実は簡単!豪華パエリアをマスターする。

2020.9.16 UP

見るからにゴージャス。パエリアには本格派の雰囲気が漂います。「実は簡単ですよ」という作家で料理家の樋口直哉さんに、パエリアの色々を教えてもらいましょう。

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パエリアは、山のご馳走料理だった。

スペイン、バレンシア地方の料理「パエリア」は華やかな料理。人が集まるときにもぴったりです。現地でも野外で調理することが多く、感覚としてはBBQに近いようです。

 

もともとのバレンシア風パエリアは「ウサギ肉(現在では鶏肉)」「カタツムリ」「さやいんげん」といった山の幸が中心。魚介類が入ったパエリア(パエージャ・ミスタ)は比較的最近生まれたもので正統ではない、という意見もありますが、今回は日本人にも馴染みが深いエビや貝類が入ったパエリアをつくります。本家のパエリアに敬意を払い、具材としてさらに鶏肉とさやいんげんを加えて、豪華に仕上げました。

 

昔から米が日常の一部だった東アジアの多くの地域では、米は水だけで調理され、お米自体の白さやツヤ、やわらかさ、風味の良さが重要視されます。それに対して米が比較的めずらしく、贅沢品であった中央アジアや中東、地中海地方では、ピラフやリゾット、パエリアなどのように、肉や魚の出汁、油脂、その他の食材を組み合わる調理法が発達しました。つまり、日本のご飯は「米」を食べる料理なのにたいして、パエリアは米を媒介にして複合的な風味を味わう料理といえます。日本のお米の炊き方とは少し異なるので、その点を中心に解説していきます。

 

<エビと鶏肉のパエリア>

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材料(2〜4人前)

有頭海老 2尾

鶏もも肉 250g(小1枚)

あさり  150g

玉ねぎ   1/6個(50g)

にんにく 1片

トマトソース 大さじ2

パプリカパウダー 小さじ1

水    750cc

米    75g(半合)

さやいんげん 80g〜100g

昆布   4cm角

オリーブオイル 大さじ2

 

作り方

① 有頭海老は包丁やハサミで頭と胴の部分に半分に切る。鶏もも肉は4等分に切り、玉ねぎとにんにくはみじん切りにする。さやいんげんは7〜8mmに切る。あさりは砂抜きをし、よく洗っておく。

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フライパンは26cmのものを使いました。24cm〜26cmのフライパンが適当なサイズです。

 

②フライパンにオリーブオイル大さじ1をしき、エビと皮目を下にした鶏肉を入れて、中火にかける。エビは表面が香ばしくなるように、鶏肉は皮目に焼き色がつくようにゆっくりと焼く。鶏肉の両面に焦げ目がついたら、オリーブオイル大さじ1を足し、玉ねぎとにんにくを入れて更に炒める。

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③玉ねぎがしんなりとしてきたら、あさり、トマトソース、パプリカパウダーを入れてざっくり混ぜ、水を注ぐ。昆布を入れて沸かしたら弱火に落とし、5分煮る。

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④ 5分経ったら具材をとりだす。塩ひとつまみ(親指、人差し指、中指でつまんだ量。目安は0.8g)で薄めに味をつけ、米とさやいんげんを加える。木べらで静かに混ぜて、なるべく均等にならす。火を中火に強め、13分間煮る。

 

⑤ 水面から米が見えてきたら火を弱火に落として、さらに3分煮る。

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⑥ 具材を上にのせて、蓋をして、火を止め、3分間蒸らしたら出来上がり。

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パエリアと炊き込みご飯の違い

パエリアには様々なバリエーションや作り方があります。お店ではフライパンのままオーブンに入れ、表面を乾かしたものが多いのですが、例えばカタロニアでは「リゾットのように水分を残した仕上がりが良い」とされています。パエリアの作り方に正解はないのです。

 

日本のレシピサイトでパエリアの作り方を検索すると、ホットプレートやフライパンを使った様々な作り方が並んでいます。調べてみると、日本風のパエリアはお米をたくさん使い、少ない水分で蓋をしながら炊きあげるものが多いようです。これは「炊き込みご飯」の手法で、言ってみれば日本風の作り方。今回は本場のパエリアに習って、米の量を控えめにし、蓋をせずに炊き上げています。こうすることで米の独特な香りが弱くなり、ほかの素材の味を生かすことができます。

 

パエリアが炊き込みご飯と違う点は「平たい鍋で加熱すること」です。平たい鍋で加熱することにはどんなメリットがあるのでしょうか? 手元に炊飯器があればトマトジュースとお米を入れて炊いてみると、芯が残って上手に炊けないことがわかります。トマトジュースのような濃度のある液体で加熱すると水分の対流が上手に起きず、米の炊きあがりにムラができるからです。

平らな鍋で、米は混ぜない。

鍋が平らであれば対流が起きやすく高温で加熱できるので、芯が残りません。パエリアの味は濃厚な出汁で決まります。ポイントは、米を入れる前に弱火で5分煮込み、素材から風味を引き出すことです。(味の補いとして入れた昆布は省略しても大丈夫です)

 

お米を入れたらかき混ぜずに加熱していきます。お米にはアミロースとアミロペクチンという2種類のデンプンが含まれており、この二つの比率で個性が決まります。例えば、カレーなどにあう長粒米はアミロースが多い品種で、さらりとしています。反対にパエリアやリゾットに適した短粒米はアミロペクチンが多い品種です。アミロペクチンは煮汁に溶けるととろみがつきます。とろみがついた煮汁が米の表面にまとわりつくことで、濃厚な味になるのです。日本の米は短粒米なので、パエリエには普段食べているお米が使えます。

 

デンプンは米の表面に玉ねぎのように層で存在しており、加熱すると一部が溶け出します。リゾットの場合はよく混ぜることで米粒同士をこすり合わせ、溶け出すデンプンの量を増やすのですが、パエリアの場合は粘りが強すぎると困るので、混ぜないのがセオリーです。

 

炊きあがりの目安は時間ではなく、表面をよく観察し、最終的な水分量で決めます。弱火で3分と書きましたが、それまでに火が強すぎたり、弱すぎたりするとこの時間は変わってきます。

 

水分が多すぎたら、蒸らし時間を長めにします。蒸らす工程で米が表面の水分を吸収してくれるからです。逆に水分が少なすぎる場合はどうしたらいいのでしょう? 味見して芯が残っているほど硬い場合、最後の弱火加熱の際に蓋をすれば大丈夫です。パエリアはもともと野外でつくるようなおおらかな料理。水分が少なくとも多くてもどちらにも良さがあっておいしいのがいいところ。見た目よりも簡単なので、ぜひ挑戦してみてください。

 

Text & Photo : Naoya Higuchi

 

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