

※このイベントのオンラインストア会期は終了いたしました。
目を惹くビビッドな配色で、謎の生き物たちを描き出すアーティスト・イラストレーターのICHASU(イチャス)氏。キャンバスに広がるのは、茶目っ気たっぷりの性格が投影されているかのような、不思議でユーモラスな世界観。アイドルグループへのイラスト提供や、「MITSUKOSHI×東京藝術大学 夏の芸術祭2018」での作品完売など、まさに“今きている”存在です。
見ているとなんだか親近感がわいてくる、そんなICHASU氏の最新シリーズを集め、三越伊勢丹オンラインストアでは2021年1月13日(水)から「ICHASU展 MOON」を開催します。
これからの展開が楽しみなICHASU氏に、現在の独創的なスタイルにいたるまでの経緯や、アートとの向き合い方について聞きました。
幼少期から始まったICHASU氏のアーティストへの道のり。絵を描くのが得意だったという7つ年の離れたお姉さまへの憧れから筆をとりました。
「物心ついた時には絵が得意で、描くことに関してはよく褒めてもらっていたのを覚えています。当時は少女漫画のようなイラストを描いていました。漫画やアニメーション、特に海外のアニメーションもよく見ていました」
絵の得意な中高生時代を経て、東京藝術大学デザイン科に進学。そこで画風が磨かれていく……のかと思いきや、入学後は急に機械細工などによる作品制作に方向転換。
「しばらくは音の鳴るおもちゃを改造して楽器にしたり、絵とは全く異なるジャンルで創作をしていました。そして3年半ほど経った頃、卒業制作をきっかけにまた絵筆をとったんです。今描いているようなキャラクターたちもその頃に生まれました」
突然絵を描き始めたICHASU氏。「周りの人が驚くようなことはなく、放ったらかしだったんです」と笑って言いますが、自由奔放なようで人から愛される姿は、作品のスタイルに通ずるものがあります。
上弦の月
サイズ:約 幅250×高250×奥行15mm
素材:キャンバス、アクリルガッシュ
価格:46,200円
東京藝術大学大学院修了の年、次世代アーティストを発掘する「リキテックスアートプライズ2013」でグランプリを受賞。新進アーティストとして活動を続ける中、「MITSUKOSHI×東京藝術大学 夏の芸術祭2018」で作品が完売。「自分の満足いく作品を描けばそれが伝わるということを実感し自信になりました。」ユニークなキャラクターが飛び回る作品は、一見“おちゃらけ”ているように見えて、実は緻密な計算のもとに成り立っています。展示されるギャラリーの雰囲気や作品が飾られる壁を見ながらテーマを練り込み、展示作品数やモチーフにも全て“理由”があります。まるで空間そのものがICHASU氏の世界に包み込まれるようです。
「作品のベースには常に計算があるんです。最も良いと思えるデザインや色の組み合わせを考え、頭の中で線画、色面、背景とレイヤーを組み立ててからキャンバスに取り掛かります。下書きの段階で、頭の中では完成形がイメージできているんです」
またICHASU氏の作品を語る上で欠かすことができないのが、動物のようにも宇宙人のようにも見える生き物たち。海外アニメーションのエッセンスを取り入れながらも、どこにもないような確かな個性を感じさせます。
「キャラクターは現代世界に溢れてしまっているので、唯一無二のものを生み出すのは相当難しいです。それでもオリジナリティは追求していきたい。そのうえで生き生きとしたキャラクターを描きたいと思っています」
昔話にフォーカスしたモチーフなど、日本人らしいセンスを制作に取り入れるのも、独創性につながっているようです。
下弦の月
サイズ:約 幅250×高250×奥行15mm
素材:キャンバス、アクリルガッシュ
価格:46,200円
今回のテーマは「MOON」。新月、繊月、三日月、上弦の月......。古来より伝わる月の呼び名をタイトルにして、円形のキャンバスに描き上げました。
「今回出品する16個の月には、実際の月と同じように明るい部分と影の部分があります。光の部分は4色、影の部分は3色の色を用意し、その組み合わせで16の月を表現しています」
社会が大きく変化した昨年。月というテーマには、月の満ち欠けと同じように、落ち込んだ気持ちもまたいつかは元に戻るという思いがありました。
「今はたまたま気分が沈んでいるだけで、このままずっと元に戻らないなんてことはないと思うんです。それに必ずしも明るい気持ちでい続けなくてはいけないわけでもない。明るい気持ちの時も、暗い気持ちの時もあっていいんだと思います」
インタビュー中、ふと「常に人間関係や生き方について考察を巡らせている」と言葉を漏らしたICHASU氏。作品のもう1つの特徴は、一枚の絵の中で物語がつづられているかのようなストーリー性の強さにありますが、それは「人」に対する思いから生まれたものでした。
「絵画には、見る人の解釈が必ず含まれてきます。ストーリー性のある作品は、その続きを考えたり、背景を考えたりしながら一緒に楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています」
絵を通して出会うということ。
「私は描くことを通して人とつながってきました。今回の企画でご一緒するイブラヒム恵美子さんも、美術予備校からの間柄。絵を続けていたことで、またつながる機会が増えて嬉しいですね」
それは作品の鑑賞を通した新しい出会いも同様なのでしょう。
「アートってなんだかとっつきにくいような雰囲気があると思うんです。見てくださる方々に、親しみやすさを感じてもらえるような活動をしていきたいですね」
今後は立体作品など、創作のフィールドを広げていきたいと意気込むICHASU氏。ますます領土を広げていきそうなICHASU氏の世界を、「MOON」で感じてみてはいかがでしょうか。
「日本の美術を、あたらしく、おもしろく。」というキャッチコピーの三越コンテンポラリーギャラリー。ICHASU氏の作品のストーリーには、生まれ育った日本の要素が入ります。1コマ漫画のようなユニークで見る人が笑顔になる作品は、見る人の想像によりさまざまなストーリーが生まれます。ただおもしろいだけでない作品の制作は、非常に細かな計算された作業です。展示雰囲気や自身の精神面を加味したコンセプト作りから、綿密にレイヤーを考え鮮やかな発色をつくります。今注目の作家ICHASU氏の作品を、ぜひお楽しみください。
※価格はすべて税込です。
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