【日本橋三越本店】
生鮮バイヤー片桐がゆく|直感と経験値にもとづくマグロ目利きの世界

【日本橋三越本店】生鮮バイヤー片桐がゆく|直感と経験値にもとづくマグロ目利きの世界のメインビジュアル

冬はマグロの旬!店頭に並ぶマグロの裏側には、仲卸業者という目利きの存在がいることをご存知でしょうか。おいしいマグロの秘密を探るため、<吉川水産>と生鮮バイヤー片桐率いる取材クルーは豊洲市場に構える仲卸業者<まぐろ内藤>のもとへ向かいました。天然マグロを安定して提供することの難しさ、極めて感覚的な目利きの奥深さにご注目ください。

朝一番から大仕事

  • 豊洲市場の競り場の様子

    豊洲市場の競り場の様子

陽もまだのぼらない午前5時。この日入荷した巨大なマグロが横たわる競り場に、徐々に人々が集まり始めます。フロアには<吉川水産>と仲卸業者<まぐろ内藤>の姿が。

<吉川水産>にとって<まぐろ内藤>は良質なマグロを仕入れるための大切なパートナー。<まぐろ内藤>とのお付き合いはもう30年以上にもわたるそうです。「目利きから卸、鮮度管理なども含めた総合力を信頼しています」と絶賛する<吉川水産>廣田さん。

  • 競り中の様子

    競り中の様子

ちなみに、競りは生と冷凍に分かれておこなわれます。<吉川水産>は昔から生にこだわってお客さまに提供しているため、参加するのは生の競りのみ。競り人が唱える呪文のような進行も、生の方は理解ができるそうですが、冷凍の方は何を言っているのかわからないと教えてくれました。隣り合っていても、生と冷凍には違う世界が広がっているようです。

そもそも良いマグロとは?

さて、マグロの目利きと一口に言っても、一人前になるまで最低10年は修行がかかるといわれるもの。おいしいマグロを見極めるとはそもそもどういうことなのか、<吉川水産>にお聞きしました。

  • セリに出されたマグロの画像

    セリに出されたマグロ

「何をよしとするかの基本はどの店も共通していると思います。ただし、そこから先は好みや感覚などで各々の基準と流派があるようです。そんな正解のない世界でも、<まぐろ内藤>さんはお客さまからの評価がとても高いんです!<まぐろ内藤>さんのマグロを食べて鉄分が良かった、酸味が良かったと細かな味の感想を言ってくださるお客さまもいます」

  • <まぐろ内藤>加嶋さんから説明を聞くバイヤー片桐の様子

    <まぐろ内藤>加嶋さんから説明を聞くバイヤー片桐

では、<まぐろ内藤>がマグロを見極める具体的なポイントはどんなところなのでしょう?「たとえば漁法に注目してマグロを選ぶこともありますか?」と、気になっていた質問を投げかけるバイヤー片桐。

「もちろんです。マグロ選別の第一手は『どんなふうに獲ったか』からチェックします。大間の延縄漁法(大間縄)は、長い縄にエサと釣り針を数十メートルおきにつけ、1〜2日経ったのちに引き上げるもの。手間のかかる作業ですが、魚を傷つけずに水揚げできます。手当てもしっかりしているので、鮮度が良いですね」と<まぐろ内藤>加嶋さん。

  • マグロに貼られた産地の札の画像

    マグロに貼られた産地の札

この日に競ったマグロも傷がなく綺麗な状態でした。

  • マグロの腹部分の画像

「目利きの時に見る箇所は、まず腹の部分。腹の身の分厚さ、腹の中の薄皮の乗っかり方。これで脂がのっているか分かります」

  • マグロの身にライトをあてて確認している様子

    マグロの身にライトをあてて確認している様子

「それから、尻尾の切り口から身を取り出して、身の色、手に吸い付く粘り加減、空気を混ぜた時の酸化の具合などを確認します」
これで、ある程度の見通しはつきますが、実際に切ってみないと結果はわからないとのこと。そんな博打要素があっても、見極めの技術で狙い通りの身を高確率で引き当てていらっしゃいます。時には、大穴をわざと狙うこともあるとか。商売のためには、賭けに出るときも必要だそうです。

おろす技術も味につながる

マグロを競りで落とした後は、販売用に切り分けます。品質・味わいの差につながるため、おろし方も重要です。この日は特別に、マグロをおろす作業も見せてくださいました。青森県・大間産の200kgを越える巨体のマグロを、3人がかりでおろしていきます。

  • マグロをおろす様子

    マグロをおろす様子

おろした方は、18歳で入社したおろし歴22年の<まぐろ内藤>竹田さん。ポイントは、少ないストロークでスパッと切ること。
「息を止めて腹に力を入れて一瞬で切ります。そうすることで、身も潰れないし美しい断面になります」

  • マグロの中央断面の画像

    マグロの中央断面

中央の断面に斜めの白い線が見えます。これがちょうど半分に真ん中を切ったという証です。さらに、扱う道具にもこだわりが。<まぐろ内藤>では、部位によって包丁4本を使い分けています。

  • マグロをノコギリでおろす様子

    マグロをノコギリでおろす様子

「太い片刃包丁は骨とか皮とか硬いものを切ります。もっと硬いヒレとかはノコギリですね。木を切るノコギリとは違って、職人さんが特別に仕立ててくれたものです」

  • 長包丁を使っておろす様子

    長包丁を使っておろす様子

「薄い片刃包丁は身を切る時に使います。刃渡り1m以上もの長いおろし包丁も身を切る時に。少ない回数で切れるので、断面をこすらずに済みます」

  • マグロの頭を見せながら解説してくださる加嶋さんの様子

    マグロの頭を見せながら解説してくださる加嶋さん

「頭は、皮・身・骨と複層になっているので、包丁を都度切り替えますね。手から伝わる感覚で、どこまで達したか分かります。全部ノコギリで落としちゃうお店もいますが、うちではやりません」

  • マグロの中落ちの画像

    マグロの中落ち

「中落ちは希少部位だとありがたむ風潮があるので、わざと身に骨を残すお店もあるようですが、うちでは極力残しません。そもそも骨に身を残してしまうのはもったいないこと。それよりもギリギリまで骨をつく技術を磨いて、美味しい部分がサクにわたるよう目指しています」

そう話してくださった通り、残った中落ちは骨の形がわかるほど綺麗な状態。目利きの後もこうしたおろしや管理などを丁寧におこなって、初めておいしいマグロが私たちのもとに届くことがわかります。

旬を味わうなら中トロで

三越伊勢丹のお客さまへ、より深い食の情報を届けたいと常々思っていたバイヤー片桐。この時期にぜひ食べてほしい箇所を詳細におたずねしました。

片桐バイヤー:<吉川水産>に並ぶのは、マグロの王様「本マグロ」で、近海からとれた生のものですよね。そこからさらに一歩踏み込んで、三越伊勢丹のお客さまにはどこの産地のどの部位を食べていただきたいですか?

加嶋さん:北のマグロが最盛期になるので、冬は大間を中心とした産地が良いですね。部位は好みもあるので難しいですが、やはり中トロを刺身で。脂と赤身のバランスが良く、生マグロ特有の複雑な旨みを味わえますから。

  • 写真左から<まぐろ内藤>加嶋幸一さん、生鮮バイヤー片桐健治、<吉川水産>廣田憲司さんの画像

    写真左から<まぐろ内藤>加嶋 幸一さん、生鮮バイヤー片桐 健治、<吉川水産>廣田 憲司さん

あらゆる人の技術と真心がつないだマグロの美味。旬のうちにぜひご賞味ください。

  • マグロのサクの画像

    <吉川水産>
    まぐろ内藤厳選 青森県大間産 本鮪 中とろ 100gあたり 7,800円

    [販売場所]日本橋三越本店 本館地下1階 生鮮
    [販売期間]12月11日(水)~12月31日(火)

<まぐろ内藤>加嶋さんご来店

□2024年12月7日(土)午前11時〜午後1時
□日本橋三越本店 本館地下1階 生鮮
※諸般の事情により、営業日・営業時間、予定しておりましたイベントなどが変更・中止になる場合がございます。必ず事前にホームページを確認してからご来店ください。

片桐バイヤーのプロフィール画像
片桐 健治
日本橋三越本店 生鮮バイヤー
入社以来食品を担当。2017年から2022年まで中国店舗へ出向。海外で過ごす中で、強く感じたニッポンの素晴らしい食文化をつなぎ、少しでも進化に貢献できるよう取り組んでいます。