<ワイズ>が書家の木下真理子の「書」を「服」に表現したウェアを発表。「黒と白」で新たな世界観を描くコレクション

<ワイズ>が書家の木下真理子の「書」を「服」に表現したウェアを発表。「黒と白」で新たな世界観を描くコレクション

<Y's/ワイズ>が書家の木下真理子さんと取り組んだY's Calligraphy Collection。「黒と白」という、書だけでなく<ワイズ>にも通じる要素から引き出されたユニークに表現されたウェアを伊勢丹新宿店でもポップアップでご紹介。
服の上に「書」が遊び、鮮やかに日常に溶けるカプセルコレクション。今回のコラボレーションのために揮毫したという作品でどのように表現したのか。木下さんにお伺いしました。

※伊勢丹新宿店ポップアップショップ「Y's Calligraphy Collection」は終了いたしました。

Y's/ワイズ

機能的で品位ある日常着。独自のカテゴリーの中、普遍的な価値観とユニークなパターンメイキングで形づくられる<ワイズ>のクリエイション。カッティングとシルエットにこだわり、素材の風合いを生かし、着ることによって生まれる人の体と服の間にある空気感、分量感、バランスを大切に行われる服創り。山本耀司の最初のブランドとして1972年に創設された<ワイズ>は、現在もアトリエチームが表現するブランドのアイデンティティ、機能的で質の高いプレタポルテを提案するコレクションをラインナップします。


<ワイズ>Y’s ブランドページ こちらから



木下真理子

木下真理子/書家
中国、日本で古来受け継がれてきた伝統文化としての書を探求。専門分野の漢字の他に、女性の感性を生かした漢字仮名交じりの書にも取り組んでいる。宮内庁・奈良国立博物館主催 『正倉院展』、映画『利休にたずねよ』、NHK『にっぽんプレミアム』などに関わる題字も手がけている。近年は国際芸術祭や文化庁主催によるエキシビションなどで書によるインスタレーションも発表している。

木下真理子さんのその他の活動については公式HP・公式インスタグラムでも配信中です。是非ご覧ください。


<ワイズ>とのコラボレーションはいかがでしたか?

木下:<ワイズ>とはモノ作りの文脈の中で、「人間の手がモノに品質を与える」とか「人間的な尺度や感触を大切にしたい」といったことで共感し合えて、それはとても大きかったと思います。書は筆の弾力と墨の重力によって和紙の上にさまざまな線質が表れますが、服も人間の身体はどこをとっても微妙な歪みはありますし、身体の動きで生地が波打ったり、ねじれたりします。なので、「自然の摂理に嘘をつかない」という価値観も同じように持っていました。

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<ワイズ>というブランドについての印象は?

木下:ジェンダーレス、エイジレス、そしてボーダレスという、着ることによって、常識やフォーマット、帰属意識などから解き放たれる心地よさを持った服だと思います。服に哲学的な思想も内包していて、権威的なことへのアンチテーゼの姿勢にもシンパシーを感じます。といっても、けして重苦しいわけではなくて、むしろいい意味で“軽やかさ”を感じますね。山本耀司さんは「省略の中にはプライドが含まれている」と語っていましたが、その軽やかさは“洗練”という言葉に尽きると思います。

書とファッションに共通点はあると思いますか?

木下:自分とどう向き合って、自我をどう扱っていくのか、それがファッションと書に共通するテーマではないでしょうか。最近は一度書いた後から墨を飛ばしたことが明らかな書なども見かけますが、個人的には残念に思うんです。何故そうするのかといえば、物足りないことに不安を感じてしまうからなのかもしれません。ただ、そのようにあからさまに自我を押し出して見せるより、書にしても服にしても、目でダイレクトに見えるもの以上に、独特な空気感や気品といったものをどう表出できるのか、そこが問われているような気がします。

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木下さんの書に対する想いとは?

木下:書は読めないからつまらない、そういった先入観を持っている人は多いと思います。実は、読める読めないということは、あまり重要ではありません。滲みや擦れといった線質、文字の崩し加減、行間や字間の余白などから “文字の景色”を感じて、それが楽しめればいいものなんです。書き手としては、一点一画に、一瞬の判断とか覚悟を持って書いていますが、一方でその時々の湿度や温度など“他力”の働きに左右されるところもあって。そこに垣間見える奥深さに、ずっと魅了されています。

今回のコラボレーションのポイントやこだわりは?

木下:コラボレーションすることで生まれる、作り手同士の共通言語として、今回は「未完成」というタイトルの作品を作っていこうという意識を共有していました。私の方では、書き込むことで完成度を高めていく普段の過程を、今回はやめようと最初に決めました。1枚で書き終えた書もありますし、少し不完全であったとしてもあえて採用したりしています。アンバランスや物足りなさを肯定することは日本人の古来の感性ですが、それが当てはまる<ワイズ>の服は、余計なものなど必要としない、それだけを身体に纏って立っているだけでも美しいというものですよね。

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今回のカプセルコレクションをどのように楽しんでいただきたいですか?

木下:今回はこれまで山本耀司さんがいろいろな場面で語ってきた言葉を書にしています。ポエトリー的なものもありますし、服を作る上での哲学、女性観、人生観などの言葉です。ただ、パッと見て読めるように書いてはいませんし、服になる過程でも裁断、再構成されていますので、言葉として読むというより、まずは着ることで表情が変わる文字の姿を楽しんでもらえたらと思っています。同時に服とその人との“間”を感じながら、何かしらのインスピレーションを得ていただければうれしいですね。言葉になるまでの心意こそ、<ワイズ>というブランドそのものですから。

異なるジャンルでの活動からどんな影響を受けていますか?

木下:異なる分野の人の思考に触れることは、視野が広がり、既存の枠や価値観を越える原動力になっています。古典や伝統に向き合う姿勢が大切だと、そう思ってこれまで書いてきましたが、最近は過去だけに閉じこもっているのではなく、この時代の書のあり方についても模索しています。そのひとつとして、鴨長明の『方丈記』を揮毫してから、それを映像媒体に変換して、新宿の4大街頭ビジョンで上映したことがあるんです。新宿という街を行き交う人々、空気感まで含めたインスタレーションで、こうしたことはこの時代ならではの書の見せ方なのかなと思いました。

これから挑戦してみたいことはありますか?

木下:もともと書は東洋的思想に育まれた美術です。ただ、私自身の目の向け方としては、日本から外へというより、外から見たアジアや日本という視点で創作活動をしています。ですから、今回のように違ったジャンルに取り組むことは今後もあると思います。例えば、現代の建築空間では和室も、掛軸を掛ける床の間も激減していて、そんな空間の中で書をどう落とし込めばいいのか、ただ額装して洋室に飾るというのではなく、もっと違う展開の仕方があると思うんです。これについては具体的なアイデアも持っています。

Y’s Calligraphy Collection

□4 月21 日(水)~5 月4日(火・祝)
□伊勢丹新宿店 本館1階 プロモーション


※ イベント 「Y's Calligraphy Collection」 は終了いたしました。

<ワイズ>Y’s ブランドページ こちらから

 

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