暮らしの景色が変わるロードファニチャーとの出会いを|<P.F.S./パシフィック ファニチャー サービス>

伊勢丹新宿店で約10年ぶりにポップアップを開催することになった<PACIFIC FURNITURE SERVICE/パシフィック ファニチャー サービス>。
オリジナル家具などを販売するショップとして「かっこいい家具よりも、かっこいい生活」を掲げ、そのコンセプトなどについて代表でありチーフデザイナーでもある石川 容平さんにお話を伺いましたが、インタビューはひと言ひと言が深く、聞き入るような内容へ。
豊かさや家具との向き合い方についてあらためて考えさせられました。
MY STYLING STORE
□2024年3月6日(水)~3月19日(火)
□伊勢丹新宿店 本館5階 センターパーク/ザ・ステージ#5
※三越伊勢丹オンラインストアでは2024年1月31日(水)午前10時からの販売となります。
※掲載の情報につきましては、諸般の事情により予告なく変更・中止させていただく場合がございます。
予めご了承ください。
※必ず事前にホームページを確認してからご来店ください。
「こんなのが欲しかった」と反響のあったオリジナル家具

― 石川さんが<パシフィック ファニチャー サービス>を立ち上げようと思った理由はなんだったのでしょうか。
石川:入社したのが実験的な家具やインテリアなどを作っていた会社で、配属先は、アンティーク家具の修復やリプロダクトを担当する部署でした。職人見習いのような感じです。仕事はそこそこうまくやれたこともあって「自分は家具に向いているのかも」って思うようになったんです。
― 最初から家具を製作したい思いではなくて、仕事の中でご自身が得意なことに気づいた感じなんですね。
石川:自分で家具をやろうと起業したのは80年代ですけど、当時は家具といえば嫁入り道具として親が百貨店で立派な婚礼セットを買い与えるようなちょっとした権威の象徴のような存在でした。洋服を選ぶように自分で好きな家具を選ぶという時代ではなく、僕自身も欲しいと思うような家具は世の中にはなかったですね。だから僕と同世代が欲しがるような家具を作ったらきっと儲かるぞ(笑)。
― 家具を始めるのは機械や工場なども必要なので大変だったのでは。
石川:もちろん簡単に始められることではないですよ。ただバブルの時代でしたし、まだ若かったということもあって自分が大変なことを始めるという意識はあまりなかったです。配属先の腕がいい職人さんから家具について学んでいたのでそれを仕事に活かせたらという感じでした。その頃は東京でアンティーク家具がブームだったこともあり、最初はそれらの修復をやっていました。入社した会社では日本の職人だけではなく、英国人からヨーロッパのアンティーク家具についても学んでいたんです。それからオリジナル家具も始めたら「こんなのが欲しかった」と市場はやっぱりあって、これまでの日本になかったような家具だということでお客さんにはデザイナーやクリエイター、芸能人なんかがすごく多かったです。それで現在に至るといった感じですかね。
作り手が責任を持って真剣に作り上げたものが「いい家具」

―<パシフィック ファニチャー サービス>は「かっこいい家具よりも、かっこいい生活」を掲げていますが、そこにはどんな想いが込められているのでしょうか。
石川:少し難しい話になってしまいますが、僕は「どうして人は争うのか、戦争が起きてしまうのか」というのがずっと心の中に引っかかっているんです。それで自分なりに辿り着いたのが先ほども出た「権威」で、「権威が人を惑わす」というものです。なので家具にしても既存の価値観を壊そうとして作っているところがあります。家具だけでなく、かっこいいモノは車でも洋服でもそれはお金を出せば誰でも手に入れることができますが、本来の「かっこいい」はモノではなく、それを使っている人のライフスタイルや価値観のはずです。「かっこいい家具よりも、かっこいい生活」というのはそういう意味です。
―「かっこいい生活」という考えは現代ではスッと入ってきますが、創業当時でも受け入れられていたのでしょうか。
石川:むしろ今よりも当時の人たちの方が僕が言わんとすることをわかってくれたんじゃないですかね。80年代の若者は誰もがロックですから、そういう姿勢を表現するためにバンドを組んだり、洋服をデザインするのですが、僕の場合は無鉄砲に家具に向かったわけです。それをパイオニアと言ってくれる方もいますし、<パシフィック ファニチャー サービス>のお客さんだったのが「自分にもできるかも」と思って同じように実験的な家具を作るようになった方もいます。
― 個人のデザイナーもいれば大きなブランドもあって、家具を選べる時代にはなっていますが石川さんにとって「いい家具」ってなんでしょうか。
石川:答えに困るようなことを聞いてきますね(笑)。美しいもの、心地いいものって自然界に多いじゃないですか。それは神様の創造物とも言えるわけですが、人間も昨日まで地球上に存在しなかったモノを創り出すことができるんです。ある意味、神様と同じようなことをしているからには真剣でなければいけないと思っています。だからこそ何年も何十年も使えて、残していきたくなるような家具を作ることを僕は自分に課しています。つまり、作り手が真剣に作り上げたものが「いい家具」ではないでしょうか。家具に使われる木材って40年、50年という歳月をかけて育った木を伐採して、山からおろして、製材して、乾燥させて、すごく手間がかかっているわけです。もしも安すぎるぐらいの家具があったら「自然の素材を使っていてどうしてこんな値段で売れるんだ?」って皆さんが疑問を持つようになってほしいです。
― 確かに100年ぐらい前に誕生した海外のチェアが名作と呼ばれて、「いい家具」の象徴として残り続けていますね。

石川:作り手が一生懸命に向き合って生まれたものが「いい家具」と言いましたが技術面からのアプローチでいえばその時代の叡智を結集して作り上げたものが「いいプロダクト」だと僕は会社のデザイナーたちによく話しています。わざとローテクにする、何かを模倣するなど、売れるためのギミックを加えたものは美しくないですし、やっぱり残っていかないですよ。それは家具だけではなく、すべての仕事において共通しますよね。
提案したいのは「これでもいい」という新たなスタンス

―<パシフィック ファニチャー サービス>ではオリジナルだけでなく、海外から仕入れた家具もありますが、セレクトの際にこだわっているポイントはありますか。
石川:選んでいるのは日本の人たちに知ってもらいたいと思うような家具です。上質紙とわら半紙を比べた場合、「品質」だけでいえば上質紙の方が上になります。ですがこれを「クオリティ」という観点で捉えるとわら半紙には上質紙にはない独自の魅力が存在するんです。僕はそのクオリティを宿すプロダクトこそが生活を豊かにしてくれると考えているので、そういう視点で世界中から家具を探し出しています。ただ悲しいことに家具の製造現場も特にアジアは経済合理性や生産合理性を優先されていて、「クオリティを維持していこう」という気概を持ったアメリカやヨーロッパの作り手たちは大きな打撃を受けています。
― 家具の選び方ということでいえば、伊勢丹新宿店も実用的なツールというよりもアートピース感覚で捉えているお客さまが増えているような気がしています。
石川:それは今に始まったことではないと思いますよ。モノがあふれるようになれば、実用性以上の付加価値を求めるのは当然です。どんな付加価値を求めるのか、どんな家具を選ぶのかは時代によって異なるとは思いますけどね。
―<パシフィック ファニチャー サービス>でもお客さまが家具に求めるものが変化しているようなことは感じますか。
石川:コロナによって自分自身に問いかけるようになったという人は確実に増えました。「自分の生活を豊かにするには」と、家具であっても今の自分に必要なものだけを購入する動きはなんとなく感じています。<パシフィック ファニチャー サービス>の古くからのお客さんは元々が安いから買うのではなく、高価であっても必要だと思ったら選ぶという方が多かったです。まだまだ家具を選ぶ際の考え方は成熟はしていませんが、いい方向には向かっていると思いますよ。
― 伊勢丹新宿店でのイベントは10年ぶりとなりますが、<パシフィック ファニチャー サービス>がお客さんに伝えたいこと、提案したいことはなんでしょうか。

石川:僕はロードムービーというジャンルの映画が好きなんですけど、人生とは旅のようなもので出会いの連続です。<パシフィック ファニチャー サービス>の家具も「ロードファニチャー」のように捉えてもらえて、伊勢丹新宿店に展示された家具を見たり、触れたりすることでお客さんの感性が刺激されたらうれしいです。「ロードファニチャーとの出会いで次の日から生活を豊かに感じるようになった」なんて声があったら最高ですね。ポップアップでは盆栽も出品しますが、「ヨーロッパのモダンな鉢と和の松の組み合わせってよくないですか」みたいなことをお客さんに伝えたい。ちょっとした発見を届けたいです。<パシフィック ファニチャー サービス>が提案したいのはスタイルではないんですよ、あくまでもスタンスなんです。「これでもいいんだ」というような新鮮な出会いを楽しんでもらいたいですね。
三越伊勢丹オンラインストアでの販売
□2024年1月31日(水)午前10時から
伊勢丹新宿店 本館5階 センターパーク/ザ・ステージ#5での販売
□2024年3月6日(水)~3月19日(火)
※店頭展示のない商品も受注販売を承ります。
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<パシフィック ファニチャー サービス>
STACKING BOOK CASE
L: (外寸:W80×H38×D33cm、内寸:W76×H28.5×D31.5cm) 47,300円
S: (外寸:W80×H28.5×D33cm、内寸:W76×H24.5×D31.5cm) 46,200円
BASE&TOP (BASE:W80×H4×D33.5cm、TOP:W78×H4×D33cm) 26,400円
※BASE&TOPはセット販売となります。
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<パシフィック ファニチャー サービス>
18 LYON RECESSED HANDLE LOCKER-1TIER
(外寸:W30.5×H168×D45.5cm、内寸:W30×H147×D43cm、間口:W23×H147cm×1段) 53,900円

株式会社ユナイテッドパシフィックス
和光大学芸術学部在学中より、形而工房及びその後の工芸指導者の活動を研究テーマとする。卒業後、株式会社サザビー(現サザビーリーグ)にて家具製作を担当、退社後渡欧。1988年に株式会社ユナイテッドパシフィックスを設立。「解放する家具」をテーマに家具製作を行う。現在では家具デザインに留まらず、住宅、商空間デザインを多数手掛けている。