VERDYがグラフィックやコラボレーションを通して、発信していきたいこと。

妻のために作ったというストーリーもロマンティックな〈Girls Don’t Cry/ガールズドントクライ〉のハートのグラフィック。生みの親であるVERDYさんは、グラフィックアーティストとして自身のプロジェクト〈Wasted Youth/ウェステッドユース〉を主宰し、友人のアーティストやストリートブランドとコラボレーションしたアイテムも多く発表する。伊勢丹新宿店本館2階イセタン ザ・スペースで開催中の「VERDY’S GIFT SHOP」でも〈BlackEyePatch/ブラックアイパッチ〉や韓国の〈thisisneverthat/ディスイズネバーザット〉とのアイテムなどを販売。人の密集を避けて週末のみの販売としたアイテムは抽選券の応募者が毎週殺到する人気で、平日は写真を撮るために客足が途絶えることはない。人の心に刺さる明快でポップなグラフィックはどんな思いで生まれたのか、コラボレーションをする時のルールはあるのか、VERDYさんに聞いてみた。

「VERDY’S GIFT SHOP」
□開催期間:2021年1月16日(土)~2月17日(水)
□開催場所:伊勢丹新宿店本館2階 イセタン ザ・スペース

公式インスタグラム:@isetan_the_space

*2月13日(土)・14日(日)の入場抽選は締め切らせていただきました。

あくまでも普段の延長線で、“伊勢丹でやるけど自分らしい”ポップアップに。

──伊勢丹新宿店には、どんなイメージを持っていたのでしょうか。

僕自身は大阪出身なのですが、親は東京出身で祖父母も東京に住んでいたので、長期休みに東京に遊びに行った時に、伊勢丹への家族の買い物に付いていったりしていました。 “百貨店といえば伊勢丹”というイメージがあったので、もし百貨店で何かやらせてもらえるならば伊勢丹新宿店でやりたいとは思っていたんです。初めに声をかけていただいていたのは実は3年前。なかなかすぐにはタイミングが合わず今回はついに実現したという感じですね。百貨店での開催も初めてですし、久しぶりのポップアップだったので「ちゃんとお客さん来てくれるかな」と少し心配しでしたが、多くの人が来てくれて安心しました。

 

──今回のポップアップの話を受けて、やりたいと思ったのはどんなことですか。

はじめに声をかけてもらったときには、「伊勢丹でやるからには伊勢丹ならではのコラボレーションをやってみたい」と思っていたのですが、最終的に今回そうしなかったのは、この3年間でストリートとファッションを取り巻くシーンが大きく変わったことも影響しています。ストリートとハイブランドのカルチャーが入り混じること普通になったというか……。だからこそ、“伊勢丹でやるけれど自分らしい“、普段やっていることの延長線でいこうと思ったんです。

 

ここ数年は週末ごとに国内外の各都市を巡ってポップアップを開催し、終わるとまたすぐに次の都市へ……というのを繰り返してきました。本当に色々な場所で開催させてもらいましたが、そこからまた自分のテンションも変わり、もう少し長期間ゆっくり見てもらえるような催事がやりたいと思っていたので、それも今回実現できてよかったです。普段のポップアップはギャラリーを借りたり、ショップの片隅でやらせてもらうことが多いので、この規模感で開催するのも初めて。会場構成については野村訓市さんの「TRIPSTER(トリップスター)」に相談して、並べるアイテムや全体像についての自分のイメージを伝えて、一緒に作りました。


 


──ポップアップに際してショーウィンドウ11面も「VERDY’S GIFT SHOP」仕様になり、〈ガールズドントクライ〉のグラフィックが目を引いていましたね。

伊勢丹新宿店でやるなら絶対にウィンドウもやりたいと思っていたので、それが叶ったのも嬉しかったですね。〈ガールズドントクライ〉のグラフィックをメインに、〈kento hardware /ケントハードウェア〉の吉岡賢人にお願いして作ってもらった映像と、アメリカで撮影した自分のストーリーが詰まった映像、あとは〈ガールズドントクライ〉のルック撮影時に作った映像を流しました。まず、親が喜んでくれましたし(笑)、たくさんの人が見に来てくれたみたいで、そんな求心力も伊勢丹新宿店ならではだと思いました。

自分のメッセージをグラフィックに込めて、大切に、長く育てていきたい。

―今回のポップアップ名にもなっている「VERDY’S GIFT SHOP」、もともとはVERDYさんのウェブショップでしたが、どういう経緯で立ち上げたのでしょうか。

新型コロナウイルスが流行して、予定していたイベントの多くがキャンセルになり、「何かできることはないか」と考えてウェブショップ「VERDY’S GIFT SHOP」を立ち上げました。一昨年の12月に上海で行われた「innersect(インナーセクト)」(アジア最大のストリートの祭典)に参加する際に、自分の周りのストリートブランドとのコラボレーションをいくつか企画してアイテムを作ったんです。そのときのように友人のブランドとのコラボレーションアイテムや自分たちのグッズを販売しようと思ったのですが、ひたすらキーホルダーを作って売っていました。少ない人数で運営しているから、大きなものなどは梱包も大変で……(笑)。今回のポップアップ用のアイテムの多くは、一から考えています。家にいる時間が長くなって、自分が「ほしいもの」も変化したんですよね。その気持ちに素直になって本当にほしいと思うアイテムを作ったので、「無理して作ったもの」は一切ないです。


 

──〈ガールズドントクライ〉は長く愛されるグラフィックになりつつありますが、今の状況は想像していたものだったのでしょうか。

もともとは自分は、次々と新しいグラフィックを生み出すのではなく、ひとつを大切にずっと使い続けていきたいと思っているタイプ。本当に良いものを作って時間をかけて育てていくイメージです。〈ウェステッドユース〉と〈ガールズドントクライ〉は、仕事や売るために考えついたグラフィックじゃないんです。自分が良いと思った言葉でグラフィックを作るというのはずっと変わらなくて、昔作ったTシャツを見返しても「(書いてあるメッセージは)今と変わらない気持ちだな」と思う。シンプルな英語のキャッチーなロゴが自分のスタイルだ、というのは計画したわけではなくて、気が付いたらこうなっていましたね。さっきも言ったように「どんどん新しいものを」という意識はなく、その時々自分がいいなと思った言葉があれば、これからも作っていきたいと思っています。

 

──シンプルだからこそ、コラボレーションをしても強度の変わらないグラフィックだと思います。コラボレーションする際に、気をつけていることはありますか。

僕自身はアパレルのデザイナーではなくて、グラフィックアーティストだと思っているので、コラボレーションする相手がもともと作っているアイテムをリスペクトして、そこに自分のグラフィックをどう載せるかを考えます。

あとは、少しでも「違うな」と思ったらその自分の違和感に従って、プロジェクトをきちんとストップできるかには注意を払っています。世の中に発表するのは本当に良いと思うものだけにしたいから、自分の力でストップできないものはやらないようにしたいんです。例えば「予算がかかっているから、出さないわけにいかない」ということもあると思うんですけれど、「だったら自分が出します」と言って止められない規模のものはやらないとか……。自分のフィーリングを一番大切にできるようにしたい。

コラボレーションで目指すのは、自分が長く着たいと思うものを作ること。

──なるほど。それだけ自分のフィーリングや違和感に敏感でいるのには何か理由があるのでしょうか。

1年前によく着ていたグラフィックTシャツが、「今年はもう着られないな」となることってあるじゃないですか。もちろん僕自身も、そんな経験はたくさんあります。自分の違和感を大切にしていたり、無理なコラボレーションをしないようにしているのは、自分が作ったものが「今年はもう着られないな」というものにならないようにしたいから。コラボレーションアイテムもひとつひとつ自分の作品だと思っているので、なるべく大切に使い続けられるものを作りたい。ビジネスを大きくするつもりがないから、作ったグラフィックを大切にしていきたいんです。

──今回コラボレーションしたブランドについて、VERDYさんの言葉で説明していただけますか。

 

〈ディスイズネバーザット〉は韓国のブランドです。韓国で出会ってすごくかっこいいなと思ったのですが、日本では彼らの魅力が適切に伝わっていないような気がしていて……。ブランドのイメージを自分が思う評価に近づけられたらと思って、今回声をかけました。あとは単純に、〈ディスイズネバーザット〉の定番のウエアに〈ウェステッドユース〉のロゴが載ったアイテムがほしい!という気持ちも強かったですね。彼らは日本のストリートカルチャーが好きで、すごく詳しいんです。日本語がわからないことで得られる情報が制限されるからか、物作りのディテールまですごくよく見ていて、それらをリスペクトして自分たちの物作りに転換している。その姿勢が裏原宿のカルチャーを作ってきた人たちと近いんじゃないかと思うんですよね。

 

〈ブラックアイパッチ〉は、昔から好きなブランドです。共通の友達も多かったけれど意外と出会うことなく、自分より上の世代の人が作っていると思っていたのですが、たまたま一昨年出会って話すようになり同年代だと知りました。お互い「何か一緒にやりたい」という思いが一致してコラボレーションすることに。コラボレーションするブランドや人同士って、アイテムを発表する前に関係性を「匂わせる」ことってあると思うんですけど(笑)、僕たちは一切それをせずに、〈ブラックアイパッチ〉が新作を発表するタイミングでゲリラでコラボレーションアイテムを発表しました。“このブランドと言えばコレ”という象徴するグラフィックやイメージがあるものが、自分が思う「良いストリートブランド」だと思っていて、〈ブラックアイパッチ〉もそうですね。


 

〈SEE YOU YESTERDAY/シーユーイエスタディ〉のデザイナーのUlalaは友達で、SNSなどを使ってきちんと自分のメッセージを発信する姿勢や、その内容も共感する部分があり、いつかコラボレーションできたら良いなと思っていたんです。そんな彼女が作っているこの「90s BAG」とよく似たアイテムをあるショップが出して、それに憤慨した彼女やファンがコメントしたらショップも相応の対応になってしまい…。あるカルチャーからインスパイアされて物を作ったり、真似する・真似した、というのはよくある話ではありますが、「さすがにどうかな」と思うこともある。この多くの人が訪れる伊勢丹新宿店で〈シーユーイエスタディ〉をたくさんの人に見てもらいたくて、今回声をかけました。

あとは、〈été/エテ〉にチョコレートを作ってもらいました。もともと「été」のことは知っていたのですが、村上隆さんとコラボレーションしたケーキをいただいて妻と一緒に食べたんです。すごく美味しくて、そのお礼を庄司夏子さんに伝えたことをきっかけに色々お話するようになって、「Fleurs d'été(フルール・ド・エテ)」にも誘っていただいて妻とディナーをしたんです。毎年バレンタインが近くなると何かしたいなと思っていたのですが、ストーリーのない相手とコラボレーションするのは僕のスタイルではないからこれまではやってこなかったのですが、今回は、庄司さんと一緒にチョコレートを作ることができました。

政治や環境についても、自分が感じたことを発信していきたい。

──この1年で、生活や心境はどう変化しましたか。

〈ウェステッドユース〉と〈ガールズドントクライ〉を作ってから、ポップアップのオファーを受けたり、友達に誘ってもらったりして海外に行く機会が増えていました。ロックバンドのワールドツアーのように、2ヶ月間アメリカに行きっぱなしだったり、パリ、ニューヨーク、マイアミと巡って、LAに24時間だけ寄って、日本に帰ってくるなんてときもあって……。だんだんと加速して、すごいスケジュールになってきちゃって(苦笑)。色々な場所を訪れて、色々な物を見て人と出会って、自分自身は成長しているはずだけど、それをアウトプットする時間を満足に取れなくなっていたんです。今回、仕事や渡航の予定がキャンセルになり強制的に時間ができたことによって、家で絵を描いたりゆっくり映画を見る時間ができました。


 

そんな最中に「#Black Lives Matter」が起きます。日々感じたことを言葉やイラストにして発信するのが僕のスタイル。アメリカのカルチャーからも大きな影響を受けているのだからこういう時にもちゃんと自分の意見を言える人になりたいと思って、勉強したり友達とも政治の話をするようになりました。そうして「#Black Lives Matter」のメッセージを込めたTシャツを作って、衆議院選挙の時には投票に行った人に渡す缶バッチを作ったんです。自分だけでなく、周囲の気持ちも変化して色々な意見を交わすようになったのを実感していますね。

環境についても、友人のスケーターからリユースのボディを教えてもらったので、自分たちのアイテムにはそれを使うようにしています。世の中に出すものに対しての責任感も変わり、自分のことをより深く理解する重要な1年になりましたね。

VERDY
〈ガールズドントクライ〉や〈ウェステッドユース〉などのプロジェクトを手掛けるVK DESIGN WORKS所属のグラフィックアーティスト。〈ユニオン〉、〈アンダーカバー〉、〈ヒューマンメイド〉などとコラボレーションを行い、国内外問わず注目を集めている。

「VERDY’S GIFT SHOP」
□開催期間:2021年1月16日(土)~2月17日(水)
□開催場所:伊勢丹新宿店本館2階 イセタン ザ・スペース

公式インスタグラム:@isetan_the_space

「イセタン ザ・スペース」のショップページを見る

Text:Rio Hirai
Photograph:Naoto Date

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