三越伊勢丹・名画版画コレクション

夭逝の天才日本画家・速水御舟(1894-1935)の代表作、重要文化財《名樹散椿》(東京・山種美術館所蔵)の彩美版®美術複製画作品をご紹介いたします。

速水御舟「名樹散椿」彩美版®美術複製画
技法:彩美版®シルクスクリーン、一部本金泥使用
制作数:300部
イメージサイズ:(約)35.8×72.7cm
額サイズ:(約)56.5×93.5×厚さ5.0cm
価格:275,000円
速水御舟「名樹散椿」(重要文化財・山種美術館所蔵)彩美版®美術複製画のご案内
※共同印刷株式会社発行のパンフレットより抜粋
日本画の挑戦者、速水御舟
「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い。」速水御舟の有名な言葉です。
この言葉のとおり、御舟は一つの様式にとどまることなく常に新しい表現を追求し続けました。明治末期から昭和初期にかけて40年という短い生涯を流星のごとく駆け抜けた日本画家です。
ものの質感や色面構成、人物表現、花鳥画など様々な絵画表現をその時々で鋭く追求し、一人の作家が制作したとは思えないほど多様な表現の移り変わりを見せました。
あらゆる生命への畏怖の念を根底に持ち、研ぎ澄まされた緊張感と集中力により新しい日本画を創造しようとしたその軌跡は、横山大観などの当時の画家に刺激を与え、また、後進に大きな影響を及ぼしました。

速水御舟《名樹散椿》二曲一双屏風(重要文化財・山種美術館蔵)
※昭和期以降の美術品として初めて重要文化財に指定された
山種美術館の至宝、 速水御舟の代表作《名樹散椿》
《名樹散椿》は横山大観らが参加した1930(昭和5)年のローマ日本美術展覧会に出品された作品で、1977(昭和52年)には、昭和以降の作品として初めて重要文化財に指定された、日本絵画史に残る大変貴重な作品です。
また、川合玉堂、上村松園、奥村土牛、東山魁夷らをはじめとした近現代の優れた日本画家の充実したコレクションで知られ、本作品を所蔵する東京・広尾の山種美術館においても、同じく御舟の《炎舞》(重要文化財)と並び、特別な作品として大切にされています。
京都市北区にある昆陽山地蔵院 (通称・椿寺)に咲いていた樹齢約四百年という五色八重散椿の老木を題材にした《名樹散椿》は、金地に色とりどりに咲く椿の木が描かれた二曲一双屏風です。御舟35歳の時に制作された作品で、この時期の御舟は画面構成や絵画の質感表現を深く追求していました。
無駄のない金一色の背景を切り取るように樹木が描かれた画面は琳派の装飾性からの影響を感じさせる一方で、椿の花や葉には大正期に探求した質感描写の成果が感じられます。御舟が体得してきた様々な要素が一体となった本作品の構成美は、御舟芸術の一つの到達点として高く評価されています。

速水御舟《名樹散椿》に寄せて 山﨑妙子(山種美術館館長)
《名樹散椿》は、1977(昭和52)年、昭和以降の作品として初めて重要文化財に指定された。当館所蔵の《炎舞》(1925年に重要文化財指定)とともに速水御舟の代表作として知られる金地屏風で、京都市北区にある昆陽山地蔵院(俗称・椿寺)の椿が描かれている。
《名樹散椿》において、御舟は琳派の作品に見る構成法を意識的にとり入れている。しかし、「構成は事実を土台とすべきである。事実を度外視したすべての構成は無力に近い」という御舟の言葉通り、《名樹散椿》はそれまでの御舟の作品と同様に写実を基礎としている。大胆な色面による構成を意図してモティーフは平面的な形態に単純化され、装飾的効果を強調している。ここに見られる美しい絵具の発色は、大正期の質感描写の研鑽を通じて得られた、日本画の画材に対する卓越した理解に基づくものといえよう。
背景の金地は、金砂子を何度も撒いて密にする「撒きつぶし」の技法による。箔に比べはるかに多くの金を必要とし、手間もかかるが、しっとりとして落ち着いた金地になり、上品な豪華さが演出される。箔押し地とは異なる新たな金地のマチエールを追求した結果、この手法にたどり着いたのだろう。
初期の南画風の作風から、細密描写、象徴的作風、写実と装飾を融合した画風へと、次々に新境地を拓いた御舟だが、1935(昭和10) 年、40歳の若さで急逝。そのあまりに早い死は日本画壇にとってきわめて大きな損失となった。常に新たな画風をとことんまで突き詰め、日本画の表現の可能性を追求、新境地を開拓した御舟の姿勢は、今日でも高く評価されている。
(付属の解説書より一部抜粋)

山種美術館(Yamatane Museum of Art)
山種証券 (現・SMBC日興証券) 創業者である山﨑種二氏が個人で蒐集したコレクションをもとに、1966年(昭和41年)に開館した日本初の日本画専門美術館。横山大観、川合玉堂、上村松園、奥村土牛、速水御舟、東山魁夷など、日本を代表する近代・現代画家を中心とした充実した日本画のコレクションで知られる。

電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
詳細はホームページ等にてご確認ください。
山種美術館の全面協力による「彩美版®」制作
「名樹散椿」彩美版®は、山種美術館の特別な許可と全面協力のもと、本作のための貴重な原画との校正や厳密な色彩の調整を経て制作されました。特に原画の、金箔を細かくした金砂子を何度も隙間なく振り撒いていく「撒きつぶし」と呼ばれる技法が全面に使用された背景は、金箔でも金泥でもない、光沢を抑えた独特のもので、そのしっとりとした金の上品な輝きがこの作品ならではの特徴となっています。
この再現にあたっては、一部に本金泥を使用、作品に合わせ調合した金色を職人技によりシルクスクリーンで二度刷りすることで絵具の質感を出し、限りなく原画のイメージに近づくよう、再三にわたる微妙な調整作業を経て完成しました。
常に新しい表現を模索し続けた速水御舟。その妥協することのない制作に対する姿勢と作品に込めた精神が伝わるよう、細部の表現に至るまで丹念に制作されています。
シルクスクリーン刷りの有無による違い(左なし・右あり)
シルクスクリーン刷りの様子
彩美版®とは
「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。長年の経験により培われた画像処理技術を元に、厳選された素材に高精度デジタルプリントを施し、画材の質感と豊かな色調を再現した共同印刷の美術複製画です。
本作「名樹散椿」ではさらに一枚一枚に職人の手刷りによるシルクスクリーンを施すことで、作品に表された速水御舟の豊かな色彩や筆遣いといった原画の持つ鼓動までも表現しています。
半世紀以上にわたり複製美術品の制作を続ける共同印刷の「彩美版®」は、業界屈指のブランドとして、多くの美術愛好家に支持されており、美術関係者からも高い評価を得ています。
額裏に監修者の承認印・限定番号が入れられた奥付シールが貼られ、そこには共同印刷株式会社が開発したセキュリティーシールが貼付されています。お手持ちのスマートフォンなどで、フラッシュをたいて撮影すると、本作品が共同印刷が発行する真正な複製画であることを判定することができます。
監修者の承認印・限定番号・セキュリティーシールが施された奥付シール(見本)
速水御舟「名樹散椿」彩美版®美術複製画 仕様体裁

技法:彩美版®シルクスクリーン、一部本金泥使用
制作数:300部
用紙:版画用紙
額縁:金泥仕上げ木製枠、アクリル付(国産)
イメージサイズ:(約)35.8×72.7cm
額サイズ:(約)56.5×93.5×厚さ5.0cm
重さ:(約)5.6kg
監修:山種美術館館長 山﨑妙子
解説:山種美術館館長 山﨑妙子
原画所蔵:山種美術館