10年ぶりとなる日本での新作発表|毛利太祐個展「Apothanasia」を開催

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東京藝術大学を卒業後、2009年から海外を中心に作品を発表してきた毛利太祐氏。「鉛筆」という身近なツールを使い、無彩色の可能性を引き出す緻密な描写は、鑑賞者を一瞬で引き込む魅力にあふれています。今回、日本橋三越本店初の個展を開催。日本での新作発表は10年ぶりという毛利氏、その作品づくりに迫ります。

イメージの世界と現実のガラスが重なり合う

毛利太祐作品を代表するのは、ドローイングの上に割れたガラス板を重ね合わせたポートレート。数千枚にものぼる膨大な画像を参照して描き出される“架空の人物”は、人種や性別も曖昧。絵画の中だけに存在する、現実には掴めない存在です。

毛利太祐「ZIP 6」(紙に鉛筆、ガラス/2017年)

画面を二極に割ったような大胆な構成。ガラスのヒビを境にイメージの半分がボケて曖昧になり、鑑賞者を思考させる。
毛利太祐「ZIP 6」(紙に鉛筆、ガラス/2017年)
※今回の個展に展示はございません。

「作品を制作するときに大切にしているのは、『掴めないイメージになるか』、そして『掴みたい欲望を引き起こすか』。近づいて見ても3次元的イリュージョンが壊れないハイパーリアリスティックなイメージと、イリュージョンが壊れたノイズのようなイメージ、そして現実的な物質でありながらイメージの世界に溶け込むガラスのヒビ。この3つの要素が、掴めないイメージと掴みたい欲望の間の往復を生み出しています」と語る毛利氏。

鉛筆で描くモノクロームの、不確定なイメージ

写真と見まがうほど細密に描かれた作品のほどんどに、鉛筆を用いています。
「写真や映画でも似たようなことが言えますが、白黒で表現される世界にはイメージを構成する重要な要素である『色彩』が欠落しています。それでいて、白黒写真のポートレートを見て、灰色の人間が実在すると感じる人はほとんどいないですよね?つまり、鑑賞者それぞれの想像において自由にイメージが補完される。この不確定なイメージであることが重要なんです」

毛利太祐「ZIP 7」(紙に鉛筆、ガラス/2017年)

毛利太祐「ZIP 7」(紙に鉛筆、ガラス/2017年)
※今回の個展に展示はございません。

毛利太祐「ZIP 7」(紙に鉛筆、ガラス/2017年)

「そして、色というのは理論上、無限に階調を増やすことができます。白から黒の間にも無限のグレーがあり、私は鉛筆の種類や筆圧、画面に接触させる面積、動かし方…さまざまな掛け合わせで欲しい色を正確に取り出していきます。この作業を絵具で再現しようとすると…ちょっと想像したくありませんね(笑)」

個展「Apothanasia」では新作をご紹介

今回、はじめて作品を観るお客さまには自己紹介となるので、これまでの制作の概要と、今後の展開が見えるような個展にしたい、と話す毛利氏。掴めないものを掴もうとし、掴めないからこそさらに掴みたくなる。人間の本質を問うような毛利作品に、どうぞご期待ください。

毛利太祐「The Cracked Portrait 11」3,850,000円(紙に鉛筆、ガラス/95.3×69.7×6cm/2024年)

毛利太祐「The Cracked Portrait 11」 3,850,000円
(紙に鉛筆、ガラス/95.3×69.7×6cm/2024年)

毛利太祐「ROSE 5」528,000円(紙に鉛筆、ガラス/ 42×42×4.5cm/2024年)

毛利太祐「ROSE 5」 528,000円
(紙に鉛筆、ガラス/42×42×4.5cm/2024年)

毛利太祐「Apothanasia」
□2024年3月20日(水・祝)~4月1日(月) 最終日午後5時終了
□日本橋三越本店 本館6階 コンテンポラリーギャラリー

毛利太祐氏

※価格はすべて税込です。
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