【インタビュー】「武田双雲展 煌めき」書道家・武田双雲氏の作品にかける想いとは

日本橋三越本店で好評を博した「武田双雲展 煌めき」。出展作品の一部を6月9日(火)午前10時から8月4日(火)午前10時まで三越伊勢丹オンラインストアでご紹介するのを記念して、書道家・武田双雲氏の素顔に迫るとともに、作品に込めた想いを聞きました。

 

―日本橋三越本店においては初開催となる展覧会。タイトルを「煌めき」とした理由について、教えてください。

 「煌めき」という言葉は知っていても、多くの方は、日常生活ではあまり使わないですよね。漢字も、「どういう字だったっけ?」という感じじゃないかと。でも、あらためて眺めると、「煌」って、とてもいい字なんです。分解すると、「火」と「白」と「王」。「火」は情熱的で、「白」はクール、あるいはピュアな印象。「王」は高貴さと、いい意味でのプライドを感じさせます。熱く燃えているけど冷静でクリーン、そして器も大きい。偉大な志を持ち、人間としても大きな器を備えている、そんな素敵な人を、たったひと文字でイメージさせる文字って、すごくないですか?
 それに、後ろについている「めき」もいい。「煌(きら)」からは鋭さと輝きが感じられるのに対し、「めき」は柔らかく、どこかかわいらしさも漂います。このバランスもよくて、とにかく、僕が目指す世界と「煌めき」の持つ意味、イメージが完璧に合致していると感じられたので、頭に浮かんだ瞬間、即決!でした。

―感覚的なところから、アイデアを掴まれるんですね。

 とにかく、僕の心はいつも感動している、何かを感じている状態なんです。人間って、何も感じずにいると、当たり前ですが何も感動できなくなりますよね。「これはコップである」「これは服である」「妻である」というふうに、頭で決めてしまうと、それ以上のことは脳がスルーして、何も考えられなくなります。
でも、それじゃつまらない。僕はいちいち、その瞬間、そのものをとことん味わうことにしているんです。たとえば、温泉に入ったときに、誰もがわざとその瞬間の喜びを、大げさに味わうものです。喉が渇いているときに飲むビールのおいしさもそうだし、おいしいものを食べるときもそう。特別な瞬間だけでなく、毎日、すべての瞬間にそれをやり続けたらどうなるだろう?という実験を、僕は日常的にしている。それが、創作にも表れているんだと思います。

―書道家としておよそ20年のキャリアをお持ちですが、書道を始めたときから、ずっと感性先行型だったのでしょうか。

 もちろん、最初は上手に書くことを目標にしていました。今もそのことは大事にしていますが、一方で、いつの頃からか「心を無くしたら、意味がないな」と思うようになったんです。
幼い頃からやっているので、どうしても書くことに自分が慣れてしまっていて、ただ書いていると、つい同じ行動をとってしまいます。でも、それだとワクワクしない。字を書く、線を描くだけのロボットにはなりたくないから、一画一画、気持ちよく書くことにより集中しようと考えるようになりました。
いうなれば、「ちゃんと書こう」とか「しっかり書こう」という義務感を、ひとつひとつ捨てていった。この20年間は僕にとって、そんな年月だったと思います。

 

上作品:武田双雲『煌』(越前和紙)

―展示会のシンボルとなる作品『煌めき』は、越前和紙の職人との協働から生まれた大作です。ホースからの水圧で字を書いていくという斬新な手法ですが、制作は順調でしたか?

 これまでにも、3メートル、4メートルといった大きな作品を書くときに、越前和紙を漉いていただいた経験はありました。僕にも自分なりのこだわりがありますが、職人さんも、やはり自分たちの世界を確立している方々。ですから、その仕事を妨げることはできません。でも、やはり紙を漉いている姿は格好いいし、見ていると自然と尊敬が芽生えてくる。その気持ちを正直に伝えてお話しすると、だんだん心を開いてくださるんです。
 「ホースの水で字を書いてみたいんです」と僕が言ったとき、最初は困ったなぁという顔をされました。それでも、「やってみましょうか」と言ってくださいました。僕と一緒に、新しい挑戦をしようじゃないかと。そうして、世界でまだ誰も作ったことがないような作品が生まれました。ものづくりにはやはり尊敬と信頼関係が大事なんだな、ということを再確認する作業でした。

―新しいことをするとき、怖れは感じませんか。

 感じないですね。感じるより先に、手が動いてしまう。「ホース、貸してもらえます?」と言ったら、職人さんたちはびっくりしていましたが、はじめて持った道具だから、はじめて向き合うやり方だからできることがあるはずだ、と。僕はそういう思考で生きているので、プラスの力しか感じません。
 「失敗したらどうしよう」じゃなくて、「筆と違うなぁ」「だから面白い!」と。こんなふうに、ある種のエラーを起こすことが僕にとっては大事なんです。エラーを起こすことで、実はとてもクリエイティブな状態になるんですよ。モチベーションも高まり、未知の領域に到達することができる。自分という枠からどんどん解放されて、視野が広がるんです。たとえ失敗したとしても、「失敗は成功の母である」って言うじゃないですか。

―スーパー・ポジティブな気風が、作品からも伝わってきます。

 よく「元気ですね」「エネルギーが高いよね」と言われるのは、実はそういうからくりなんです。毎回、自分がいちばん驚いているから退屈しない、結果、イメージをはるかに超える作品ができる。書くときの僕のエネルギーは、たぶん絶対に作品を通じて伝わるでしょうから、毎回、死ぬほど楽しむ!ことにしています。

 

上作品:武田双雲『笑』(アクリル絵具 他)

―近年は、書と並行して現代美術の制作も手がけておられます。異なるジャンルでの活動は、書にどんな影響を与えていますか。

 現代美術には色があり、書道よりさらに型がありません。絵の具に手を触れた瞬間、何かが爆発したような手応えを感じました。モノクロからカラーの世界へ行った感動、というんでしょうか。まさか、こんなに夢中になるとは!制作をはじめてからここ1、2年、人生の色合いが変わったというくらいの衝撃を受けています。
 でも、そこであらためて書のよさを実感するのも、また事実です。墨一色、筆一本で向かい合う、決して後戻りのできない世界。しかも、コミュニケーションツールでもある文字には、厳然と意味があります。制限だらけの世界、そのストイックさが、あらためて面白くなっていますね。伝統と革新を行き来できる自由がある現在を、僕自身がいちばん楽しんでいる。その躍動が、作品から伝わるといいなと思っています。

 

出典:『武田双雲展 煌めき 図録』(展覧会図録)、日本橋三越本店、2020年。

 

作品紹介

  • イメージサイズ:約24.2×33.3cm、
    額サイズ:約38.1×45.6cm、
    技法:墨、金墨、色墨(半紙)
    税込価格:440,000円

    日本橋三越本店の個展のタイトルにもなった「煌めき」を題材に制作されました。

  • イメージサイズ:約20×15cm、
    額サイズ:約31.9×25.8cm、
    技法:墨、色墨(越前和紙)
    税込価格:231,000円

    「楽」という字は武田氏が特に好きな言葉の一つです。

 

 

  • いきあたりばっちり

    イメージサイズ:約33.3×24.2cm、
    額サイズ:約45.6×38.1cm、
    技法:墨(半紙)
    税込価格:440,000円

    武田氏らしいユーモアに溢れた1点です。

  • 煌(個展限定版画)

    イメージサイズ:約24×33cm、
    額サイズ:約40.2×48.5cm、
    技法:版画(デジタルプリント)
    税込価格:88,000円

    原画を元により武田氏の作品を気軽にお楽しみいただけるよう制作された版画作品です。

※価格はすべて税込です。
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