皆川 明が描く、暮らしの風景。僕にとっての「LOVING LIVING」。|<マルニ木工>×<ミナ ペルホネン>ふしとカケラ2025

皆川 明が描く、暮らしの風景。-僕にとっての「LOVING LIVING」。のメインビジュアル

はじまりから11年間、「ふしとカケラ」を傍らで見守ってきた皆川 明さん。数々のコレクションを発表する背景には、どんな暮らしの様子を思い浮かべていたのでしょう。

―「ふしとカケラ」のプロジェクトを振り返って、いま思うことは?

スタートから11年、ずっと変わらないのは、ふしやカケラがいろんな個性の集まりだという感覚です。人とは違うかもしれないけれど、自分だけの素敵な存在に気づくこと。好きなものに囲まれて過ごすことが、愛着のある暮らしとなる。
「ふしとカケラ」のなかに、ずっと僕はそんな情景を思い描いています。

  • 皆川 明さんの画像

― 暮らしに対する意識は、時代とともに変わってきていると思いますか?

少し前の時代と比べると、“暮らし”という言葉の感覚が大きく違っているように感じます。
昔の暮らしは、スタンダードな感覚で地道な日々を繰り返すことを示していたのに対し、いまでは身近な環境に細やかに意識を及ばせ、豊かな時間を自らが作り出すことを意味している。
食べ物や着るものはもちろんのこと、日用の道具も大切に選んで、使いこなしている人がどんどん増えているように思います。

  • 皆川明さんの座る椅子画像

― 豊かに暮らすために、皆川さんが実践していることを教えてください。

毎朝食べる卵料理でしょうか。
もっともシンプルな調理法と言えばゆで卵ですが、気分に応じてたまにはポーチドエッグやオムレツにしてみる。ときには調理時間をアレンジしたり、使う塩を変えるだけでも、いつもとは違う新鮮な感覚に出逢うことができます。
コーヒーもお気に入りの豆がいくつかあるんですが、浅煎りと深煎りを自分の感覚で混ぜて、オリジナルブレンドをつくって楽しむことも。そんなわずかな変化ですら、ワクワクした気持ちで豊かに過ごすきっかけになるんじゃないでしょうか。

― インテリアを素敵に飾るために、心掛けていることはありますか?

家具選びだけでなく、身の回りに飾っているオブジェやアートピースのレイアウトも空間と呼応するように心掛けています。
自宅の階段の踊り場がちょうど吹き抜けになっていて、壁が上にぐんと伸びているんです。この高さを活かして、踊り場の床には地上に暮らす動物の置物を並べ、壁の中央には木のオブジェ、上の方には山の写真を掲げ、自分なりに自然の風景を再現して楽しんでいます。
また、窓辺には黒と白の大理石でできた魚のオブジェを飾っていますが、ここでは同じ色調のガラス細工を添えたり、波型をした陶器を並べるなど、モノトーンの海をイメージしてスタイリングしていますね。バラバラに買い揃えたものでも、素材感や造形が似ているものを組み合わせると、意外とまとまりのある情景が作り出せます。

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― 暮らしの作り方は、自分一人だけでなく、周りの人にも影響を及ぼすものだと思います。そこにはどのようなお考えをお持ちですか?

家具で言えば、同じデザインのもので揃えた方が空間に統一性が出るとは思いますが、バラバラにしたり、色を変えてみると、それぞれの居場所が生まれる。今回の企画で言うとイエローの椅子は私のもの。木のふしのマークが肘掛けについたものはあなたのもの。などというように。
異なる音色、旋律が一つになって、交響楽のように調和する。ともに暮らす人や招き入れる大切な人と気持ちをシェアできると、居心地はさらによくなり、暮らしが華やかになると思いますよ。

  • 裁断した際のハギレ画像