色絵磁器作家
前田 正博氏インタビュー

色絵磁器作家 前田 正博氏に、プロフィールや作品への想いについてインタビューしました。

前田 正博(まえだ まさひろ)
1948年 京都府久美浜町に生まれる。
1975年 東京藝術大学大学院美術研究科陶芸専攻修了。
1988年 第38回日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞受賞。
1992年 日本の陶芸「今」百選展(パリ、三越エトワール/日本橋三越本店)。
2009年 第56回日本伝統工芸展 日本工芸会総裁賞受賞。
現在、茨城県立笠間陶芸大学顧問。日本陶芸美術協会 副幹事長。
色絵磁器とは?
一般的に色絵磁器とは、真っ白な下地に色絵の具で色や模様をつけて作成されます。しかし、前田氏は真っ黒な下地を作り、その上に模様を描き作品を仕上げていきます。

―なぜ黒地に?
前田さん:「日本では白地に描く事が当たり前だけど、同じ絵の具でも黒地にのせることで色絵磁器の印象が全く変わるんですよ。」
―確かに同じ絵の具でも、白地のものとは全然印象が違いますね。
前田さん:「絵の具は鉱物から作っていて、炎色反応によって色が変化するので焼き上がりまでどんな色になるかわからない。そこが楽しいんだよね。頭の中ではこうなるだろうと分かっているけど、現実は違うでしょ。だから窯だしが毎回楽しみで、飽きないんですよ(笑)。」

―模様もすごく特徴的ですね。どうやって描いているのですか?
前田さん:「1・2・3mmのマスキングテープを使い模様をつくり、色をのせてはテープをはがして焼く、を繰り返してます。色はムラをつけるために刷毛でのせていて、ムラによって表情を出しています。いかにきれいに自分なりのムラを出すかがポイントです。」
―何度も焼いて大丈夫なんですか?
前田さん:「ええ、磁器は一度本焼きすると固く焼きしまっちゃうんで、温度をゆっくり上げてゆっくり下げると複数回焼いても平気なんです。絵の具がガラス質ではなく洋絵具だから、より多くの回数焼くことが出来るんです。」
―何回ぐらい焼いているんですか?
前田さん:「素焼き・本焼き・黒地の焼き付けに加え上絵を描くのに3回ほど、6~7回は焼いています。」



―よく見ると表面に線が入っていますね?
前田さん:「磁器は真っ白でつるつるっとするのが特徴ですが、あえて表面を荒らして個性を出しています。」
―工程が多くて大変そうですね。
前田さん:「趣味だから(笑)」
―新しい作品を考えるとき、何を参考にされていますか?
前田さん:「ネタ探しは本屋ですね。植物・動物いろんなものから着想を得ています。」


―以前はサボテンや鳥など個性的な模様が多かったですが?
前田さん:「テーマは常に変化しているので、いずれまた復活します!」
―本日はありがとうございました。
前田さん:「ありがとうございました。」

伝統工芸の先生と聞くと少し緊張してしまいそうですが、前田氏はとても朗らかに笑う気さくな方でした。陶芸の世界は、生地を作る、絵付けをするなど工程ごとに分業で行われるのが一般的だそうです。前田氏は一からご自身で行います。「人に頼るのは便利だけど違う。自分でやると面白い。」と語り、心から楽しんで作品を作り上げているのだと感じました。この機会にぜひ、色絵磁器の世界に触れてみてはいかがでしょうか。