国内外で活躍する<TOMO KOIZUMI>デザイナー・小泉 智貴さんにインタビューしました!

色鮮やかで存在感のあるフリルドレスが国内外で注目される<TOMO KOIZUMI/トモ コイズミ>。2021年にブランドを立ち上げられて10年を迎えられた<トモ コイズミ>のデザイナーである小泉 智貴さんに、ブランドの原点や制作の上でご自身が意識されていることなどについてインタビューをさせていただきました。

─ファッションデザイナーにとっての「原点」はいろいろあると思います。例えば婦人のドレスだったり、アバンギャルドなスタイルだったり。小泉さんの原点はどのようなものでしたか?
小泉:一番大きいのは、ジョン・ガリアーノが<ディオール>でオートクチュールのショーをやっていた2000年代中盤ぐらいのコレクションですね。すごく好きで影響を受けました。雑誌で見て感銘を受け、ファッションの世界に進みたいなと決意をしたんです。ほかにもロンドンのセント・マーチンズで学んだデザイナーたちが特に勢いがあって、そういったところの人たちにすごく憧れがありました。ただのエレガントでもなく、エッジが効いただけではない、ないものを作ってる人たちに憧れていたんですね。<アレキサンダー・マックイーン>なんかも、服とかを見るとすごくエレガントで、でもショーのやり方はアバンギャルドだったりして。そういうバランスがすごく好きでした。
─小泉さんは、千葉大学に進学され自分で制作を始められて、ご自身でブランドを立ち上げられました。その頃からフリルを使って制作されていたんですか?
小泉:フリルが付いてるものも作っていたんですが、独学で技術も限られてたので、並行してストレッチの生地を使っていて、伸びやサイズも結構合わせやすいので、ボディコンのドレスを作っていました。そのときは、そういうのが流行っていたんです。だいたい2011年にブランドを立ち上げた頃ですね。
─フリルでボリュームを出すアイデアはどうやって始まったんですか?
小泉:毎シーズン作っている人があまりいなかったので、それをやっていけば自分のシグネチャーになるんじゃないかと思いました。でも、ファッションの歴史で見ると意外と同じようなものを作ってる人はたくさんいるんですね。もちろんガリアーノとかゴルチェとかも作っていたり、マックイーンやジャンバティスタ・ヴァリとかもそうですね。ああいった壮大で半端じゃないものと言うんですか、そういったものに影響を受けて、自分もそれをさらに追い求めるようになりました。

─小泉さんのドレスを見たときに、色彩もシェイプもフリルもそうなんですが「純粋さ」を大切にしている感じがします。やはりそういった考えを持ちながら制作されているのでしょうか?
小泉:ありますね。というのも、物を作るって、例えばより個性を出そうとか、前回のものより変えていこうと思うと、レイヤーを重ねる感じになってすごく説明的になっていきます。小難しい感じになりやすいと思うんです。でもそれって、果たしてどれだけ重要なのか。例えばテーマを説明するようなディテールとか、この時代のこれをここに使ってみたいというような、そういったものが背景にあるのは良いと思うんですけど、それが一番にきてデザインが損なわれてしまうというのは、自分としてはあまり納得ができません。自分は衣装の仕事を、ブランドを立ち上げてからもしばらくやっていたので、説明のいらない良さみたいなものを意識しています。作るときもそうですし、他人の作ったものとかを見るときもその部分は意識します。美術館へ行ったりしてアート作品を見る際にも、それが自分の中の基準になっていますね。見て良かったと思い、後で説明を聞いてみるとさらに良い作品っていうのは、実は本当に良いのかなと疑問に思ってしまうんです。
─アートとの接点も持ちつつ制作されていると思うのですが、制作上で大事にされていることはありますか?
小泉:アートといわれると本当にアートなのかと思ってしまいますが、もっと伝えるとか分かりやすさという点だと絵本みたいな在り方を大切にしたいと思っています。絵本の色彩は自分も好きだし、影響を受けている絵本とかもあるので、そういうのを大事にしていたりします。例えば衣装の仕事でいうと、インパクトがあることって大事なんですが、でもわざとインパクトを出すために、ノイズのような色合わせとかデザインをする人とかもいます。それはコスチュームとしての機能としては良いと思うんですけど、ノイズを出すことが前に出ちゃってるというのは、自分は違うのかなと思います。目立つけれど調和が取れていて美しいと感じるものとか、コスチュームで作ってるけどファッションエディトリアルでも使えるようなデザインのものとか、そういうのをずっと目指してやってきています。

─小泉さんは、ご自身のブランドの規模感についてはどうお考えですか?
小泉:たくさん売れれば良いという時代は終わったと思うし、自分が作っているものもニッチだと思っています。そのニッチなものをどう消費されずに自分のやってることをキープできるかと考えると、渇望感というか、売り切れるだけのものちょっとだけ出したり、あとはショーをやって大きいものを作ってイメージをキープしたり。それで良いのかなと思っています。やはり自分の名前でブランドをやっているのは大きいですし、それを大切にしたい。もしかしたら、自分が老人になったときに少しだけ考えが変わって、誰かに引き継ぐこともあるかもしれませんけどね。でも今のところは、やれるのは自分だけだと思ってます。
─最後に、小泉さんの今からの夢みたいなものって何でしょうか?
小泉:夢は、今の状況が落ち着いて海外へも行けるようになったら、以前のように自由に海外に行って、自分の憧れてる人と仕事をするということが今は一番の夢ですね。自分としてはプレッシャーがかかることは、あまりやりたくないんです。自分自身が楽しめることが良いですね。もちろん楽しさを含め、自分の憧れとプレッシャーのバランスが取れていればチャレンジはします。ただ、規模が大きいとか、金額が大きいとかっていうのは自分がやらなくても良いかなという思いは強いですね。あとは、オーダーのドレスを受注しているので、ゆくゆくは<トモコイズミ>のドレスをオーダーしたいという人たちが来れるサロンみたいなものができたら良いかなと思います。でも、いつでもそこに行けば何でも買えるみたいなお店はすぐには難しいですね。探してる人だけ、熱意のある人だけ、欲しいと思っている人だけが手に入れられればいい。それは、私が本当に世界にひとつだけしかないものを作っていく体験を提供できたらいいなと考えてやっているからです。そういう方たちが購入してくれれば良いかなと思ってます。そして、今までもそうですが、これからもただ待ってるだけじゃなくて、自分から取りに行く気持ちでやっていきたいと思っています。

