~ブランドマスターピースについて語る~
岩元:まずは<アクアスキュータム>の歴史について教えてください。
佐藤:1851年仕立て職人のジョン・エマリーがロンドンのリージェントストリートにて紳士服店を開業したところから始まります。
創業時から優れた職人技術と技術革新により業界の最前線をゆくブランドでした。
開業から二年後、エマリーは防水加工を施したウール生地を初めて作り出し、特許製品としました。このユニークな開発がラテン語で「水の楯」を意味する<アクアスキュータム>というブランド名の由来となります。
その後生地の撥水性や耐久性を買われ、英国陸軍から塹壕コートや軍服などの仕立てを依頼されます。1897年にはエドワード7世からロイヤルワラントを頂戴し、ブランドの名も世界に広がっていきました。
岩元:ブランドが得意とするコートの歴史は英国陸軍の依頼から始まったのですね。
ブランドの哲学、こだわりはどういったものでしょうか。
佐藤:ブランドの哲学はやはり、トレンチコートに集約されています。トレンチコートはマスターピースとして、90年間変わらず常に<アクアスキュータム>のアイコンです。トレンチコートに関しては頑として譲れないブランドのポリシーです。
岩本:90年間守り続けているブランドのアイコンが、そのままブランドのポリシーになっているのですね。モノづくりの中心もトレンチコートですか?
佐藤:そうです。必ずトレンチコートありきでモノづくりが始まっています。そこから波及して、例えばブルゾンならベルトのDカンやガンパッチがついたり、どこか一か所にトレンチコートのアクセントが組み込まれたデザインが多いですね。
岩元:<アクアスキュータム>のトレンチコートと言えば、ショーン・コネリーや、名優と呼ばれる方々が映画の中で格好良く着用していますよね。その影響もあり、「男の憧れ」ともいえる逸品だと思います。
岩元:トレンチコートに対するモノづくりを追求する姿勢と、多くの方からのご要望を常に受け止める姿勢、どちらも疎かにせず向き合ってきたから、愛され続けているのですね。
岩元:こだわりの強いマニアなお客さまに対しても、ご納得いただけるクオリティということですね。
佐藤:そうです、一度気に入っていただけると色を変えてお求めになったり、こちらも定番のコートですが、ステンカラータイプのローバーを買い足されたりと、一生のお付き合いになっていきます。
岩元:なるほど、ほかのブランドはスーツやジャケットを買ってくださった方が顧客になることが多いですが、そこが他のブランドと圧倒的に違いますね。
佐藤:スーツから入る方もいらっしゃいますが、「<アクアスキュータム>といえばコート」という認識が強く、完全に目的をもってコートを買いにいらして、スーツもいいものがあったから、という感じで広がっていっています。
岩元:最近では若い方でトレンチコートをお探しの方が増えている印象です。
佐藤:カジュアルに着こなす若い方が非常に増えてきています。
ずっと変わらない完成されたデザインですので、気に入っていただければ毎年流行りのコートを買わなくても済みます。
正直お値段は張りますが、アフターケアもばっちりなので、一着を長く愛用していただけます。ボタンやベルト、肩章といった付属品に関してはブランドで必ずスペアを保存しているので、例えばクリーニング屋さんで肩章だけ失くしてしまっても、リペア用の部品をそろえてありますので心配はいりません。
岩元:すばらしいですね。若い人たちも1年で着られなくなる3万円のものよりも、20年着られる20万円のものの方がいいという訳ですね。
佐藤:はい。そして流行り廃りがなく、ずっと定番ですから。
岩元:今後170周年を迎えるにあたり、どういう方向性を目指していますか?
佐藤:これは私の個人的な考えですが、やはりコロナ禍でお客さまの生活スタイルが大きく変わりました。従来のかっちりとした少し重たいイメージから脱却して、より軽めのアイテムも増やしていきたいと考えています。
しかし、いくら生活スタイルが変わろうとも、変わらない価値であり続けるトレンチコート、この魅力はこれからも発信していきたいですね。
スーツの上にトレンチコートを羽織る背広族の方に、カジュアル感、もしくはトレンチコートの新しい着方を提案していくのが私たちの使命だと思っていますので、そのあたりをよく見極めながら170周年以降も進化していきたいと考えています。
岩元:昔ながらの大切なものを守りながら、トレンチコートの新たな可能性を提案することが使命ということですね。ブランドとしては過去に「シュプリーム」や「ベルサイユのばら」などとコラボされたり、新世代へのアプローチも非常に上手な印象です。
現在ではコラボ以外にも、カスタムやオーダーを中心に、お客さまのパーソナルなニーズにも応えていますよね。
佐藤:そうですね、コートのカスタムですと、お手持ちのコートにワッペンやカッティングシートを張り付けることができます。何着もお持ちになられている方や、着古したので買い替えをご希望の方などにおすすめしております。いい具合に味が出てエイジングされたコートにカスタムすると、カジュアルのコーディネートにすごく良く合いますのでおすすめです。ぜひ着なくなったコートをカスタムしてカジュアルトレンチの着こなしを楽しんでいただければと思っています。
(※生地の特性によってはお付けできない場合もございます)
岩元:長くトレンチを楽しんでいただけるよう、色々と提案されているのですね。
英国製のコートオーダーもご好評ですよね。
佐藤:はい、例年会期を設けて英国製コートオーダー会を実施しています。
岩元:どこまでオーダーメイドできるのでしょうか?
佐藤:まずは生地、それから裏地、そしてライナーをお選びいただけます。もちろん、お客さまのサイジングでお作りいたします。トレンチの場合、身幅は身長で決まりますから、恰幅のいい方、ご身長がおありの方など、お客さまのご体型に合わせたオーダーが可能です。
既製品では裏地の取り換えだけでも行っています。
岩元:いろいろな楽しみ方があるのですね。ワッペンを付ける企画や、最初から自分のサイズで作るオーダーがあったり、既製品だけれども裏地を選べたり。
佐藤:自分だけの一着で、なおかつ英国製のコートというのは他のメーカーさんではなかなかやっていないのではないでしょうか。スーツはイタリア、イギリスで縫っているというものがありますが、コートでそれだけの手間暇をかけて色々選べて、というのはなかなか無いと思います。
岩元:トレンチコートをいかに楽しみながら永く大切に着ていただくかを考えながら170年が経ったのですね。今後の<アクアスキュータム>も楽しみにしています。
本日はありがとうございました。
ブランドのマスターピースであるトレンチコート、「キングスウェイ」。
トレンチコートの正統を体現する「キングスウェイ」なので、タイドアップしたスーツスタイルとの相性がとても良いです。
英国の伝統的なグレンチェック柄のスーツをタイドアップすれば、クラシカルな英国の装いが完成します。
もう一つの提案は、カジュアルのコーディネート。実は現在の「キングスウェイ」はオンでもオフでも着られる便利なトレンチです。
シルエットがシャープなうえ、生地にも艶やかなものが採用されているので、お休みの日のカジュアルルックもモダンに着こなせます。
デニムやニットの上にさらりと羽織るだけで、いつものカジュアルコーディネートがビシッと決まります。
ビジネスからカジュアルまで何通りもの着こなしに対応するトレンチコート「キングスウェイ」。一生着られる定番の一着を、ぜひお楽しみください。
・トレンチコート「キングスウェイ」220,000円(税込み)綿100% 英国製
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