美術
今回は益子陶芸美術館 学芸員 松﨑裕子氏に峯岸先生の作品の魅力についてインタビューしました。
峯岸 勢晃(みねぎし せいこう)
1952 埼玉県三郷市に生まれる
1993 栃木県那須町に工房・自宅を移転
1994 東日本伝統工芸展(入選18回)
1995 ニューヨークダイイチアート七人展・二人展
1996 日本伝統工芸展(入選11回)
1997 日本陶芸展(入選5回)
1999 日本工芸会正会員
2001 「千年の扉」(栃木県立美術館)
2008 「ヌーベル・エル美術の今日展」(日本橋三越本店)
2013 ジョーン B マービス・コレクターズツアー・ アメリカより来訪
2014 「展開する力」(益子陶芸美術館)
2017 窯変米色青瓷発表
2018 「青の時代」現代日本の青磁(益子陶芸美術館) 日本伝統工芸展「窯変米色青瓷面取壷」入選
2019 ジョーン B マービス・コレクターズツアー・ アメリカより第2回来訪
2020 青炎 峯岸勢晃展 窯変 米色青瓷(日本橋三越本店)
ーー青磁(せいじ)とはどういったものでしょうか?
古代中国が起源で、特に宋の時代に生まれた青磁は焼物の歴史の中でも至宝とも言われ歴代皇帝が愛したものです。作家さんには起源を再現する人や、独自の方向を目指す人、様々な方がいらっしゃいます。
名前の通り青色の焼物ですが、一言に「青」と表現しても、雨上がりの空、エメラルドのような緑みのある青、黄色味がかった青、ダークな黒に近い青、白に近いような青。バリエーション豊かな青があるのが青磁の特徴です。
――青磁と青瓷、違いはどういったものでしょう?
一般的に青磁は磁器、青瓷は陶器を表す表現です。
――表面がつるつるのものと、ヒビ模様が入ったものがありますね?
土で作った素地の上に釉薬をかけて焼きますが、焼く際に素地と釉薬が縮み、ひび(貫入)が入ります。その貫入を表現の一部として使う作家さんもいらっしゃいます。
本来、ひび割れはマイナスのイメージに思われるかもしれないけど、そこに青磁の美しさの一部が含まれていると思います。
貫入に色を入れることも可能で、赤いベンガラを焼いた後に擦り込み着色します。
焼き物の収縮は永遠に続き、色を入れた後も貫入は進むので、作家さんはどのタイミングで色入れていくかを狙っていて、そこで個性を出しています。
もちろん貫入がはいらないように作ることも可能ですが、理屈がわかっていても簡単にはコントロールできません。
また、青磁は発色が命だと思っています。
綺麗に発色させるためには釉薬を厚めにかけないと「青」を出せず、素地が綺麗にできてないと釉薬がきれいに乗らず剥がれやすくなります。
素地の土台の部分からしっかり作らないと凛とした雰囲気が出せないし、焼きあがった後にどのような変化が起きるのか。そこまで理解していないとできない世界だと思います。
――よく見ると繊細な形や厚みですね。
素地と釉薬が同じくらいになるくらい厚く釉薬がかかる部分もありますが、全体的にそうなるとすごく重くなってしまいます。作家さんたちはいかにしっかりした素地で作るかを研究し、バランスを追求する方が多いです。
――峯岸先生の印象をお聞かせください。
非常に真面目で紳士的な方で、ここ数年は窯変米色青瓷に取り組んでいらっしゃいます。
経験を基にしても非常に難しく、苦労されていました。しかし、試行錯誤の末にご自身でも自信をもってイメージした色合いを安定して出せるようになってきており、最近では作品に遊びを加えるなど楽しんで作品を作っていらっしゃるのが伝わってきます。
――峯岸先生の作品はすごくグラデーションが綺麗ですね。
焼く際に、酸素が多い箇所は米色(赤茶色)に、少ない箇所は青色になります。
窯の中の空気の流れを計算し、焼物の配置などを考え、研究されているのだと思います。
峯岸先生は色味・風合いが一番きれいに見える形を大事にされていて、面がふっくらと出ている作品が多いです。
――酸素の量で発色が変わっているんですね!2色使っているのだと思っていました。
そうなんですよ、焼き加減で全然表情が変わります。作品を360度回してみて、いろんな表情があるというのが窯変の面白さだと思います。
もともとは朝鮮の焼物のような、土のやわらかさが出ている素朴で親しみやすい陶器に憧れてこの道に進んだそうで、そういった感性が峯岸先生の作風のベースになっておるのだと感じました。
――本日はありがとうございました。
ありがとうございました。
青瓷と聞くと、青緑のつるつるした焼物が真っ先にイメージとして浮かんで来ましたが、峯岸先生の作品は想像と異なりすごく繊細で豊かなグラデーションの美しい器でした。
インタビュー前は形も多様で見ていて飽きないな。と思っていましたが、細部まで観察するとそこに至るまでの研鑽が重ねられてきた賜物なのだと感じました。
見る角度によってさまざまな表情を楽しめる、峯岸先生の作品をぜひ一度ご覧ください。
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