
ジュエリー造りにおいて大切にしていること、譲れないこと、貫いていること。すべてのデザイナーたちは胸の内に「美の哲学」を秘めていて、だからこそ生まれる唯一無二の輝き、可愛さ、華やかさがあります。アクセサリー連載の2回目は〈KAORU/カオル〉のデザイナー、中西薫さんの「美の哲学」です。
京都のアトリエで生まれるアートなジュエリー

〈カオル〉はデザイナーの中西さんが生まれ育った京都にアトリエを構え、1999年にスタートしたジュエリーブランドです。昔からアートや造形物といった構築的なものに興味があったそうで、建築の道も目指したそうですが「自分が身に着けたいと思えるジュエリーは、自分で作り出したい」という思いで〈カオル〉というブランドを誕生させたそうです。

中西さんは〈カオル〉のデザインフィロソフィーについて「なによりもバランスを大切にし、そこを追求しています」と語ります。さらに「自分はデザイナーでありアーティストではありません。身に着けた方がいかに輝いて、いつまでも寄り添いたくなるデザインであるかを常に念頭に置いています」とも。創作活動には膨大な時間を費やすそうで、納得できるデザインが実現するまでに壊しては作り直すという作業を繰り返し、新作として世に出すまでに3年以上かかったジュエリーもあるそうです。それでも「デザインから製作まで一貫してアトリエで行い、多くの工程が手作業なので時間はかかりますが、時として起こる手作業ならではの奇跡的なデザインアクシデントも楽しんでいます」と話します。
丁寧な手仕事から生まれるからこそ自分のためのジュエリーになる

〈カオル〉のジュエリーは機械的量産やオートマチックに作られるモノはひとつもなく、時間をかけて職人チームが大切に製作し、丁寧に仕上げていきます。「一点物」に近い魅力があるからこそ、〈カオル〉のジュエリーに特別な想いを抱くファンも多くいらっしゃいます。「当時は大学生だったお客さまが最初はシルバージュエリーをお選びになって、それからも〈カオル〉のコレクションを続けて購入いただきました。数年後、社会人になられた時には一点物のオートクチュールリングを購入していただいて、そうやってブランドはお客さまとともに成長していくんだなって、うれしく思いました」。中西さんは、そんな〈カオル〉らしいお客さまとのエピソードも披露してくれました。
〈カオル〉の職人技の結晶といえるレースコレクション

「革新的な大胆さがありながら緻密。細部にわたって繊細さや丁寧さを感じる、まさに日本らしいジュエリー」と評価され、大英博物館に2度も展示。「日本らしいという視点でデザインをしていたわけではなかったので、その評価はとても新鮮でした」と中西さんが話すように、〈カオル〉のシグネチャーデザインといえば、中西さん自身が上海で目にして「あまりの緻密さに息を呑みました」というスワトウ刺繍をモチーフにしたコレクションです。他にもパリで出会った優美なかぎ編みレース、ロンドンで魅了された美しいビクトリアンレースなどにインスピレーションを受けたジュエリーも多く、「世界中の芸術的なレース刺繍をジュエリーとして形にして、身に着けることができたら素敵だと思いました」と、レースコレクション誕生のきっかけを語ります。それらは〈カオル〉の持つ職人技が見事に開花した作品だといえます。

最後に中西さんからのメッセージ。「〈カオル〉のジュエリーを身に着け、楽しみ、愛してくれているすべての方に感謝しています。〈カオル〉を選んだ方が何十年先でも輝いている、そんなジュエリーをこれからも追い求めていきたいです」。流行に左右されず、独自の価値観で生み出される〈カオル〉が目指すジュエリーは、これからも変わらないはずです。

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