~ブランドマスターピースについて語る~
ー〈ダンヒル〉についてー
岩元:まずは、〈ダンヒル〉が大切にしているアイデンティティについて教えてください。
高柳:「Everything but the Motor “自動車以外のすべてのもの”」をモットーに〈ダンヒル〉はスタートしています。これは創業者であるアルフレッド・ダンヒルの言葉です。彼は自動車愛好家のために、車のヘッドライト、ホーンとともにレザーのカーコートやラゲージ、毛皮のグローブ、そしてゴーグルなどを製作しました。顧客が何を必要としているのかを常に考えていたアルフレッドが生み出す製品の数々は、イギリス中のドライバーの心を瞬く間に魅了したと聞いています。
つまりこの言葉の意味は、何でも作るということではなく、顧客の本当の想いを形にする、という高いホスピタリティを宣言した〈ダンヒル〉のアイデンティティともいえる言葉となります。
岩元:顧客の事を徹底的に考え抜き、潜在ニーズを汲み取って形にする、「Everything but the Motor」という言葉にはそのような意味が込められているのですね。
高柳:他にも〈ダンヒル〉創業時の製品では、懐中時計を専用ケースに収め、ダッシュボードに取り付けた「ダッシュボードクロック」や、遠くにいる警官をいち早く発見してスピード違反を免れるために作られた双眼鏡「ボビー・ファインダーズ」など、自身も車の運転をこよなく愛したアルフレッドらしいユーモアに溢れた製品もありました。
岩元:ユニークな製品も多く作られていたのですね。その後〈ダンヒル〉は車に関連したアイテムだけではなく、レザーグッズや喫煙具、ウェアやアクセサリーなど多岐に渡るブランドとなっていく訳ですが、きっかけとなったのはいつ頃なのでしょう。
高柳:1907年、アルフレッド・ダンヒルはロンドンの最もファッショナブルな通りの一つであるデュークストリート(現ジャーミンストリート)にブティックをオープンしました。引き続き徹底した個人サービスを提供しようとしていた彼は、刻み煙草をそれぞれの顧客に合わせて一つひとつブレンドして販売しました。「マイ・ミクスチャー」と呼ばれたそのサービスは、アルフレッド・ダンヒルの高いホスピタリティ精神とともに、ヨーロッパ中の評判を博したと聞いています。そして、その頃にはドライバー用の小物だけでなく、時計やレザーグッズ、ライターなど、高品質で幅広い品揃えを展開していきました。
岩元:ここでもやはりアルフレッド・ダンヒルの顧客に寄り添う高いホスピタリティ精神が発揮されていますね。この頃から現在にも受け継がれるマスターピース、レザーグッズや喫煙具などが台頭してきたのですね。
岩元:〈ダンヒル〉は常に時代の先端を行くお客さまのニーズを汲み取り、新しいアイデアでそれに応えていった事が分かりました。現在の〈ダンヒル〉の新たなアイデアはどういったものでしょうか。
高柳:現在の〈ダンヒル〉の新たなアイコンともなるアイテムが、2020年秋冬のパリコレクションランウェイで発表されました。それがこの「ロックバッグ」です。〈ダンヒル〉の受け継ぐ伝統と現代的なエレガンスが交錯する、傑作ともいえる逸品です。英国紳士のスタイルであるクラシックなアタッシェケースからインスピレーションを得た頑丈なフレームは、〈ダンヒル〉の職人の熟練された手作業によって作られており、時代を超えて愛される新たなマスターピースとなり得るでしょう。
岩元:シンプルなデザインながら、少ない装飾で見事に〈ダンヒル〉らしさと新しさが表現されていますね。通常の男性の鞄からすると小ぶりに感じられますが。
高柳:現代のスマートフォンとカードしか持たないようなミニマリストな男性が求めているものが、このような小型でお洒落なアイテムだと思います。
岩元:なるほど。現代のお客さまにはこの大きさがフィットすると。
高柳:そうです。そしてデザイン面をただお洒落なだけでなく、イギリスの伝統的な錠前を使って一つひとつ手作りしているので、製作にはとても時間がかかります。伝統を大切にして、今の時代に合わせたサイズ・見た目をうまく反映させた、継続的に提案していきたいアイテムです。デザインのアイデアとして素晴らしいと感じたことは、ロックを見せるために側面に持ってきて、ファッションのアイコンとして見せている点です。
岩元:〈ダンヒル〉が守り続けてきた伝統を活かしながらも、現代に必要とされるニーズが反映されたデザインですね。
■これからの〈ダンヒル〉について
岩元:ジェンダーレスなアイテムの提案など、〈ダンヒル〉のコレクションは変わってきましたね。
その他コラボにも力を入れていて、おもしろいものを、絶えずマーケットに出していきたい気持ちでやっています。
高柳:そうですね、以前と比べて全く違うブランドのようになってきました。
岩元:〈ダンヒル〉はマーク・ウエストン氏やキム・ジョーンズ氏など、実はトップディレクターを使っているのにあまり表に出さないビジネスをしていますよね。ビッグネームで勝負するのではなく、〈ダンヒル〉とは、という色を強く持っていますよね。
高柳:おっしゃる通りですね。素材や工場、デザイナー含め、突出した何かを打ち出すわけではなく、何も打ち出さない〈ダンヒル〉の考え方自体を打ち出す、というのが特徴ですね。
なので素材や工場なども時代時代にフィットするように流動的に変化しています。
岩元:お客さま目線で考えると、「どこの生地だから」や、「デザイナーが誰だから」などが重要ではなく、目の前にある商品が良いものなのかが判断基準ですよね。そのあたりも創業から変わらないお客さまファーストの目線に繋がるのでしょうね。
高柳:あるお客さまが「〈ダンヒル〉って、世界最古のセレクトショップだよね」と仰っていましたが、まさにそうですね。ものすごい自社工場があるわけでもないのに、アイデアで面白いものを〈ダンヒル〉のコレクションとしてマーケットに提案していくという意味では、確かに世界最古のセレクトショップという言葉に納得しました。
岩元:時代時代によって提案するアイテムが変わっていきますよね。変化に対応するのも大変でしょうけど(笑)
高柳:そうですね(笑)ただ、私自身も最近趣味でサウナに通い始めたり、英会話を続けていたり、新たなことにチャレンジしたりアンテナを張ることが好きなので、とても共感できます。変化についていき甲斐のあるブランドともいえます。
岩元:最近ではアーティストとのコラボレーションも積極的に行っていますね。毎シーズン、提案や取り組みに変化があるので非常に楽しみがあって新鮮です。
高柳:そうですね、最近ではフォトアーティストのKenta Cobayashi(小林健太)氏の作品を起用し、洋服をデザインしたり、今を生きる多様な男性像を想像し、世界中のさまざまなアーティストとコラボしています。
その他にも継続してサッカー日本代表とコラボするなど、面白いものを絶えずマーケットに出していきたいですね。
岩元:毎回それがお客さまにとっての楽しみになるかもしれませんね。
高柳:そうですね、お店の前に立ち止まっていただければ嬉しいですね。
岩元:本日はありがとうございました。
〈ダンヒル〉のマスターピースとも言える「ロックバッグ」を中心とした、ブラック&ゴールドのコーディネートです。
シンプルで小ぶりながらも存在感のあるロックバッグを軸に、大人の色気の漂うカラーで統一しました。
ロックバッグとローファーのゴールドのモチーフが、ブラックの中に差し色として効果的です。
ドレープが美しいキュプラで仕立てたジャケットは、アウターとしてハーフコートのような気方もできるビッグシルエット。
パリコレクションのランウェイにも登場した同ジャケットは、多様な着方を提案する最新の〈ダンヒル〉の考え方を体現しています。
メインとなるロックバッグは、丈夫で滑らかで長持ちのするボックスカーフレザーを使用。
裏地には中身を保護するためのナイロンパッドを採用し、かっちりとした形状を維持してくれています。
ショルダーストラップは取り外し可能で、斜め掛けバッグとしてもポシェットとしてもフレキシブルにお使いいただけます。
時間の経過とともに独特の風格を醸し出す名品「ロックバッグ」、ぜひ店頭でお手に取ってお楽しみください。
・ロックバッグ 237,600円 牛革
・ジャケット 165,000円 キュプラ100%
・ストラップローファー 130,900円 牛革
・パンツ 64,900円 綿54%、ナイロン42%、ポリウレタン4%
※価格は全て税込みです。
※数に限りがあるものもございます、品切れの際はご容赦ください。
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