術大学日本画専攻教員、卒業生、在校生ら41名が歌手・野口五郎氏の発表してきた数々のヒット曲から着想を得て描かれた展覧会をプロデュースするなど、幅広い活動を見せている。
長谷川喜久「colors-Is」 1,100,000円
(紙本岩彩/53×45.5cm)
「樹木の形やそれらが纏う空気感との相性がいいのか……信州の高原に取材へ向かうことが多いです。本作は、池の近くに立ちながら、音や緩やかな風など五感に直接感じたものを描き留め、特に印象として強く脳内に残った色のみを使用して制作しました。そのときにしか出会えない、何か形にならないものを内に込めながら、そこに立っていたという体験を皆さんと共有できればうれしく思います。」
【足立絵美】
1983年岐阜県生まれ。観る者に衝撃を与える、個性的な世界観が特徴。一度観たら忘れられない画風でありながら、観覧者を絵の世界に引き込む細やかで繊細なタッチが魅力。現在、岐阜市にて日本画、立体作品を制作中。
足立絵美「マリリカン」 198,000円
(雲肌麻紙、岩絵具、顔彩、白金箔、金銀泥、ガッシュ/31.8×41cm)
「捨てられたドロップ缶の中の神の国『POPOTOPIA*』。そこに隠れ住む天真爛漫な神の子と、迷い込んできた生き物たちのお話。『ドロップ缶の門番ベアーの怠慢でポポトピアに冷気が流れ込み、体調を崩したのかな? 人間っぽいね☆』と呑気に構えていた神子たち。あっと言う間に体中むずむずして花疱瘡に罹患。病気の治し方は祈祷一択。でもできる神子は皆無。仕方なく無病息災の祈祷を口先だけで楽しそうにやってみるベアー…」
*足立絵美が描くだめなアートの女神から分裂した神子たちの逃げ込んだ小さな世界。それをテーマとして日本画作品を展開しています。
【磯部絢子】
1989年愛知県生まれ。黒い金属質のような絵肌が特徴。代表的画材にグラファイト(黒鉛)を用い、鉛のような質感の平面的な画面に、銀箔・岩絵具などの日本画素材を使用してモノクロームでミニマムな作品を制作し、無機質な背景に植物の温かさを表現。時間や音、切り花をテーマとしたシリーズを展開中。
磯部絢子「blue berry」 198,000円
(麻紙、岩絵具、銀箔、グラファイト/40cm円形)
「庭にできたブルーベリーが、日に日に緑から黒に近い藍色に色付いていく様子を日々観察して描きました。背景にはグラファイトを使用し、画面に磨きをかけ、鉛のような質感を生み出しています。」
【河井眞里枝】
1991年熊本県生まれ。大胆な構図にカラフルな色彩で、今にも動き出しそうな迫力ある爬虫類の描写を得意とする。鱗一つひとつに力強さがあり、煌びやかな背景にも負けない作品を多く生み出している。
河井眞里枝「マナザシ」 198,000円
(雲肌麻紙、岩絵具、銀箔/31.8×41cm)
「この作品はグリーンイグアナをモチーフにしています。イグアナは飼い主の声や感情を理解できる賢い生き物。恐竜のような風貌からは想像できませんが、性格は温厚で植物食性動物です。そんなギャップのあるイグアナの鋭い眼差しを、つい見つめてしまうような作品にしたくて描きました。」
【竹原美也子】
1988年富山県生まれ。日本画材の岩絵具をふんだんに使い、マチエールの隙間からさまざまな色を見せ、愛嬌のある動物たちを描いている。言葉を話しそうな動物や静物のオリジナリティある表現が特徴。
竹原美也子「おたずねにん」 198,000円
(岩絵具、水干絵具、和紙/41×31.8cm)
「ある寒い冬の夜のこと、家々の窓からはたくさんの温かな光が溢れていました。そんな光の一つを訪ねた2人の来訪者を描いた作品です。光の先には新たな出会いがありました。これから始まる4人の物語を想像していただけると幸いです。」
【福田季生】
1985年奈良県生まれ。柔らかな線で表現される優しい表情の美人画は、日本画には珍しくどこか微笑んでいるようにも見える。伝統ある描き方に絵具の扱い——すべてにおいて洗練され、画面を通して精神性も見られる作風。
福田季生「花と蝶」 198,000円
(綿布彩色/41×31.8cm)
「こちらを振り返り微笑む着物姿の女性の姿を描いています。蝶と鳥のシルエットが浮かび上がるように施された華やかな紫の振袖に、花の刺繍を施した帯を合わせた女性の姿。着物を着る時、どの着物と帯を合わせようか、帯紐は何色にしようかと考えるのは楽しいもので、着物の遊び心と、それを楽しむ女性の日常の美しさを描いています。」
【福本百恵】
1984年香川県生まれ。グローバルな視点でさまざまな鳥や花を観察、表現。現在は、日本画の伝統性や画材本来の発色のよさを踏襲しながら、今を生きる感性で描くことに注力。まるで人のような仕草を見せる愛らしく安心感ある鳥たちの一瞬を写生によって捉え、美しい印象を造形的に描くことをテーマにしている。
福本百恵「毎日のオハヨウ」 264,000円
(紙本岩彩、水干/27.3×41cm)
「朝の習慣でかわす挨拶。人からの愛情をたくさん受けてきたコザクラインコのツガイは、平和な日常をぎこちない『オハヨウ』の言葉で始めます。インコの周りには『幸せな家庭』という花言葉の苺を咲かせ、家族の一員となり、同じときを過ごしていく様子を描きました。野の花や野鳥といった伝統的な花鳥画を、現在の生活環境に変え、現代花鳥画として表現しています。」
アートを初めて買うアートエントリーのお客さまに作家たちの制作プロセスなどを深く知っていただくのはもちろん、作家とのつながりや応援したい作家に出会えるというアートコレクターとしての喜びも感じていただけたら幸いです。
日本画グループ展-EMOTIONAL COLORS-
□2025年4月2日(水)〜4月7日(月)最終日午後5時終了
□日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊