重要無形文化財保持者(人間国宝)陶芸作品特集
備前焼の伝統を守り、革新の連鎖を続ける陶芸家・伊勢崎淳氏

重要無形文化財保持者(人間国宝)陶芸作品特集 備前焼の伝統を守り、革新の連鎖を続ける陶芸家・伊勢崎淳氏

日本古来の陶磁器技術を現代に継承する「日本六古窯」のひとつ、「備前焼」。釉薬を使わず、土の成分や窯の温度によって生み出される揺らぐような模様、独特の野趣あふれる美しさを作り出します。伊勢崎淳氏は、備前焼の伝統技法と現代的な造形を融合することで備前焼の新境地を切り開いた陶芸家です。
※人間国宝は、重要無形文化財の技術保持者として各個認定された人物を指す通称です。

作品に合わせたこだわりの土作り

作品に合わせたこだわりの土作り

備前焼の産地として、多くの窯元が今なお残る岡山県備前市伊部。伊勢崎淳氏は、この地で備前焼の陶芸家である伊勢崎陽山のもとに生まれます。大学卒業後、父に師事し作陶を開始しました。

備前焼は、鎌倉時代には山間の窯で山土を用いて作られていましたが、室町時代に入り大量生産の時代を迎えると、窯は山麓に設置され、田土が用いられるようになりました。

土は採掘する場所によって粒子などが異なります。例えば、荒々しい肌質を作るには粒子の大きな山土が向いています。

伊勢崎氏は、土の特性を見極め、数種類の土を混ぜ合わせて熟成させることで、作品に最も適した土を作り出します。

「やきものは土作りが一番大切。土作りに作り手のアイデアが加わった時に感動が生まれる」。釉薬をかけず、土の性質がそのまま作品の味になる備前焼だからこそ、一つひとつの作品に対して並々ならぬこだわりを持ち、制作に臨むのです。

「窯変穴くり花生」

「窯変穴くり花生」
サイズ:幅13.5×奥行12.5×高36.5cm
価格:660,000円

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美術作品との出合いが表現の糧に

美術作品との出合いが表現の糧に

伊勢崎氏の作品の特徴は、現代美術を投影したかのようなモダンな造形美にもあります。

その背景にあるのは、陶芸家の道を歩み出す前、大学で彫刻や絵画といったあらゆるジャンルの芸術に触れたこと。さらに、世界各地を訪ね歩き、彫刻家のイサム・ノグチや池田満寿夫との出会いからも表現の幅を広げるヒントを得ました。

中でも、35歳の時の、画家ジョアン・ミロの創作の原点であるスペイン・カタルーニャへの旅は、自身の備前焼との向き合い方に大きく影響を与えました。

ミロは、故郷の風土を投影する作品を数多く残しています。その土地に長きにわたって伝わる芸術を後世へと継承する自身と重ね合わせ、備前焼の歴史から新たな表現を創り出す決意をしたのです。

「黒花生」

「黒花生」
サイズ:径18×高24.5cm
価格:1,100,000 円

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親から子へ、そして次の未来へとつなぐ

親から子へ、そして次の未来へとつなぐ

伊勢崎氏は、作陶を開始してから約10年の歳月をかけ、穴窯の復元にも取り組みました。穴窯は火の回り方により味わい深い模様を生み出すものの、大量生産ができないため、江戸時代以降は使われることはありませんでした。

実は、伊勢崎氏の父は穴窯復元に人生を捧げ、その志半ばでこの世を去ったのです。数百年の時を超え、今日穴窯で焼成した作品を私たちが目にすることができるのは、土と窯の組み合わせで生まれる創造の可能性を追い求めてきた、伊勢崎氏親子二代の情熱の炎が、絶えることなく灯され続けてきた証なのです。

伝統技術の尊重は欠かさないながらも、独自の造形美でこれまでにない備前焼を作り続ける伊勢崎氏。弟子だけでなく若手作家、学生などにも積極的に技術を教え、備前焼のさらなる発展への思いを込めながら継承に力を入れています。

常に備前焼の未来を見つめ続ける伊勢崎氏が生み出す、革新の一作をぜひご覧ください。

「茶盌」

「茶盌」
サイズ:径12.3×高9.3cm
価格660,000 円

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作品紹介

※お問い合わせ 03-3241-3311 (大代表)美術工芸担当まで。

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