日本の美術は、明治維新以降、世界に通用する文化をつくろうと、国際化を図ってきました。欧米の美術と違うその独自の価値観は、やがて国内外へ広まり、今日まで発展を遂げてきました。「現代アート」は、そんな芸術家たち一人ひとりの歩みや歴史の延長線上に存在しています。
三越は、アートギャラリーとして110年以上の歴史があります。これまでと、これから100年先も超えて受け継がれてゆくような、本物のアートを取り扱っていくことが、その使命であると考えています。
私たちが掲げる「CONTEMPORARY:コンテンポラリー」とは、現代・同時代という意味です。価値観が多様化するいま、社会を映し出す鏡であるアートの在り方にも、さらなる多様性が求められていくと私たちは思っています。
日本の「感性」と「歴史」をリプレゼントした表現を。
さまざまな表現を受け入れ、本質を見据えながら文化へ昇華する柔軟性こそ、日本の素晴らしさと言えます。茶道の歴史を振り返れば、中国で形づくられた禅の思想を抽象化した「わび・さび」があります。そこから生まれた「破調の美」に見られるような美意識の受容と発展は、極めて日本的と言えるかもしれません。そして、その感性は現代人にも確実に継承されています。
日本独自の技術から生まれた江戸時代の浮世絵も、世界中の美術界に影響を与え、変化し、いまなお愛され続けています。私たちは、そのような日本美術の歴史、文化、美意識のつくり出す価値を再発見し、新しい価値観をつくりだせる現代アート作家をご紹介していきます。
あらゆる表現への受容の眼差しと、アートの裾野の拡張。
さらに、三越は、長い歴史の中で、数々の価値観を受け入れてきました。だからこそ、美術館、ギャラリーが今ほど隆盛していなかった時代も、「日本の美術」の裾野を拡げることができたのではないかと思っています。
たとえば、現代アート作家も、趣味として絵を描く美術愛好家も、同じ絵具を使っています。その絵具は、美術という広い裾野があるからこそ、安価で提供されているとも言えないでしょうか。三越が現代アートに取り組むことの意味は、そこにあります。私たちなら、過去から現在、そして未来へつながる「日本の美術」を、より包括的に表現し、アートの領域を拡張していくことができるはずと自負しています。
時代の変遷とともに、アートの販売チャンネルは細分化し、百貨店に求められる役割も変化しました。これまでの価値観では、その変化に太刀打ちできない。だからこそ、一部の美術様式や主張だけではなく、幅広い視野で日本の美術様相を映し出せる存在が、いま必要なのだと思います。
私たちは、先駆者たちが切り拓いてきた美術の歴史へ敬意を払いつつ、日本美術の歴史・文化・美意識を再発見し、時代に即した新しい価値観をつくり出すことのできる作家や現代アートを、皆さまにご紹介していきます。これまでなかったような、新しい百貨店美術の在り方を、『MITSUKOSHI CONTEMPORARY GALLERY』は提案していきます。
これからの新しい『MITSUKOSHI CONTEMPORARY GALLERY』に、どうぞご期待ください。