<サノマ>のオードトワレ「緊張とリラックスの心地よいコントラスト」

日々をともにする愛すべき名品(=My Dear)は、どれもそこへたどり着くまでのストーリーがあります。
一人ひとりの想いが詰まった品とそのストーリーをひもとく、プライムガーデンの連載「HELLO, My Dear」。今回の“My Dear”は、フレグランス。香水クリエーターの渡辺 裕太さんに、自身が手がけるブランド<çanoma/サノマ>の愛用品についてお話をうかがいました。
私の「My Dear」
<サノマ>のオードトワレ「1-24 鈴虫」

<サノマ>は、2020年パリで誕生したフレグランスブランド。“日本人のための香水”をコンセプトに、香水クリエーター渡辺 裕太さんの感性と、フランス人調香師ジャン=ミシェル・デュリエさんのテクニックを融合したクリエーションで、フレグランスの世界に新風を吹き込んでいます。
今回“My Dear”に選ばれたオードトワレ「1-24 鈴虫」は、渡辺さんが香水の世界に入る前、学生時代から構想を練っていたという特に思い入れの強い一品です。
長い人生、心から楽しめることをやったほうがいい
渡辺さんは、東京大学、そして大学院を卒業後、外資系金融機関に就職。3年半金融業界で働いたのち、「自分が心から楽しめることを仕事にしたい」という想いから香水の道を目指したという異色の経歴の持ち主です。
「中学高校と全寮制の学校に通っていたんですが、男子寮って、洗顔とか美容系の流行り物が意外と入ってくるんですよね。それで中学生のときに出合ったのが香水。自分でいろいろ試しながら、けっこうマニアックなものを買い集めたりしていて。いち香水ファンとして楽しんでいただけなのですが、就職してしばらく経ったあと、自分がこの仕事に向いているのか、本当にやりたいことはなんなのか見つめ直す機会があったんです。これから長い人生、心から楽しめることをやったほうがいいんじゃないかと考えたとき、香水を仕事にしたいという気持ちがわいてきました」

“よい香り”は、“よくできている”だけでなく“あたらしいアイデア”がある香り
香水の仕事を志した渡辺さんは、当時勤めていた金融機関を退職し、フランスへ。フランスの大学でMBAを取得し、その後調香師ジャン=ミシェル・デュリエさんを招いて<サノマ>を立ち上げることとなります。
「調香師になる、フレグランスメーカーに就職する、フレグランスショップで働く・・・。香水にまつわる仕事はたくさんありますが、ブランドを立ち上げるという選択をしたのは、いまのフレグランス業界に、自分が“よい”と思えるものがなかったから。私が“よい”と思うのは、“よくできている”だけでなくて“あたらしいアイデア”があるもの。そのバランスが取れた香りを“よい香り”だと考えています。“よくできている”という部分はキャリア35年の調香師ジャン=ミシェルが担保し、“あたらしいアイデア”の部分は私の感性を注ぎ入れる。そうすることで、誰も出合ったことのない香りを生み出すことができるんです」
夏の終わりに、秋が紛れ込む一瞬を切り取った「1-24 鈴虫」
2020年、ブランドのファーストコレクションとして発表された香りのひとつが「1-24 鈴虫」。普段はほとんどこれをつけているという、渡辺さんの“My Dear”です。
「<サノマ>の香りは、すべて私自身のちょっとした心の動きが出発点。この香りは、夏の終わりのまだ暑くてジメジメした時に、一瞬フッと吹き込んでくる秋の冷たい乾いた風をイメージしています。その瞬間がすごく好きだし、切なさを覚える。自分が香水を作るなら、こんな香りを作ってみたいとずっとあたためていたインスピレーションソースです」

思い描いたイメージを香りで表現するため、調香師のジャン=ミシェルさんと何度も試行錯誤を繰り返したという渡辺さん。商品名にある「1-24 鈴虫」の24は、24回試作を繰り返したという意味だそう。
「私がクリエーションをするうえで一番わくわくするのは、試作品を嗅ぐ瞬間。この世の中にはじめて生まれたあたらしい香りですから。どの香水も試作を重ねるうちに、“香水になった”という瞬間が訪れるのですが、この『1-24 鈴虫』では何度もその瞬間が訪れた。より高みを目指せた香りです」

ウッディな香りとアンバー系の香りに、スパイスやアロマティックな香りが絡まり合う「1-24 鈴虫」は、暑さと涼しさ、湿度と乾燥、重さと軽さといったイメージソースのコントラストを香りで見事に表現しています。
「これをつけていると、ある部分ではシャキッと気合いが入りながら、ある部分ではリラックスするような、独特なコントラストを感じます。オンの時はこれ、オフの時はこれ、という境目があるのではなく、常にどこか緊張感があるし、どこかリラックスしているという状況が心地よくて。それでついつい手に取るのかもしれませんね」
感性をよろこばせ、こころの豊かさにつながる存在を目指したい
一つひとつの香りに、自身の記憶や感動のインスピレーションソースをもち、調香師との綿密な連携によって生み出される<サノマ>のフレグランス。しかし渡辺さんは、製品のストーリーや“何の香りか”にとらわれず、まず香りを感じて、直感的に“いい香り”と感じたものを選んでほしいと語ります。
「私が香水の名前を数字にしていたり、ボトルに『鈴虫』といった表記をしないのは、先入観なしに香りを感じていただきたいから。感じた方それぞれでイメージをふくらませて、自由に楽しんでほしい。それがフレグランスのよさだと思うんです。香水って、生命を維持するために必要なものではない。でも、あったほうが心地よくなるとか、ポジティブな気分になれるとか、それってすごく人間的な営みだし、こころの豊かさですよね。人間の感性を喜ばせることに<サノマ>が貢献できればうれしいですし、そういうブランドでありたいと思っています」

<サノマ>の世界を体感できる、2週間のポップアップ
香水は、日常的に使えるものでありながら、日用品ではなく、毎日をちょっと特別にするものであるべき、と考える渡辺さん。<サノマ>の哲学が込められたフレグランス全種を集め、プライムガーデンで2週間のポップアップイベントを開催します。
çanoma POP UP EVENT
□2022年5月25日(水)~6月7日(火)
□伊勢丹新宿店 本館4階 プライムガーデンプロモーション

日本人が日常的に使いたいと思う香りを目指して作られている<サノマ>のフレグランス。渡辺さんが考える“日本人のための香水”とはどういうものなのでしょうか?
「日本人の好きな香りというのは、基本的にウッディな香りだと思うんです。あと、それ以上に大切にしているのが、欧米では人気があるけど、日本人には受け入れにくい香りを排除すること。例えばバニラのように、一瞬嗅ぐにはいい香りだけど、長く香っているとヘビーに感じる。そういういくつかの香りを除いてフレグランスを作っています」
これまであまり香水をつけてこなかったという方には、軽い香りからおすすめするという渡辺さん。ここからは、<サノマ>のフレグランスを軽い香りから順にご紹介します。
【3-17 早蕨】
-
<çanoma/サノマ>
3-17 早蕨
8,250円 (30mL) 商品を見る
19,250円 (100mL) 商品を見る
冬の終わり、暗くて冷たい朝の室内に、窓からパッと入ってくる明るい光をイメージした「3-17 早蕨」。ラベンダー・セージといったアロマティックな香りと、松の木のウッディノートを中心に、それを青りんご調の香りが包み込む。ラベンダーや松の木の清潔感が冬の冷たさを、青りんごのやさしい香りがあたたかな光の印象を表現している。
【4-10 乙女】
-
<çanoma/サノマ>
4-10 乙女
8,250円 (30mL) 商品を見る
19,250円 (100mL) 商品を見る
ガルシア=マルケスの小説『百年の孤独』のワンシーンから着想を得て作られた「4-10 乙女」。イランイランやティアレの南国調フローラルと、海を感じるアクアティックノートや芝生のようなグリーン、ウッディノートが“ふわふわと香る”ように設計されている。香る瞬間によって印象が変わり、嗅ぐたびに魅力が増していく。
【1-24 鈴虫】
-
<çanoma/サノマ>
1-24 鈴虫
8,250円 (30mL) 商品を見る
19,250円 (100mL) 商品を見る
夏の終わりに一瞬吹き込んでくる秋の冷たい乾いた風をイメージした「1-24 鈴虫」。ウッディノートとアンバーノートがしっかりと入ったオリエンタルな香りに、カルダモンやサフランといったスパイシーな香り、バジルやヴァイオレットリーフといったアロマティックな香りが絡みあう。暑さと寒さ、湿度と乾燥、重さと軽さといったコントラストが感じられる。
【2-23 胡蝶】
-
<çanoma/サノマ>
2-23 胡蝶
8,800円 (30mL) 商品を見る
20,350円 (100mL) 商品を見る
ポルトガルのシントラの森から着想を得て、日本版ウードをテーマに作られた「2-23 胡蝶」。ウッディノートとレザーの香りがしっかりと入った重いベースに、フレッシュなローズとゼラニウム、さらに四川山椒を中心としたスパイスがふんだんに使われている。スパイスが全体をキュッと引き締める構成。
今回のポップアップでは、定番のフレグランスのほかに、新製品のお香を先行販売。淡路島で120年以上続く老舗のお香メーカー薫寿堂と協業し、「3-17 早蕨」の香りをスティックタイプのお香に仕立てています。
最後に、フレグランスの楽しみ方や、つけ方のコツを教えていただきました。
「私の場合、朝家を出る前、首筋に左右5プッシュずつ計10プッシュ。それで一日つけ直すことはないですね。つける場所は、『手首』か『お腹の脇』か『首筋』のどこかがおすすめ。手首につけると、動くたびに周りに拡散するので、周りに香らせたい場合は手首。反対に自分だけが楽しみたいときは、服の下で動きも少ないお腹。首筋は、自分も周りにもしっかり香ってくれる場所です。気に入った香りができたら、例えば出張や旅行のときに持ち歩いて、ホテルの部屋やバスルームにひと吹き。それだけでもリフレッシュできるので、自由な使い方で楽しんでいただきたいです」
ふだん香水をつける習慣のない方にも、ぜひ一度試していただきたい<サノマ>のフレグランス。これまで感じたことのない、“はじめての香り”との出合いが待っているはずです。

※本館4階 ザ・ステージ#4にてイベント・プロモーションを併設中。