近代琳派デザインの精華 神坂 雪佳 木版画作品特集

「光琳の再来」とも称され、明治から昭和にかけて京都を中心に活躍した画家・図案家の神坂 雪佳(1866-1942年)。今特集では、雪佳の代表作となる図案集『百々世草』に収められた木版画作品をご紹介します。
※今回ご紹介する木版画作品は、版元である芸艸堂所蔵の当時の版木を使い、現代の摺師が一枚ずつ摺り上げた後摺木版画作品です。
-
神坂 雪佳《狗児》(部分)
神坂 雪佳(1866-1942年)
幕末の京都に生まれた神坂 雪佳は、16歳で四条派の鈴木 瑞彦に入門し、絵を描くという技術を学ぶうちに美術工芸や装飾芸術にも関心を広げました。その後、明治という新しい時代には工芸図案が必要と考え、図案家・岸 光景のもとで工芸図案を専門的に学びます。
雪佳は画家としての絵画制作で多くの展覧会などで受賞を重ねる一方、師・岸 光景の助手として図案制作を補佐して経験と実績を積み、31歳の時に京都市立工芸図案調整所の主任として迎えられ、のちに京都市立美術工芸学校(現・京都市立芸術大学)で教鞭をとり、後進の指導にあたりました。
琳派の始祖・本阿弥 光悦の影響を受けた師・岸 光景の流れを汲んだ雪佳は、光悦をはじめとする琳派の研究に没頭するかたわら、光悦が目指した工芸制作を軸に染織から室内装飾や庭園まで多様な図案制作を展開、「光琳の再来」とも称されるようになりました。
国内の博覧会・展覧会の審査官や皇室からの図案作成を数多くおこない、晩年は京都・嵯峨野に隠棲しつつ、流行にとらわれず生活を重視した商品性の高い工芸品を生み出しました。
近年では、大規模な展覧会『つながる琳派スピリット 神坂雪佳』(2022年)が全国各地で開催されるなど、生活を彩るクリエーティブデザイナーとしての神坂 雪佳が再び評価されています。
-
神坂 雪佳(1866-1942年)
雪佳の図案と『百々世草』
図案家として精力的に活動した雪佳は木版画による図案集の制作にも取り組み、1909年から1910年にかけて、京都の美術出版の老舗・芸艸堂により『百々世草』が刊行されます。3分冊に各20点がおさめられ、雪佳が生み出した図案が一望できる代表作の一つとして知られています。
大胆なトリミングや多様な色彩感覚、独創的な画面構成、登場人物のユーモアのある表情など、琳派を継承しつつも独自の近代的な美意識を加えた「雪佳芸術」の精華が今に伝えられています。
-
画集『百々世草』全3巻(明治42年発刊)より
第一巻の表紙・目次・奥付
-
狗児
イメージサイズ:約 縦30×横45cm
額サイズ:約 縦50×横65cm
価格:59,400円
-
白鷺
イメージサイズ:約 縦30×横45cm
額サイズ:約 縦50×横65cm
価格:59,400円
-
牧童
イメージサイズ:約 縦30×横45cm
額サイズ:約 縦50×横65cm
価格:59,400円
-
ももよ草
イメージサイズ:約 縦30×横45cm
額サイズ:約 縦50×横65cm
価格:59,400円
-
紫陽花
イメージサイズ:約 縦30×横45cm
額サイズ:約 縦50×横65cm
価格:59,400円
-
住の江
イメージサイズ:約 縦30×横45cm
額サイズ:約 縦50×横65cm
価格:59,400円

雪佳は欧州を歴訪してアールヌーヴォーの形式を取り入れ、その作風は独自の境地を拓く者として欧米で熱い賛美を浴びました。また、日本の近代工芸界に曙光を与え、その後の発展に大きく貢献。その作品はとりわけ欧米で高く評価され、「ル・モンド・エルメス」38号の表紙と巻頭12ページを飾るなど、雪佳の作品には現代の一流ブランドさえ魅了する斬新な意匠美の世界が今も変わることなく息づいています。