<FILT.>おんどのある暮らし
~木のぬくもりを加えることで生まれる暮らしの豊かさ~

「木工作品と触れ合うぬくもりのある暮らしを楽しんでほしい」。そんな想いを伊勢丹新宿店に寄せてくれたのは愛知県岡崎市で家具のセレクトショップを運営する<FILT./フィルト>の反端 祐樹さん。反端さんの想いに応えるために7名の木工作家が<マルニ木工>の端材に新たな命を吹き込んでくれました。「おんどのある暮らし」は明日からの空間の景色も温度も変わるようなぬくもりを届けるイベントです。
<FILT.>おんどのある暮らし
□2024年10月2日(水)〜10月8日(火)
□伊勢丹新宿店 本館5階 センターパーク/ザ・ステージ#5
※掲載の情報につきましては、諸般の事情により予告なく変更・中止させていただく場合がございます。予めご了承ください。
※必ず事前にホームページを確認してからご来店ください。
「おんどのある暮らし」に込めた想いを
反端さんに聞くために<FILT.>へ
—「おんどのある暮らし」というイベントはどのようなきっかけで思いついたのでしょ
うか。
反端:僕は飛騨高山の木材で家具の製作もしているのですが、その木材は森を生かすために伐採したものを使用しています。自然界に人の手が⼊るのは環境を壊すようなイメージもあるかもしれませんが、むしろ伐採をしないと森というのは腐ってしまうんです。なので<FILT.>でも家具を販売するとともに環境の循環に貢献できるようなことを常に考えていて、そんな考えをお客さまとも共有したいと「おんどのある暮らし」を思いついたんです。
—出展する作品はすべて<マルニ木工>の端材で製作されますが、素材として選んだ理由はなんでしょうか。
反端:<マルニ木工>の工場へ行った時に、「HIROSHIMA」を作る過程である程度まとまった端材が出てしまうことを知りました。無駄のない家具作りをどれだけ心がけても端材は必ず出てしまうんです。<マルニ木工>の「HIROSHIMA」は個人的にも大好きなチェアで<FILT.>でも取扱っていることもあり、<マルニ木工>の木材が上質であることは僕自身がよくわかっています。なので端材といってもプロダクトを作るに値する素材ですし、その作品をお客さまが手にしてくれたら無意識であっても環境の循環に参加することになると思ったんです。
—出展される作家さんはどのように選定されたのでしょうか?
反端:上質な木目を活かせる方、端材ならではのカタチを活かせる方、そのふたつをポイントにお声がけをしましたが迷いはありませんでした。多くの作家さんが過去に<FILT.>でイベントをされたことがあるので細かいところまで伝えなくても必ず汲み取ってくれると信頼していましたし、実際にこちらがイメージしていた通りに皆さんが素材の特徴を見事に引き出してくれました。
—作家さんにお題のようなものはお伝えしたのでしょうか。
反端:「暮らしのなかに木材のぬくもり、手仕事のぬくもりを届けることを意識してください」というのは伝えました。作家さんによっては作風はいつも通りでも、端材だからこその新しいアプローチを感じられる作品もありました。端材なので木材の大きさも形も自分では好きに選べません。制約があるからこそ生まれたアイデアなんだろうなって思います。
—反端さんからのオファーに対して作家さんからはどのような反応がありましたか。
反端:「いつもとは違う頭を使うからおもしろい」と言ってくれた作家さんがいました。先ほどもお話ししましたが、端材といっても<マルニ木工>の場合はクオリティの高さは間違いないんです。なので作家さんも「無駄をなくすために無理してでも作品にする」という考えは皆無でした。
—今回のイベントでは、お客さまにどのように楽しんでほしいですか。
反端:伊勢丹新宿店のお客さまはすべてにおいてファッション感度が高いので、身につけるものだけでなく、自然のぬくもりが宿るオブジェが自宅の空間に加わるだけで暮らしが豊かになることを知ってもらえたらうれしいです。「おんどのある暮らし」というタイトルにもそんな想いが込められているんです。
—小さなオブジェが日常の風景を大きく変えてくれるんですね。
反端:家具でもインテリアでも削ぎ落としていくかっこよさが好きな方は多いと思うのですが、「加えていく豊かさ」というのも体感してほしい。木製の小さな作品が日常の風景を変えるような力を持っていることにも気づいてもらいたいです。
—反端さんなら「おんどのある暮らし」の作品をどのように暮らしに取り入れますか。
反端:僕の前職はインテリアコーディネーターで自分にとって心地良い空間を追求した結果、好きな家具に囲まれていたいと<FILT.>を始めたんです。心地良さのために調和された空間を大切にしているので、オーク材のオブジェであればオーク材のテーブルやボードの上に飾りたいですね。ただコントラストというのも捨て難くて、クールなガラステーブルと穏やかな木工作品を組み合わせればお互いの存在を引き立て合うかっこよさも生まれます。お客さまは難しく考えずに「おんどのある暮らし」を自由に始めてほしいです。
会期中、これらの作家作品を暮らしの中で感じていただけるよう、住居をイメージし、家具とともに設えます。<FILT.>の家具は日本の職人の手仕事によって作られる上質で美しく洗練された意匠の家具なので、ぜひ会場でご体感いただけたらと思います。
反端さんがイベントへの出展を依頼した
<苔むす木工>の鈴木 智浩さんの工房を訪問
—端材で作るということで製作スタイルに変化などはありましたか。
鈴木:家具の端材と聞いていたのですが素材としてのクオリティはまったく問題はなかったですし、サイズ的にも普段作っているものにちょうどいい大きさでした。なので端材だからといって何かを変えたということは特にはなかったです。木材ならなんでも好きなのでいつも通りでした(笑)。
—木材としては<苔むす木工>がいつも選ばれているものとは異なりますよね。
鈴木:普段は削りやすいのでくるみを選んでいるのですが今回はビーチ材・オーク材・ウォルナット材と複数の木材があり、ウォルナット材はくるみの仲間なので問題はなかったのですがオーク材は本当に堅いので削るのに苦労しました。反端さんからお話をいただいたときもウォルナット材だけで作るつもりだったのですが、こういう機会じゃないとほかの木材を触ることもないと思いビーチ材・オーク材にも挑戦してみました。
—堅いというオーク材ならではの苦労は?
鈴木:自分は手作業で削っていくのでくるみで作るよりも完成までに5倍は時間がかかりました。木材そのものの質感は好きなのですが量産は難しいと思いましたし、手が壊れるかと思ったぐらい苦労したのでオーク材で作ることは二度とないと思います(笑)。今回限りになる可能性が高いのでオーク材の作品は<苔むす木工>としてはレアですね。
—<苔むす木工>といえば動物、生き物ですが今回のモチーフはどのようにして決めたのですか。
鈴木:今回は塗装、着色をするつもりはなく木材のナチュラルな表情を楽しんでもらいたいと思っていました。なので「この木材の色合いや風合いなら、あの動物を表現しやすい」と考えながら作っていきました。ただ普段からモチーフを厳密に決めているわけではないんです。
—モチーフを決めていないというのは?
鈴木:動物を作ろうとしているわけではなくて木材の大きさ、色合いを最も活かそうとしたら鹿に近しいものが生まれたというような感覚なんです。どれも馴染みのある動物に見えると思いますが極端に脚が短かったり、尻尾が大きかったりすることもあり、それはカタチの美しさを追求した結果なんです。
—反端さんからは今回の作品に対して「木材のぬくもりを届ける」というお題があったと思います。
鈴木:基本的には自分が作りたいものを作るというスタンスでやっていますが、テーマなどを与えてもらうことで新しい作品につながることもあります。過去に<FILT.>で<苔むす木工>のイベントを開催したときは反端さんから「幻獣のようなものを作ってほしい」って言われました(笑)。でもそのおかげで自分の発想にはなかった作品が生まれました。
—<苔むす木工>のファンはどういう方が多いですか。
鈴木:<苔むす木工>の作品を選んでくださるのは彫刻やアートが好きというよりも動物好きという方が多くて、インテリアとしても親しみやすいという声が多いです。自分もアーティストのつもりはなくて、木工作家としてお土産屋さんのような感覚でこの仕事を続けているので親近感を抱いてもらえるのはすごくうれしいです。
—伊勢丹新宿店ではどんなお客さまに手に取ってほしいですか。
鈴木:百貨店で自分の作品を展⽰販売することが初めてなのでどんな方が手に取ってくれるのか想像もつかないです。<苔むす木工>のことを知らない方との接点も生まれると思っていますし、新しいことをどんどんやっていきたいという気持ちもあるので伊勢丹新宿店への出展は楽しみが大きいです。
<マルニ木工>の端材は工場の熱源に使用されているので廃棄物となっているわけではありません。ですが「プロダクトとして新たな命を吹き込んでいただけることはとても嬉しいことですし、このような活動をしている<FILT.>に共感しました」と<マルニ木工>の担当者も話します。環境にも暮らしにもやさしい木工作品との出会いを楽しんでください。
出展作家一覧
※★マークの作家は、10月5日(土)からの販売となります。
市川 岳人 (愛知県)
嘉手納 重広 (東京都)
クラフトkochi (北海道)
★苔むす木工 (京都府)
first-hand (愛知県)
Olectronica (大分県)
宮下 渉 | YOIN inc. (東京都)
詳しくは