煮込みハンバーグから始よう! 〜樋口直哉さんの料理のツボ〜 

2022.4.23 UP

手軽なイメージがあり、意外と失敗の多いのがハンバーグ。その多くは焼き方の温度調節の難しさにあります。焼きすぎて硬くなるか、焼きすぎに注意して生焼けになるか。樋口直哉さんによれば「失敗なく確実に美味しく作るのなら煮込みハンバーグ」がセオリー。まずは、煮込みハンバーグから始めましょう。

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洋食の人気メニュー、ハンバーグ。食べやすく、ご飯にもあうのが人気の理由でしょうか。様々なレシピがありますが、傾向は大きく2つ。やわらかさを重視したふっくらタイプと肉々しさを重視したジューシータイプです。

 

ハンバーグ作りで最も難しいのは、火の通し具合です。中心までしっかり火が入らず生焼けという事態は避けたいところが、焼きすぎると水分が飛び、パサパサになってしまいます。実は、それを回避するかんたんな方法が「煮込みハンバーグ」です。ということで、今回は「煮込みハンバーグ」のレシピをご紹介します。

 

「煮込みハンバーグ」は、ハンバーグの種の表面を焼き、シチュー状のソースで煮込んだもの。肉々しさを重視したタイプよりもやわらかさがあった方がソースとの馴染みがいいので、種にはパン粉や玉ねぎなどの繋ぎを多めに配合します。

 

まずは肉を選ぶ

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伊勢丹の地下食品売場〈I’s MEAT SELECTION〉んに行くと「黒毛和牛〈国内産〉挽肉」や「国産牛・国産豚 合挽肉」、「伊達の赤豚〈国内産〉挽肉」など様々な種類が売られています。

 

肉そのものを味わうジューシーなハンバーグの場合は、「黒毛和牛〈国内産〉挽肉」がおすすめなのですが、「煮込みハンバーグ」にするのであれば豚挽肉が入った「合挽肉」ばおすすめ。牛の挽肉でつくるハンバーグはしっかり目の食感ですが、そこに豚肉を混ぜるとやわらかさが出てきます。また、豚肉の脂は融点が低いので、冷めてもおいしく食べられます。これがハンバーグに合い挽き肉が多く使われる理由です。

 

ハンバーグを作るのは大変……と思われがちですが、意外と簡単です。ただ、手間はかかるので、多めに作るのがおすすめ。「煮込みハンバーグ」は作り置きしても味が落ちずに冷蔵庫で2〜3日は保存が利きますし、一ヶ月を目安に冷凍保存することもできて便利です。

 

 

 

煮込みハンバーグ

<材料>(2〜4人前)

合挽肉 300g
玉ねぎ 100g(1/2個)
塩    小さじ1/4

パン粉 10g

切り干し大根 10g(水50mlで1時間を目安に戻す)

こしょう  少々

 

煮込みソース

<材料>(2〜4人前)

ベーコン 65g

玉ねぎ  1/2個
マッシュルーム 1パック
赤ワイン  200ml

トマトピューレ 150g

はちみつ   大さじ1

塩       小さじ1/4

生クリーム  50ml(好みで)

 

<作り方>

先に煮込みソースを作ります。

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味のベースになるのは玉ねぎです。玉ねぎの甘味に対して赤ワインとトマトの酸味でバランスをとり、そこにベーコンとマッシュルームのうま味を加えます。玉ねぎは大きめの色紙切り(2.5cm角が目安)にし、マッシュルームは6等分にします。

 

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煮込み用の鍋にサラダ油大さじ1(分量外)とベーコンを入れ中火にかけます。

 

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ベーコンは加熱すると油が跳ねるので、蓋をずらしてかぶせておくと安心です。

 

 

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ベーコンから香ばしい香りがしてきたら、玉ねぎとマッシュルームを加えてざっくりと混ぜます。

 

 

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火を弱火に落とし、蓋をして5分ほどじっくり火を通します。

 

 

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マッシュルームから水気が出るので、全体にしっとりした状態です。

 

 

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木べらなどでスペースを作り、はちみつを加えます。鍋をずらしてはちみつを重点的に加熱し、香ばしさをだします。

 

 

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はちみつを入れると鍋底が焦げてきます。この色が最終的なソースの色になるので、ここはカラメルをつくる気持ちで丁寧に加熱し、鍋で茶色い味を作ります。

 

 

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かといって真っ黒に焦げてしまうと苦くなるので、鍋底に茶色ができたら赤ワインを注いで、こそげます。火を中火に強めて赤ワインを煮詰めましょう。

 

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液体がかなり少なくなりました。

 

 

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トマトピューレを加えます。

 

 

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ひと煮立ちしたら出来上がり。火を止めておきましょう。

 

 

次はハンバーグ作り

ソースができたらハンバーグづくりです。切り干し大根という見慣れない材料が目につくと思います。

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最初に述べた通り、煮込みハンバーグにはある程度のやわらかさが必要。そこで、玉ねぎや繋ぎなどの副材料の配合を増やします。一番、効果があって簡単なのが「卵」を入れることです。目安として挽肉250g〜300gに対して卵が1/2個入ります。

 

ところが卵1/2個を使うともう半分が余ってしまいます。そこで今回使うのが切り干し大根です。うま味が詰まった切り干し大根の戻し汁を加えると、肉だねがふんわりします。また、大根に含まれる硫黄化合物は玉ねぎと同様に肉の味を引き立ててくれます。戻した切り干し大根は別の料理に使ってもいいですが、みじん切りにして加えると歯ごたえが生きます。

 

 

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挽肉に塩を加えてざっくりと練ります。手で握っては離すことを5回ほど繰り返せば充分です。ハンバーグにはこの「塩」が重要な役割を果たします。試しに塩を入れないでハンバーグを作って焼くと肉汁が抜けてしまいます。塩を加えて練ることでたんぱく質の一部が溶け、それが熱を加えると水分を抱え込むので、ジューシーに焼けるのです。

 

 

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副材料である玉ねぎのみじん切り、パン粉、切り干し大根、切り干し大根の戻し汁を加えます。副材料は肉の結着を弱め、仕上がりをふんわりさせます。パン粉と切り干し大根には肉汁を吸う役割もあります。

 

 

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4等分、または6等分して俵型にまとめます。小さめに作っておくと食べる量を加減できますし、扱いやすいでしょう。

 

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サラダ油小さじ1を敷いた中火のフライパンで表面を焼いてきます。

 

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焦げ目がついたら裏返し反対側も焼きます。この時はまだ中が生でも大丈夫です。ハンバーグは中に空気が入っている分、火が通りにくい料理です。煮込み鍋に移してじっくりと火を通していきましょう。

 

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ソースの鍋に移します。

 

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ソースの鍋に移します。水150mlを加えて、蓋をして中火にかけます。煮汁が沸いてきたら弱火に落とし、10分ほど煮込みましょう。

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いい具合に火が入りました。上質な挽肉を使っているので表面にアクが固まることも、必要以上に脂が浮くことはありません。この状態で味見をして、好みで生クリームを加えます。鍋を揺すって混ぜると脂と煮汁が混ざり合い、コクが出ます。生クリームはお皿に盛ってから少量を落としてもいいでしょう。

 

 

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出来上がり。緑があったほうが美味しそうに見えるので、茹でたグリーンアスパラガスを添えました。ブロッコリーなどもよく合います。少し手間がかかるかもしれませんが、つくる楽しみ、食べる楽しみの両方があり、誰もが喜ぶ料理です。ご飯にソースを絡めながら食べてください。

 

 

アイズミートのハンバーグ

 

 

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〈I’s MEAT SELECTION〉国産牛 牛ハンバーグ(豚網脂巻き)1枚(130g)540円 

毎週月曜限定 無くなり次第終了

地下食品売場〈I’s MEAT SELECTION〉でハンバーグが売られていました。これを買えば家に帰って焼くだけでハンバーグが楽しめます。ポイントはハンバーグ種を包む「網脂」です。

 

網脂は豚の内臓の周りについている網状の脂。脂肪の少ない肉をソテーやローストする場合、網脂で包んでおけば、脂のうまみが加わりおいしく仕上がります。ハンバーグの場合は肉汁を逃さずにジューシーに焼けます。

 

もうひとつのメリットは焼き色がきれいにつくこと。肉を焼く際に油脂が果たす役割は、凸凹を埋めて熱接触を増やし、効率よく加熱するためです。しかし、最近ではメイラード反応(香ばしい焦げ色と味)に油脂が触媒として関わっていることがわかり、風味にも関係していることがわかってきました。つまり、網脂で包んで焼くとメイラード反応が効率的に進み、おいしい風味が出るのです。

 

 

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フッ素樹脂加工のフライパンを中火にかけ、表になる面から焼いてきます。

 

 

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焦げ目がついたら裏返し、火を弱火に落とします。酒大さじ1を加え、蓋をして蒸し焼きにしましょう。

 

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8分〜10分で火が通るはずです。最初に述べた通り、ハンバーグは火が通りにくい料理なので、タイマーなどを使って加熱してください。網脂から脂が溶け出しているので、キッチンペーパーなどで拭き取ります。

 

 

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ハンバーグが丸く膨らんでいれば焼き上がりです。

 

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器に盛り付けます。網脂のこってり感が加わり、極上の味です。塩コショウのあっさり味がついてますが、添えるのであれば大根おろしにポン酢を加えた「おろしポン酢」がよく合います。出来合いのハンバーグでこれだけ本格的な味が楽しめるのであれば、買ってしまうのもアリですね。

 

Text & Photo : Naoya Higuchi

 

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