2024.4.5 UP
「ふき」は数少ない日本原産の野菜で、シャキシャキした食感とほろ苦さが魅力。食べたことはあっても料理したことはない、という人が多いかもしれませんが、下ごしらえ自体はかんたんです。
「ふき」はさっと洗い、鍋に入る長さに切ります。これから下茹でをするのですが、ポイントは湯に加える塩です。
「ふき」に限らず春野菜を茹でるときは、塩分濃度1.5%の湯で茹でるのがコツです。普段の塩加減よりも強めを意識してください。なぜ、塩が重要なのでしょうか。実は塩味に苦味を抑える性質があり、塩味を効かせた湯で下茹ですることで苦味を適度に抑えることができます。
沸騰している湯に「ふき」を入れ、2分茹でます。
水にとって、冷ましましょう。
筋が残らないように両端から皮を剥きます。筋を取る作業はそれなりに時間がかかりますが、皮を剥いた「ふき」の透明感のある淡い緑色はほかの野菜では見られないものです。この瞬間に料理の楽しみがあります。
さて、ここまでが下処理です。筋を取った「ふき」は佃煮にしたり、炒め物にしたりしますが、今日は煮物にしましょう。「ふき」の煮物は愛知県の郷土料理の一つ。料理店では「ふき」の色を残すために色煮という技法(「ふき」を煮込まずに冷たい煮汁に一晩浸ける)を用いますが、色づくまで煮た「ふき」には素朴でしみじみとしたおいしさがあります。
◾️ふきと油揚げの煮物
<材料>
ふき 250g
油揚げ 1枚
出汁 360ml(昆布と鰹の合わせだし)
しょうゆ 大さじ2
みりん 大さじ1
<作り方>
油揚げは2cm幅に切り、「ふき」は4cm長さに切りそろえます。鍋に油揚げと出汁、しょうゆ、みりんを入れて中火にかけます。
沸騰したら「ふき」を鍋に入れ、火を弱めてから15分煮込みます。「ふき」の歯ごたえが残り、噛むと出汁のおいしさが広がります。今の時期ならではの味わいを楽しめます。
次にご紹介するのは「菜の葉」のフリッタータです。
「菜の花」はアブラナ科の花野菜の総称で、小松菜、おいしい菜、のらぼう菜など様々な品種があります。めずらしいところでは大根や白菜の菜の花もおいしいもの。楽しめるのは今の時期だけで、独特のほろ苦さが魅力です。「菜の花」はおひたしにするのが定番ですが、今日は卵とあわせてオムレツ風の料理にしましょう。
◾️菜の花のフリッタータ
<材料>
菜の花 100g
卵 2個
パルメジャーノチーズ 10g
牛乳 大さじ1
オリーブオイル 大さじ1
<作り方>
まずは「菜の花」を茹でますが、時間があるときは切って水を吸わせておくと加熱時間を短くできます。
「菜の花」は茎と葉で加熱時間が異なるので、まず2つに切り分けましょう。
1.5%塩分濃度の湯にまず茎から入れます。茹で時間は2分が目安。
1分経ったら葉の部分を入れ、1分茹でましょう。
水にとって冷まします。濃い塩水で茹でるメリットは苦味が抑えるほか、脱水が進むので味が濃くなる効果もあります。
茹でただけの菜の花もおいしいのですが、今日はオムレツにするので5mm長さに刻みます。
ボウルに入れ、卵、パルメジャーノチーズ、牛乳を加え、混ぜ合わせます。
中火にかけたフライパンでオリーブオイルを熱し、卵液を注ぎます。
軽く混ぜながら火を通し、半熟状態にしましょう。
すべらせるようにして一度、皿に移します。
フライパンを皿に被せるようにして……ひっくり返します。
裏面もさっと焼いたら出来上がり。
周りを抑えるようにすると形が整います。「菜の花」のようなアブラナ科の野菜はチーズと相性がいいので、切り分けて適量のパルメジャーノチーズをおろしかけると味わいが増します。苦味も卵と合わせるとちょうどいい具合になります。
「ふき」と「菜の花」、あるいは山菜は春の味覚。苦味の感受性は人によって異なり、食べるのに慣れが必要な食べ物で、子供の頃は嫌いでも大人になるとおいしく感じられたりするもの。店頭で見かけたら手にとってみてください。
おまけ
苦味を抑えるのに塩を活用したパターンをご紹介しましたが、忘れてはいけない方法が2つ。「油でコーティングする」です。山菜はよく天ぷらにしますが、油で食材をコーティングすることで舌の感受性を鈍らせ、苦味を感じにくくする手法。今回はおまけに「菜の花」のソテーをご紹介しましょう。
フライパンにオリーブオイル大さじ1をしき、菜の花100gを中火でじっくり焼きます。少しついた焦げ目がごちそうです。
ひっくり返して両面を焼き、塩を加えます。「菜の花」を焼くと水分が蒸発するので思っているよりも塩味が効きやすいので注意。控えめを心がけましょう。塩は軽くひとつまみ、または少々が目安。
チーズをおろします。おひたしに鰹節を添えるのと同じ理由で、うま味があったほうが苦味を感じにくいからです。
「菜の花」のソテーはシンプルな料理ですが、意外と食べごたえがあります。夕方、早めの時間に白ワインと一緒にどうぞ。
Text & Foto : Naoya Higuchi