工法がもたらす魅力と個性|削る・曲げる・重ねる・繋ぐ・合わせる ~伝えたい、日本の技術~

歴史ある家具ブランドや木工メーカーには名作と呼ばれるプロダクトが数多く存在します。最も代表的なのがチェアですが、アプローチによって際立つ魅力も個性も異なり、それぞれが得意とする工法が存在します。繋ぐ、削る、重ねる、曲げる、合わせる。日本のクラフトマンシップによって生み出される美しさ、力強さ、モダンさ、クールさを体現するチェアを知ってほしい。ぜひ、触れてほしいと思います。
1.シームレスに繋ぐ_タイムアンドスタイル
目地を極力取らない接合にこだわり、なめらかな曲面でシームレスに繋いだ自然な造形美を追求する<タイムアンドスタイル>。丁寧な削り出しにより無垢の木材の柔らかな表情とシャープさを共存させた意匠は、機械仕上げだけでは表現できないような繊細な表情を生み、モダンな存在感の中にやさしく佇む姿が印象的です。どこに触れても心地良いニュートラルな雰囲気を極めたようなチェアは、現代のどんなライフスタイルにも、インテリアにも溶け込みます。

<タイムアンドスタイル>の代表チェア


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<タイムアンドスタイル>
「a chair on the vertical axis- armchair」
(天然木ブナ材・座[ファブリックランク1~ストランド75]:アクリル 67%・リネン 17%・ポリエステル 16%/H780×W520×D515×SH450×AH630mm)
各132,000円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 本館5階 リビングルーム
□三越伊勢丹オンラインストア
日本の寺院の木造建築にみられる伝統工法「懸造り」の考え方をチェアの構造と意匠として抽象化。軽量ながらも耐久性があり、繊細な構造美、静かな佇まいが日本的です。継手は流れるように柔らかに繋がり、無垢材を楕円形状に削り出した背板は身体をやさしく受けとめます。

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<タイムアンドスタイル>
「The sensual ladder back armchair」
(天然木ブナ材・座[レザーランク2]:スムースレザー(牛革)#40108/H802×W623×D600×SH468×AH610mm)
各286,000円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 本館5階 リビングルーム
□三越伊勢丹オンラインストア
背と座のクッションをウッドフレームにつけた新しい構成のチェア。クッション性を与えた背もたれの感触は身体に馴染み、くつろぎと快適さに満ちたダイニング時間を作りだします。楕円の断面形状をした脚部もシャープさと柔らかさが共存する、これまでにない佇まいです。


2.手仕事のように削る_マルニ木工
1960年代から培ってきた機械で彫刻的に削り出す技術を発展させ、3次元の曲線のある家具を作っているのが<マルニ木工>。職人の手仕事のような形状を機械で生み出すためのプログラミングは専門の技術者が担当し、木に触れたときの心地良い感覚を大切にし、無垢の木の塊から削り出しています。削りの工程は機械でも、思わず触れてみたくなるようななめらかさ、優美さにこだわり、仕上げの磨きは人の手で行っています。


<マルニ木工>の代表チェア

背からアームにかけての緩やかなカーブが美しい、<マルニ木工>を代表するアームチェア。ゆったりとした座り心地なのでダイニングチェアとして、ラウンジチェアとしておすすめです。アームから背もたれにかけてエッジ(境界線)が溶けていき、チェアとしての造形美が際立ちます。

「曲木ではなく3次元的な曲線を機械による量産のチェアで表現した」というデザイナーの深澤 直人氏の思いを無垢の木で実現させたのが「Tako」。座面もやさしくフィットするように、立体的に削り込んでいます。直線がどこにも存在しないチェアは、座る人の姿勢にもライフスタイルにも自然に寄り添います。

100年経っても世界の定番として愛される木工家具を目指して、目に触れないような裏面の仕上げや木目の統一感などにもこだわり、なにげない日常を美しく、心豊かにしてくれるプロダクトを生み出しています。

3.クリエーティブに重ねる_天童木工
約1mmの木の板を幾重にも重ね、圧力と熱を加える「成形合板」を得意とする<天童木工>。立体的な形を自由に生み出すことができる技術なので、曲線や曲面をデザイン表現に落とし込んだデザイナーや建築家などのクリエーター作品も多いメーカーとしても知られています。「成形合板」は無垢材に比べて強度が約1.5倍もあるとされ、少ない材料で丈夫な家具を作ることができるため環境にもやさしい技術といわれています。

<天童木工>の代表チェア

日本の工業デザインの礎を築いたデザイナーの柳 宗理氏によってデザインされ、1956年に発表されたジャパニーズデザインのアイコン的家具。わずか7.5mmの2枚の成形合板を金具でジョイントしただけのシンプルなスツールは、3次元的なカーブの繊細な形状にも関わらず強度は抜群。室内を彩るオブジェとしても人気です。


1954年に日本のモダニズムを代表する建築家のひとりである前川 國男氏が設計した神奈川県立図書館のために水之江 忠臣氏がデザインしたため、現在も「図書館イス」の愛称で親しまれているチェア。成形合板の背と座を左右のフレームで挟み込むというシンプルな構造が特徴で、3次元曲面が快適な座り心地をもたらします。


4.優美に曲げる_柏木工
高温の蒸気で蒸した無垢の木材を曲げる技術による曲木家具の製造を創業初期から続けている<柏木工>。「曲木」は木材の繊維を断ち切ることなくしなやかなカーブを得られ、木目の通った美しい部材を活かせるだけでなく、切削による材料の無駄も抑えられるメリットも。曲木に適したブナ材が豊富な飛騨地域での曲木家具の歴史は古く、<柏木工>でも品質の高さを追求した独自の家具を製造しています。


<柏木工>の代表チェア

座り心地の良さを追求し、背と座の形状にこだわったチェア。背は無垢のウォールナット材を曲木と切削の加工を織り交ぜることで3次元曲面を実現しています。専用の金型から生み出される座面は、ベニヤの積層材に高触感ウレタンを接着。背のウォールナット材が際立つカラーリングは、背もたれとフレームは別々に塗装した後、組立を完成させるという特別な工程を経ています。

ウィンザースタイルを独伊にアレンジした、背もたれから伸びる長い前脚が特徴的な<柏木工>を代表するチェア。背もたれは丸棒が円弧を描くように配列され背中へのアタリも心地良く、座面は臀部の形状に沿った「座ぐり」によって木製椅子とは思えない座り心地を実現しています。


5.芸術的に合わせる_マスターウォール
ウォールナットの美しさを最大限に活かすプロダクトを追求してきた<マスターウォール>。木材にレザーやファブリック、スチールや大理石などの異素材を組み合わせ、素材同士が豊かさを引き立て合う家具を得意としています。ファーストプロダクトは25年前に発表された「WILDWOODテーブル」。ウォールナットの無垢天板とスチールレッグの組み合わせで、異素材コンビネーションはブランドの原点となっています。


<マスターウォール>の代表チェア

アームから前脚にかけて湾曲する細身のフレームが美しいプロポーションを実現する「UC3」。チェアとしてはとても軽量です。レザー製の背もたれは身体をやさしく包み込むような感触で、長時間でも快適に過ごせます。シンプルなので、さまざまなテーブルと好相性です。
※2024年5月14日(火)以降121,000円に価格改定いたします。

こちらも軽量仕様の「UC4」。背もたれはレザー、座面はファブリックと異素材の組み合わせでデザイン性も追求しています。スリムなプロポーションでありながら、強度は抜群で座り心地も快適。レザー製の背もたれは、経年変化で味わいを増します。
※2024年5月14日(火)以降97,900円に価格改定いたします。


家具好きほどチェアにこだわり、オブジェのように愛でるというコレクターもいるほど。今回ご紹介したチェアはどれもが存在感にあふれるので暮らしの空間を、ライフスタイルを新鮮に彩ってくれるはずです。今回ご紹介したものはすべて三越伊勢丹オンラインストアでもお求めいただけます。