【アクセサリー連載VOL.3】

ジュエリー造りにおいて大切にしていること、譲れないこと、貫いていること。すべてのデザイナーたちは胸の内に「美の哲学」を秘めていて、だからこそ生まれる唯一無二の輝き、可愛さ、華やかさがあります。今回は〈talkative/トーカティブ〉のデザイナー、マロッタ忍さんの「美の哲学」です。
会話を紡いで作られるウィットに富んだオリジナルジュエリー

リング 159,500円
ジュエリーデザイナーのマロッタ忍さんが2008年にスタートさせた〈トーカティブ〉。グラフィックデザイナーとしての経歴を持つマロッタさんならではの感性が宿るハンサム&ラグジュアリーなジュエリーの制作について「職人と思い描いたものが実現できるか話し合いと試作を重ねて、鉱山のオーナーや石のディーラーからも石のバッグボーンを伺うなど、〈トーカティブ〉というブランド名の通り会話を紡ぎながらジュエリーを仕立てています」と話してくれました。
確かな存在感と機能美を持つ愛すべきチェーン

色石が人気の〈トーカティブ〉ですが、マロッタさんの個人的な興味がジュエリー作りの原動力となっているのが「チェーンコレクション」です。マロッタさんは「パーツが繰り返し繋がることで完成するチェーンという構造物に昔から興味がありました」と話し、本来は硬いはずの金属なのにコマを繋ぎ合わせることで規則的に列をなし、なおかつ曲面にも沿っていく。「同じものの連続性と、しなやかさと、力強さ、そのすべてが美しい」とチェーン愛を語ってくれました。「チェーンはペンダントトップなどを飾るための脇役のように考えられがちですが、主役になりうる存在」と思い続けているそうで、チェーンを題材にしたジュエリーを積極的に発表しています。

立体のものが平面に映るコピー機であらゆるものをコピーするのに夢中になっていた時期があったというマロッタさん。「チェーンをコピーにかけて無造作に並べたチェーンが平面という柄(パターン)になって出てきたとき、その美しさに心を奪われ、「FAKE」というコレクションを生み出すきっかけになりました(笑)」とデザイナーらしい視点のエピソードも披露。チェーンコレクションのひとつである「JOINT」は、マロッタさん自身も「ほぼ毎日かかさず身に着けている」といい、「いつの時代でも普遍的で、それでいて確かな存在感と機能美を持ったジュエリーを自分でも身に着けたいと思って作りました」と、その誕生について話してくれました。

チェーンが動いた瞬間を切り取ったように見えるだまし絵のような「FAKE」
①バングル 297,000円
②リング 242,000円
③リング 154,000円
※すべてオーダーにて承ります。その他は参考商品です。

タイムレスに身に纏えるようデザインしたという「JOINT」。使用されているツイストチェーン(写真右)は気が遠くなるような作業工程を経て生まれている。
左:ネックレス 297,000円
右:ブレスレット 99,000円
マロッタさんが「ご覧いただければチェーンの尊さがわかっていただけると思います」と語る作業工程

チェーンのコマを石座に見立ててダイヤを埋め込んだ「SETTING」
①ピアス 92,400円 ※シングル
②ネックレス 286,000円
③ピアス 63,800円 ※シングル

異なる3種のチェーンを組み合わせた「TRIO」(左)、チェーンのシルエットを表現することをコンセプトにした「CHAIN SHADOW」(右)
左:ピアス 66,000円 ※シングル
右:リング 53,900円

上:ピアス 88,000円
下:ピアス 99,000円
デジタルとアナログを行ったり来たりのメイキングとデザイン
デザインを考えるときは紙にも残すそうですが「絵がそんなに上手ではないので(笑)、パソコンとプリンターだけでなく、針金や厚紙、消しゴムとカッターまでがデザインツールです」とマロッタさんのメイキングは独特。「パソコンとアナログを行ったり来たりしています」と切る、貼る、削る、時には簡単な模型も作るなど平面と立体を引き算しながら組み立てているそうです。「できあがったアイデアと私の思いを職人さんに伝えて、10年以上もお世話になっている工場の方とも「こんな構造ができないか?」から始まり、話し合いや試作は何度も繰り返しています」とクオリティに対するこだわりを話してくれました。

リアルな構造を確認するためにプリントした紙のパーツを組み立てることも
家族との思い出が育んだジュエリーへの深い愛情

マロッタさんに「ジュエリー」について伺うと、「家族からのプレゼント」という答えが返ってきました。「自身の思い出を振り返ると、家族からジュエリーをプレゼントされる機会が多かったような気がします。決して高価ではないのですが、そのどれもに好奇心をくすぐられ記憶に強く残っています」と。家族から贈られたジュエリーは、いまでも大切に残しているそうです。外出時には必ずジュエリーを身に着け、家に帰ったら「お疲れさま」という気持ちを込めてジュエリーたちの引き出しに寝かせてあげるというマロッタさん。そんなジュエリーに対する深い愛情や愛着は、家族との大切な思い出から育まれたのかもしれません。
ジュエリーを身に着けると「オフだった自分がオンに切り替わると同時に、ときめく気持ちと高揚感が湧き出てきます」と話すマロッタさん。ジュエリーの存在を、作り手としては「好奇心を表現できるもの」であり身に着ける者としては「悦びやときめきを毎日に添えてくれるもの」と表現します。「ジュエリーという生涯関わりたいと思える職が持てたこと、石を探しに行くたびに世界中で素敵な人々に出会えること」、それがジュエリーがマロッタさんにもたらしてくれたなによりもハッピーなことだそうです。

マロッタ忍
グラフィックデザインの第一線を経験後、ジュエリーデザインおよび制作を学び大手企業でジュエリーデザインの企画に携わる。日本の量産向けジュエリーと海外のアートジュエリーの中間のようなファインジュエリーでありながらカジュアルに身に着けられるジュエリーブランドが少なかったことから、グラフィックで学んだことを活かして2008年に〈トーカティブ〉を設立。JJAジュエリーデザインアワード新人賞、伊丹クラフト展審査委員賞を受賞。
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