【アクセサリー連載VOL.4】

ジュエリー造りにおいて大切にしていること、譲れないこと、貫いていること。すべてのデザイナーたちは胸の内に「美の哲学」を秘めていて、だからこそ生まれる唯一無二の輝き、可愛さ、華やかさがあります。今回は<CADEAUX/カドー>のディレクター、菅原実智さんの「美の哲学」です。
自分たちだけのための自作アクセサリーがブランド誕生のきっかけに

「自分たちが身に着けたいジュエリーが欲しかったので自作したんです」と、天然石と華奢な18金チェーンを組み合わせた手作りアンクレットがとあるセレクトショップバイヤーの目に留まり、それをきっかけに姉妹でブランドとして立ち上げた<カドー>。そのエピソードからもわかるように菅原さん姉妹はファッションの一部として日常的にジュエリーを楽しんでいたふたりでした。「トレンド感を意識したモダンなデザインと端正な美しさを常に意識して、奇をてらったデザインにするつもりはありません」と語るのはディレクターを務める妹の菅原実智さん。クラシックな雰囲気を大切にしながら、“ありそうでない”ジュエリーを作りたいと考えているそうです。<カドー>のベストセラーのひとつにあこや真珠をカラーシルク糸で結んだネックレスがあります。このジュエリーについても「いまのパールネックレスの多くには切れにくい糸やワイヤーが使用されていますが、着用した時の美しいしなやかさは絹糸が勝ります。製作は大変なのですが、<カドー>では絹糸にこだわって昔ながらの手法ですべて姉が手仕事で作っています」とジュエリー作りに対する思いを話してくれました。

リング 198,000円から
一点物のカラフルストーンを使用したリングのシリーズは、斬新な色合わせが華やかで遊び心のあるデザインが印象的。姉妹ともにカラフルな色の世界観が好きということで、まるでオモチャのような遊び心あふれる色合わせをテーマにしたそう。「一過性のトレンドではなく10年、20年先まで愛用し続けられるようなエターナルなデザインであることを意識しています」という<カドー>のリングは、宝飾品としての品質がきちんと保てるような価値のある素材使いもさることながら、華奢すぎないボリューム感、リングの裏側まで全方位が美しい仕上げなど、「わかる人にはわかる」とても強いこだわりが見て取れます。実はこの一点物リング、原点はブランドをスタートする以前の15年前に母親から譲り受けたお姉さまの誕生石アメシストをピンクサファイアと合わせてデザインをし、リフォームしたところ斬新なバイカラーで着けていると必ず褒められていたそうです。なので「発想のインスピレーションはすでに15年前に生まれていたのかもしれないです」と実智さんは当時を振り返ってくれました。
<カドー>のジュエリーはファッションとの相性を楽しむためにある

ネックレス 71,500円から
「ファッションとコーディネートする日常的に使えるジュエリー」をデザインコンセプトとする<カドー>のジュエリーはお洋服やバッグ、靴などとの相性がよく、それだけにファンの世代にも偏りが見られず、20代から70代まで幅広い年齢層の女性から支持されています。カラーシルク糸のパールネックレスが誕生した背景にも「ファッション」という考え方が大きく影響しているようで、「誕生は2008年だったんですけど、当時はパールネックレスは冠婚葬祭用でカジュアルファッションに合わせる方はほとんどいなかったと思いますが、日本の伝統を感じさせる美しいジュエリーであるあこや真珠を普段着のおしゃれにも楽しめるように」と、華やかな色をパールに加えることを閃いたそうです。オールノット(結び目)の糸を一般的な白ではなく、ピンクやブルーなどの色糸で結ぶことでパールの間からチラッと明るい表情が顔を覗かせる。菅原さん姉妹の閃きはパールネックレスをファッションアイテムへと昇華し、デイリーに身に着けるという新しい価値観を生み出しました。「例えば明るいブルーのギンガムチェックシャツに、イエロー糸のパールネックレスを合わせて色遊びを楽しんだり、シックなグレーのニットにピンク糸パールネックレスでアクセントにしてみたり」とファッション好きな実智さんらしいアドバイスも。後ろ姿の可愛さを意識して天然石を留めた金具にしたり、純金のブタさんチャームを下げて遊び心を加えたり、留め具のデザインにもファッション性を感じます。自分たちが好きなファッションブランドの海外コレクションはタイムリーにチェックしているという実智さん。「ファッショントレンドに合うデザインやそこからインスパイアされたトレンドカラーなどを自然と意識している」そうで、<カドー>のジュエリーがいつのシーズンでも流行りをキャッチしている理由がよくわかりました。

イニシャルモチーフ
左:209,000円
右:242,000円
チェーン 各62,700円
「イニシャルシリーズ」も<カドー>を代表するコレクションのひとつ。こちらは「シンプルなワンピースにも映えるちょっと大きめサイズのイニシャルペンダントが欲しい」と思って作ったそうで、<カドー>らしいデザインということで昔から好きだったという直線的なデザインを採り入れ、さらに文字のサイドにはスタッズを配しています。スタッズは<カドー>ファンならおなじみのアイコン的な意匠。姉妹おふたりのイニシャルでサンプル製作をスタートしただけに思い入れも強いそうです。大きめトップに合わせてネックレスチェーンは50cmとやや長めの絶妙なバランス感が人気です。
「美しいものが好き」。そのシンプルな想いが独自のジュエリーを生む

ジュエリーをファッションの一部として捉えている<カドー>のブランドコンセプトに共感してくださるお客さまはとても多いそうです。「美しいものが好き」と断言する実智さん。いわゆる石好きというのでないそうですが、自身は「美しい石や真珠への探求心、モノ選びの審美眼とこだわりはとても強いと思います」と話します。自分たちが納得のいくまで妥協なく石を探し、自分たちの目を通して直接素材を調達するのが菅原さん姉妹の流儀。天然石は必ずカットの美しいものを使い、カットはその石が一番美しく輝くように最高の技術を持ったカッターにお願いする。さらに使用する天然石はインクルージョン(内包物)の少ないものに限っているそうです「ダイヤモンドは紛争ダイヤなど出所の心配な素材を仕入れることはないですし、あこや真珠は三重県伊勢志摩、愛媛県宇和島市の養殖場から直接仕入れています」とそこまで厳選した素材を、バランス感覚とセンス、技術力まですべてにおいて信頼できる熟練の職人と細やかにやり取りをしながら、ひとつひとつ丁寧に製作しています。「機械的でなくすべてが手仕事なので大量生産はできません。オーダーの場合は仕上がるまでに1~2カ月も期間がかかることもあります」とジュエリー作りに対する妥協のない姿勢を語ってくれました。

ジュエリーは心をワクワクさせたり、豊かにしてくれるモノ

①ピアス 165,000円
②リング 170,500円
③リング 594,000円
④ネックレス 398,200円 ※組み合わせ価格
⑤ブレスレット(細)715,000円から
⑥ブレスレット(太)1,221,000円から
近年の<カドー>で好評なのがサイズオーダーやセミオーダー。「姉妹ふたりでスタートした小さな会社なので、店頭スタッフとデザイナーとの距離はとても近いと思います。なのでお客さまの細やかなご要望にも柔軟に対応しています」。リングやバングルのセミオーダーからサイズ直し、パールやネックレスの長さオーダーなどはもちろん最近はメンズパールネックレスをお探しのこだわりの強い男性のお客さまもいらっしゃるそうです。伊勢丹新宿店に出店してまだ3年目ですが、確実にリピーターのお客さまが増えているそうで、「デザインによって着用時にバランスのよい長さやおすすめの着け方、コーディネートなどをきちんとアドバイスができるプロフェッショナルな店長と販売員スタッフ、そして私たちが密に協力しあっているからだと思います」と話す実智さん。「お客さまとの関係を一度きりではなく、長く付き合いたいと思ってもらえるブランドにしたい」、だからこそ「オンラインショッピングではなく、まずはショップ店頭に足を運んでもらいたい」という思いを持っているそう。最後に「実智さんにとってのジュエリーとは?」と質問すると「ジュエリーは生活必需品ではないかもしれないけれど、人の心をワクワクさせたり、豊かにしてくれてるものだと信じています」と答えてくれました。世の中に不安が続き、心落ち着かない、こんな時だからこそジュエリーのパワーでハッピーな気持ちになってもらいたい。それが菅原さん姉妹の願いです。

菅原実智
<カドー>ディレクター。新卒で入社した大手企業で勤務の後、学生時代から漠然と描いていた自分の好きなファッションやジュエリーの仕事に携わりたいという思いから転職。女性ファッション誌「VERY」や「STORY」、広告、カタログ制作などに携わり編集、ライターとして20年のキャリアと並行して、2006年に姉と<カドー>をスタート。
※商品は数に限りがございます。品切れの際はご容赦ください。
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