【アクセサリー連載VOL.5】

ジュエリー造りにおいて大切にしていること、譲れないこと、貫いていること。すべてのデザイナーたちは胸の内に「美の哲学」を秘めていて、だからこそ生まれる唯一無二の輝き、可愛さ、華やかさがあります。今回は<BLANCIRIS/ブランイリス>のクリエイティブディレクター、荒木弘美さんの「美の哲学」です。
すでにカタチあるものではなく、自分のモノ作りを発信したかった

荒木弘美さんがクリエイティブディレクターとして、2012年にパリでスタートした<ブランイリス>。後にソフィー・クルーゼルさんがデザイナーとして参画し、その活動はパリだけでなく、日本まで広がっています。荒木さんは自身のブランドを立ち上げる以前はフランスのジュエリーブランドのソウルエージェントとして日本での展開を担ってきました。「すでに確立されたブランドの世界観や完成されたジュエリーを紹介するのも価値ある仕事として貴重な体験でしたが、すでに完成されたものを発信するだけでなく、今、自分が感じていることをジュエリーというフィルターに通して表現したいという思いが大きくなり、それが<ブランイリス>の誕生につながりました」と話す荒木さん。「すべてがゼロからのスタートだったので、モノ作りとブランディングの両方をコントロールするのがとにかく大変でした」とブランドスタート当時は苦労も多かったようです。

ソフィー・クルーゼルさん
ブランドが誕生した2012年のエピソードとして、荒木さんがよく覚えているというのが日本のバイヤーさんからの質問。<ブランイリス>はスタートしたときからシルバーや真鍮の大ぶりなジュエリーも、18金の繊細なジュエリーも展開しラインナップが幅広いことから「<ブランイリス>の本流はどれですか?」と何度も聞かれたそうです。「私はお洋服にTPOがあるように、ジュエリーもひとつのシーンだけで切り取るのは難しいと思っています」という荒木さんにとって、“こんな日だから”、“こんな場面だから”と身に着けたくなるようなジュエリーを作るために、さまざまな素材を使うのはごく自然なことでした。なかでもシルバーは「フェミニンな曲線もボリューム感も自由に表現でき、光沢もピュアでやわらかな素材なので<ブランイリス>のブランドイメージにマッチしている」と、強いこだわりがあるそうです。

<ブランイリス>
リング 30,800円 商品を見る
バングル 59,400円
□伊勢丹新宿店 本館1階 アクセサリー
オリジナリティを生み出すためのデザインチーム、緻密な製作工程

「ここが<ブランイリス>といえるポイントは?」という質問に対して、荒木さんの答えは「オリジナリティです」と明解でした。まるで彫刻を仕上げるようにひとつひとつのジュエリーの型を作っていく作業は決してコンピュータでは表現できないフォルムを生み出し、「ときに偶然が生み出すフォルムとの出逢いもあります」と荒木さん。身に着けたときの存在感をなにより大切にしているそうで、生み出されるジュエリーはすべて<ブランイリス>のデザインチームとイタリアの熟練した職人のコラボレーションによるものです。ボリュームのあるシルバーチェーンネックレスは、ひとコマひとコマをつなぎ合わせ、その継ぎ目がわからないように磨きあげているそうで、「すべてがオリジナルというところに注目してもらえるとうれしいです」とクリエイティブディレクターとしての思いを語ってくれました。

<ブランイリス>がコレクションを発表するのは年2回。「身に纏ったときに心をときめかせ、高揚感をもたらしてくれるのがファッション」と考える荒木さんにとって、ジュエリーも気分を高めてくれる重要なコーディネートアイテムのひとつ。「普遍的なスタイルのもの、時代を感じさせるもの、新作を提案するときはそのバランスを考えます」と、シーズンコレクションはその時々の気分やモードを強く意識しているといいます。コロナ以前は年に2回ほどソフィー・クルーゼルさんとヨーロッパを中心にそれぞれの国や地方の文化、歴史に触れる旅をしていたそうで、「デザインソースを求めるというより、クリエーションのインスピレーションにつながるような美しいものを見たり、体験したりするのが目的」だったそう。ビジュアル撮影は必ずパリで行い、モードで洗練されたブランドの世界観を大切にしている荒木さんは必ず立ち会うといいます。

イメージしている女性像と重なった船越さんというミューズの存在

<ブランイリス>のブランディングに欠かせないのが、船越陽子さんの存在。「共通の知人を通じて知り合ったのですが、ピュアで透明感があり、それでいてスタイルのある意志の強い女性」というのが初対面のときの荒木さんの印象。ひと目で「<ブランイリス>がイメージしている女性像と重なりました」と感じた荒木さんは、ブランドのアンバサダとして活動していただけるようオファーしたそうです。その後の船越さんの活躍は<ブランイリス>のファンなら誰もが知るところです。
※動画で紹介している商品は参考商品です。

<ブランイリス>の存在はSNSなどでも大きく注目されるようになりましたが、荒木さんのもとには「雑誌や写真で見るよりも、実物の方が存在感があって素敵」といううれしい声が届くそう。それだけに「<ブランイリス>をご存知ない方も、ぜひ一度実物を手にとってご覧いただきたい」というのが荒木さんの想いです。

「VOLUTE」
<ブランイリス>リング 15,400円
□伊勢丹新宿店 本館1階 アクセサリー

「SUCCESSION」
<ブランイリス>ピアス 176,000円
□伊勢丹新宿店 本館1階 アクセサリー

荒木弘美
20歳から2年間の英国留学後、家業のアンティークショップのバイヤーとして英国とフランスを往来することに。その後、フランスのジュエリーメゾンの日本での展開を経て、2012年に<ブランイリス>を立ち上げる。
<ブランイリス>2021春夏コレクション
□2月24日(水)から
□伊勢丹新宿店 本館1階 アクセサリー
期間中、55,000円以上お買いあげの先着15名さまにオリジナルジュエリーポーチを差しあげます。

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