RE-INNOVATION Vol.2
Low Angle by Takayuki Fujii

RE-INNOVATION Vol.2 Low Angle by Takayuki Fujiiのメインビジュアル

2022年に伊勢丹新宿店で開催されたオールドマルニのポップアップイベント。<maruni/マルニ木工>のリノベーション家具として通常はオンライン販売のみのため、店頭に並んだことは家具ファンをはじめ大きな反響がありました。
そこでひと際の存在感を放っていたのが、雑誌でも居住空間が特集されるほど家具好きで知られる<ノンネイティブ>のデザイナー藤井 隆行さんが監修したモデル。今回のポップアップに登場するのは、藤井さんがチューンナップするように「ローアングル」をテーマとしてより深く監修したオールドマルニとなります。

  • 藤井 隆行さんの画像

  • 藤井 隆行

    1976年生まれ。奈良県出身。
    機能素材を絶妙なバランスで取り入れ、幅広い世代に支持されるメンズブランド<ノンネイティブ>デザイナー。

<マルニ木工>RE-INNOVATION Vol.2
Low Angle by Takayuki Fujii

□2023年10月18日(水)〜10月24日(火)
□伊勢丹新宿店 本館5階 センターパーク/ザ・ステージ#5
※諸般の事情により、営業日・営業時間、予定しておりましたイベントなどが変更・中止になる場合がございます。必ず事前にホームページを確認してからご来店ください。

テーマは日常のなかでゆったりと過ごす「ローアングル」な時間

藤井さんが今回のオールドマルニのテーマとしたのが「ローアングル」。
身体を預けて、目線が下がり、時間がリセットされるような瞬間を共にしたくなる家具としてラウンジチェアを中心に、さらに同じ空間に溶け込むマガジンラックなどがラインナップされます。

オールドマルニとは

1928年から木工家具を製造している<マルニ木工>が、1950年代初頭から1970年代半ばまで製造していたプロダクトを指して呼ばれている愛称。
象徴となっているのが当時のロゴである孔雀マークで、新時代にはばたくという意味が込められております。最近では修理工場でもなかなかお目にかかることができない、貴重なロゴマークです。

  • 「オールドマルニ」の象徴ともいえる孔雀のロゴの画像

「オールドマルニ」の象徴ともいえる孔雀のロゴ

<マルニ木工>の家具作りの原点に触れるために広島の本社工場へ

企画の本格スタートの合図のように藤井さんが訪れたのが<マルニ木工>の創業の地である広島。家具の製造工場は市内から車で1時間ほどの山間に位置します。
すべての製造工程に携わる職人の繊細な技術と感性に触れた藤井さんは、何を感じ取ったのでしょうか。

  • 広島の本社工場の外観の画像

広島の本社工場の外観

—リノベーション家具を具現化する前に、広島の本社工場を訪れたいと思ったのはどうしてですか

藤井:服を手がける時もそうですが、デニムパンツを作りたいと思ったら実際にデニム工場を訪れて、どういう工程で仕上げられていくのかを自分の目で確認します。現場は整っているのか、働いている人たちは生き生きとしているのか、挨拶もきちんとできているのか、そこまで細かく見ています。
広島工場を訪れたのも<マルニ木工>の家具作りにはどんな人たちが、どんな気持ちで関わっているのかを知りたかったからです。表面的なことだけなら完成品を見ればある程度の判断はつきますが、プロダクトに宿る本質的な部分については深く入り込んでいかないとわからないというのが自分の考えです。

  • Lightwoodチェアのペーパーコードを編む職人の画像

Lightwoodチェアのペーパーコードを編む職人

—広島工場を訪れてみてあらためて気づいた<マルニ木工>の魅力などはありますか

藤井:従業員の方の作業服姿が気持ちいい、パーツも道具もあるべきところにきちんと配置されていてオペレーション作業もスムーズに進行されている。「きちんとしている」というのが最も印象に残ったことです。工場全体の統率が取れていると感じました。
<マルニ木工>では道具のメンテナンスはかなり厳しく管理しているとも聞きました。それだけでも家具メーカーとしてこれだけ長く続いている理由がよくわかります。

—広島工場を訪れたからこそ生まれた想いのようなものはありますか

藤井:<マルニ木工>の休憩所には若干くたびれてはいますが、魅力的なチェアやベンチが置いてありました。それは働いている人たちからすれば見慣れたチェアかもしれませんが、家具に興味のある自分からするとどういう構造なのか、いつの時代に作られたのか、知りたいことだらけでした。ある時代には廃棄物のように扱われていた海外のチェアが、現代でヴィンテージ家具として見直されています。
身近すぎると見えていない魅力というものは必ずあって、そこを自分のような外側にいる人間が気づいてあげるのがコラボレーションをする意味だとあらためて思いました。「こんなことできないかな?」と専門家ではないからこその、ふわっとした発想がきっかけとなって、これまでにないプロダクトが誕生することもありますから。

  • 広島の本社工場を見学する藤井さんと案内をする<マルニ木工>の河村さんの画像

広島の本社工場を見学する藤井さん(左)。案内をするのは<マルニ木工>の河村さん(右)。

オールドマルニに新たな輝きを与えるために再び茨城の修理工場へ

広島工場を訪れてから約3カ月後、自身のアイデアを落とし込んだオールドマルニの実現に向けて、藤井さんは昨年も足を運んだ茨城県の坂東工場へ。
新たな命を吹き込まれることを待っている家具たちを目の前にして、藤井さんの「リノベーション」に対する概念が変わったようでした。

—「ローアングル」をテーマとしたオールドマルニへの手応えはいかがですか

藤井:<マルニ木工>の方に指摘されて気づいたのですが、今回の自分は「細くしたい」、「なめらかにしたい」と家具の脚についてリクエストすることが多かったようです。ソファに座っていると視線に入ってくるのがチェアの脚やローボードの脚です。それをより美しく見せたいという思いが自然と湧き上がったのかもしれません。
「ローアングル」というテーマは当初は暮らしの中でリラックスしている時間の視点と定義していました。それが実際に家具に触れることで、家具そのもののローアングル=脚へと無意識のうちに解釈が広がっていったようです。

  • 「オールドマルニ」に自身のアイデアを盛り込むために職人と確認する藤井さんの画像

「オールドマルニ」に自身のアイデアを盛り込むために職人と確認する藤井さん

—現代でも輝く年代物の家具を残し続けていく意味をどう捉えていますか

藤井:リノベーションというとどうしても足のガタ付きを直すような修理の意味合いが強くなるのですが、塗装し直して、生地を張り替えて、家具にまた新たな表情を与えてあげることは、例えば車でいうとチューンナップに近いような気がしています。
<マルニ木工>が取り組んでいることも、自分が関わるオールドマルニの企画についても「Re」ではないかもしれません。修理して元通りにするのではなく、新たな価値と共に生まれ変わらせる。もしかしたらリノベーションよりもディスカバー、再発掘という言葉が近いかもしれません。家具の新たな価値観の創出のためにも、リノベーションに代わる概念を見つけたいです。それは自分だけでなく、<マルニ木工>にとってもひとつの使命ではないでしょうか。

  • 新たに生まれ変わるのを待つ「オールドマルニ」の家具たちの画像

新たに生まれ変わるのを待つ「オールドマルニ」の家具たち

<ノンネイティブ>らしくあることよりも<マルニ木工>らしさを大切にしたいというのが本企画に対する藤井さんの考え。家具愛にあふれる藤井さんだからこその工夫や意匠が盛り込まれたプロダクトの数々を、ぜひ会場でご覧ください。

「つくるマルニ」と「なおすマルニ」

□伊勢丹新宿店 本館5階 リビングルーム/マルニ木工

100年後も使い続けられ定番として愛される家具を目指して、モノづくりに励んでいる<マルニ木工>。「つくるマルニ」と同様に大切にしているのが「なおすマルニ」であることです。
修理が必要な家具を本館5階の<マルニ木工>にお写真などをお持ちいただければ、塗装・張替え・補修などのリフォームを承ります。
※詳しくは、店頭係員におたずねください。