名だたるブランドに愛されるアーティスト、Jean Philippe Delhommeのエキシビジョン「THE STUDIO」が開催

名だたるブランドに愛されるアーティスト、ジャン=フィリップ・デロームのエキシビジョン「THE STUDIO」が開催のメインビジュアル

©Jean-Philippe Delhomme,Anna with Kala,2023, 55 x 46 cm |21 5/8×18 1/8 inch
Courtesy of the artist & Perrotin​

有名ブランドや雑誌とのコラボレーションで知られるアーティストのJean Philippe Delhommeは、この10年間、ファインアートのみに専念してきました。伊勢丹では「THE STUDIO」で、パリ・モンパルナスのアトリエで制作された未公開の近作3点に加え、ポージングするモデル、静物画などを展示します。​
写真を媒介にせず、被写体を直接観察し、1回のペインティングで表現するデロームの絵画は、光に照らされた風景の一瞬の空気感や、スタジオにいるモデルの姿や、無造作に置かれた静物など、「今、ここ」をとらえています。
本展では、作家が近年制作したペインティングを国内最大規模となる約50点発表します。
それらの作品を通して、1927年の建設以来、数々の芸術家を迎え入れてきたモンパルナスのランドマークビルとして知られるパリのアトリエへと観る者を誘います。

また、8月31日(木)からは本館1階のショーウィンドウの11面をジャック。デローム本人が10代の頃に譲り受けた70年代のアサヒペンタックスのカメラで撮影したスタジオの写真を使用し、店頭の作品との対比から、作家の世界観、ファインダーを感じていただけるインスタレーションとなっております。

店内の画像
ウィンドウの画像

Jean-Philippe Delhomme「THE STUDIO」

□2023年9月2日(土)~9月15日(金)
□伊勢丹新宿店 本館2階 イセタン ザ・スペース
※本館1階ウィンドウディスプレイ:2023年8月31日(木)~9月12日(火)
公式Instagram:@isetan_the_space

諸般の事情により、営業日・営業時間、予定しておりましたイベントなどが変更・中止になる場合がございます。必ず事前にホームページを確認してからご来店ください。

静物画は、咲き誇る花の儚い美しさと美術書の永遠の存在を重ね合わせることで、絵画の創作における概念的な側面を浮かび上がらせ、アトリエを個人的な時間と歴史が凝縮された精神的な空間として位置付けています。

  • ジャン=フィリップ・デローム「Oil on canvas」の作品

    ©Jean-Philippe Delhomme
    The studio, 2023
    Oil on canvas
    27×22cm|10 5/8×8 11/16 inch​
    Courtesy of the artist & Perrotin
  • ジャン=フィリップ・デローム「Flowers for Salinger」の作品

    ©Jean-Philippe Delhomme
    Flowers for Salinger, 2023
    Oil on canvas
    27×22cm|10 5/8×8 11/16 inch​
    Courtesy of the artist & Perrotin

静物画の静かな表現とは対照的に、肖像画は作家とモデル間の行き交う眼差しによって、アトリエを人間関係を映し出す劇場として丁寧に演出します。さまざまな小道具によってスタジオの空気は一変され、演劇的な雰囲気をより一層強めています。

  • ジャン=フィリップ・デローム「Talia draped in the Mexican blanket」の作品

    ©Jean-Philippe Delhomme
    Talia draped in the Mexican blanket, 2023
    Oil on canvas
    61×50cm |24 1/16×19 11/16 inch
    Courtesy of the artist & Perrotin
  • ジャン=フィリップ・デローム「Talia with Manet」の作品

    ©Jean-Philippe Delhomme
    Talia with Manet, 2023
    Oil on canvas
    55×46cm|21 5/8×18 1/8 inch
    Courtesy of the artist & Perrotin

例えば、モデルが座る無地の壁の背景、メキシコ毛布の鮮やかな帯、ソファを覆う布など。しかし一方で、モデルたちは、ドラマティックなパフォーマンスというよりも、オーディションやウォーホルの映像作品「screen test」を連想させるような振る舞いで、私服を身にまとい、どこか中性的な雰囲気を漂わせているのが印象的です。
デロームはこのように多くの作品の中で、独特の方法で空間の特異性を現しています。特に大きな窓が描かれた作品では、外部の都市生活とスタジオ内の浮遊する現実を隔てる膜として表現しています。

また、フランスの文学理論家であり記号論者のRoland Barthes(ロラン・バルト)(1915-1980)の著書「The Neutral」の中で記されている“概念”についての考え方は、デローム自身が持つリアリズムに対する考えや創作に対するアプローチ方法に影響を与えました。

“Any inflection that dodges or thwarts the paradigmatic, oppositional structure of meaning has been defined as belonging to the Neutral, and therefore aims at the suspension of the conflicting givens of the discourse. We tried to make it understood that the Neutral did not necessarily correspond to the flat, fundamentally depreciated image that the Doxa has of it, but could constitute a strong, active value.”

“意味の「対立」的なパラダイム構造を避けたり、妨げたりする任意の変化は、le Neutre「中立」に属すると定義され、それゆえ、議論の矛盾した前提を一時中断させること狙いとしました。[中略]
私たちは「中立」が必ずしもDoxa(一般的な意見)が持っているそれの平坦で、基本的には軽んじられたイメージというわけではなく、強く、積極的な価値を構成できるものとして理解してもらおうと試みました。”

(Roland Barthes - Le Neutre, Cours au College de France 1978 / editions du Seuil, Paris 2023)

Jean-Philippe Delhomme(ジャン=フィリップ・デローム)

ジャン=フィリップ・デローム (1959年生まれ)は、風景画、静物画、肖像画といった古典的なアプローチを通して表現の歴史を継承しています。その絵画プラクティスは写真に頼ることなく直に被写体を観察し、一度に描き上げるものです。デロームの絵画は、移り変わる光がみせる儚い雰囲気の風景や、スタジオを訪れたモデルの一時的な存在など、「今、ここ」を捉えています。​

デロームは出版やコミュニケーション業界での好調なキャリアを築きながら、その絵画プラクティスを発展させました。絵画の展示を始めたのは2017年のことです。デロームは1985年にフランスのエコール・デ・ボザール(国立高等装飾美術学校)を卒業後、多くの人々にアプローチできる可能性を秘めた印刷媒体への道を選びました。以降30年以上にわたり世界中の出版物に携わり、90年代初頭にはバーニーズの広告キャンペーンでグレン・オブ​ライエンとのコラボレーションを手掛けるなど、ブランドとの仕事にも従事しました。また、自身のイラストと文章を組み合わせた書籍を数多く出版しています(『The Cultivated Life』、『The Unknown Hipster diaries』、​『Artists’ Instagrams』など)。
リアルを描くというデロームの内省的で孤独な行為は、次第にそのリズムと粘り強さを文化や様式に対する社会的論​評へと向けるようになりました。​

現在、デロームの活動の中心は絵画です。街の風景をフレームに収め、花瓶の横に本や文化的な品々を配置するなど、目に見えるものの探究を一連のイメージによって構成し、社会の観察者としてのひらめきを保ちながらも、斜めの角度から他の文化的構成概念に当てはめています。​
最近の主な展覧会に、オルセー美術館(パリ)、パシフィック・デザイン・センター(ロサンゼルス)などがあります。2023年夏には、東京で2つの展覧会を同時開催します。これまでにペロタンパリ、ソウル、ニューヨーク、2022年に​は東京アートフェアにて個展が開催されました。​
昨年出版されたモノグラフ『Paintings』(パリ、RVB Books社)に続き、今回の伊勢丹とペロタンでの同時開催展を記念して、書籍『Studio Poems』がペロタンから出版されます。​​

ギャラリー「ペロタン」のロゴ画像
企画協力

ペロタンは1990年にフランス人ギャラリストのエマニュエル・ペロタンがパリに開廊しました。2012年の香港スペースのオープンを皮切りに、’13年ニューヨーク、’16年ソウル、’17年6月に東京、’18年上海、そして’22年ドバイにスペースをオープンしてきました。ロサンゼルススペースは2024年にオープンする予定です。世界各地のスペース展開とアートフェアへの参加を経て、世界のアートシーンでの影響力を強めています。
伊勢丹新宿店での展覧会「THE STUDIO」に伴い、ペロタン東京では8月31日(木)から10月14日(土)までの期間、展覧会「visage(s)」を開催します。ペロタン東京で発表される作品群において、デロームは黒に近い濃単色の背景を好んで使用しています。これらの暗い背景色には、ほかの肖像画に見られる明るい色彩や、全面に押し出されるような背景とは異なる、独自の被写界深度があるでしょう。デロームは、17世紀オランダにみられる暗色の背景にモデルを配した肖像画を尊重するとともに、この特定の雰囲気を東京展に向けて採用しました。二つの展覧会ではそれぞれの異なった雰囲気を味わえることでしょう。

visage(s)
展覧会会期:2023年8月31日(木)~10月14日(土)
開廊時間:火曜~土曜 午前11時~午後7時
ペロタン東京(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階)