【インタビュー】川添微氏 自然との対話から生み出す一点もののエメラルドジュエリー

エメラルドの原石採掘からジュエリー製作まで、すべての工程を自身で手がけるジュエリーデザイナーの川添微氏。エメラルドの原石そのままの魅力を活かした独特なデザインのジュエリーは、世界各国の女性たちを魅了しています。2021年、伊勢丹新宿店で個展の開催を予定している川添氏に、エメラルドに対する熱い想いやバリ島でのライフスタイルに加え、普段から愛用しているソロピアスの製作についても話を聞きました。

 

 自ら採掘したエメラルドを、原石の個性を活かしたままジュエリーにする川添氏。コロンビアまで足を運び、エメラルドの原石の採掘から、デザイン、製作、販売までをすべて一人で行っています。現地でエメラルドの原石を選ぶときは、直感を信じ、迷いはないと言います。
「採掘して出てきたエメラルドの原石を見たその瞬間に、力を感じる石を選びます。原石を選ぶときに迷いはありません。目利きのこだわりとしては、陽の光の加減が変わる11時までしか見ないこと。中の傷のチェックはその後です」
 20歳の時に日本を飛び出し、バックパッカーとして訪れたインドネシアでガーネットやオニキスの加工を学び、オーストラリアの鉱山でオパールの原石の発掘に携わりました。作るなら3大貴石のダイヤモンドかルビー、サファイアの総称のコランダムかエメラルドだと思い、コロンビア鉱山でエメラルド原石に出会い強く惹かれました。実は、幼い頃から石を集めるのが好きだった川添氏は、その想いと原石との出会いに導かれ、日本に帰国後は東京にあるエメラルドの原石の輸入会社に就職。21歳でバイヤーになり、コロンビアの採掘現場で仕入れの交渉などを行い、経験を積みました。そして、2年足らずであっという間にトップバイヤーに上り詰めたのです。しかし当時、常に葛藤があったと言います。
「仕事柄、原石を加工しなければならなかったのですが、やればやるほど、どうして加工しないといけないんだろう、ありのままでこんなに美しいのに、という想いが強くなりました。その想いは今も持っています」

 

 27歳の時、原石を加工することへの疑問が募り、退社を決意。ニューヨークへ移り住み、独学でジュエリーの製作を始めます。その傍らで、世界的な宝石教育機関GIAニューヨーク校で学び、宝石鑑定士の免許を取得しました。
 33歳の時には、バックパッカー時代に知り合ったアメリカ人のデイビットさんと結婚し、長女のリビちゃんが誕生しました。
 やがて、仕事と子育ての両立に悩むように。そんな時、川添氏の母がすでに移住していたバリ島を訪れました。大自然に囲まれたバリ島は集落文化が根強く残っていて、村人全員で子どもを育てるのが常識でした。子育てをするならここしかない!と思い、家族で移住。すると、作風にも変化があらわれました。
「バリ島では、自然に接する機会が増えたので、自然のものからインスパイアされることが多くなりました。移住する前は『ビルディング』と名付けた作品もありましたが、今は『雨』など自然のものに。作風もネーミングも随分変わりましたね」

 

 世界中にファンがいる川添氏のジュエリー。デザインへのこだわりについて聞いてみると、意外な答えが返ってきました。
「デザインはしていないんです。発掘した時に、みつけた!これ!と感じて、それをそのままジュエリーにしています。だから、デザインで苦しむことはほとんどありません」
 使用しているエメラルドは、発掘したそのままの形であったり、叩いて割った無造作な切り口のままであったりと、自然のままの加工していないものがほとんどです。
「自然のままの力強さと輝きの繊細さ、その両方がエメラルドの素晴らしさです。光り方も色も透明度も、一つ一つ全然違う。身に付ける方にも、石の個性をそのまま感じてもらえたらうれしいです」
 理想とするのは、カットされたエメラルドと、原石のままのエメラルド、そのどちらも選べる社会になることだと言います。
「宝石としてのエメラルドと、鉱物としてのエメラルド、それぞれに美しさがあります。宝石店に行った時に『カットされた宝石がいいですか?それとも原石にしますか?』と選択できるようになってもいいと思うんです。エメラルドが何かは知っていても、その原石を知らない人がほとんど。それって、海には切り身の魚が泳いでいると思っているのと同じですよね」

 

 自身のジュエリーが、できれば日常の一部になってほしいと願っている川添氏。
「特別な日のためのジュエリーではなくて、その方のトレードマークとなるような、日常づかいされるジュエリーになってほしい。ジュエリーはもともと、お守り的な存在。人のためではなく、自分のために身に付けてほしいです」
 以前、お一人でプレゼントを買いに来た方をお断りしたこともあるのだとか。自分で見て触れて気に入った石とともに、時を刻んでもらいたいという理由からだそうです。
「プレゼントとして購入いただくのであれば、お相手の方とぜひ一緒に来てください。石には、身に付けた方の時が蓄積されていきます。使ううちについてしまうキズもその一つ。だから、一緒に買った思い出も刻んでもらえたらと思っています」
 理想は、ジュエリーが世代を超えて受け継がれていくことだそう。
「母親や奥様が付けていたジュエリーって、記憶に残っていきますよね。『お母さん、これいつも付けていたな』という思い出とともに娘が受け継いでいく、それが出来たら最高です」
 最近特に精力的に製作しているのは、ソロピアスです。「私自身、ソロピアスを愛用しています。私が付けているのを見たお客さまから欲しいというお声をいただいて、ソロピアスの製作を始めました」
 自分の好きなスタイルで楽しむことができるソロピアスは、さまざまな形のエメラルドの原石を楽しむのにぴったりです。「ピアスだからって2つ付ける必要はありません。片耳だけ付けても、左右の耳で別のピアスを付けても良い。どちらもエメラルドの原石なので色の統一感があり、ソロピアスを付け慣れていない方でも違和感がなく楽しんでいただけると思います」
 小ぶりなものから大粒のものまで、エメラルドの原石が品よく輝きを放つ唯一無二のアクセサリーたち。「作品には一つ一つタイトルがありますが、ご自身が見て感じたことからストーリーをふくらませて、エメラルドの原石との出会いを楽しんでください。お気に入りの原石が、きっとあるはずです」
 個展には、毎年、川添氏の人柄に惹かれ、エメラルドの独特なデザインや石にまつわるバックグラウンドに魅了された多くのファンが訪れています。2021年1月27日(水)~2月2日(火)には、伊勢丹新宿店アートギャラリーでの個展を予定しています。生命力あふれる川添氏の作品を見に、ぜひご来店ください。

※イベントは予告なく変更になる可能性がございます。予めご了承ください。

 

a.ソロピアス「Wind」

コロンビアエメラルド(ムゾー鉱山)、K18YG

「エメラルドがK18のイエローゴールドに映える大粒のピアス。
「カジュアルにもフォーマルにもぴったりです。ぜひ、あなたのトレードマークに」

 

b.ソロピアス「hujan」※インドネシア語で「雨」の意

コロンビアエメラルド原石(チボール鉱山)、K18YG

雨をイメージしたピアス。小さなエメラルドがポイントに。
「少し長いものは大雨、短いものは小雨です。『雨』をイメージして、少し薄い色のエメラルドを使っています。色が薄めのものは、カジュアルな服装に合うのでおすすめです」

 

c.ソロピアス「しだれ桜」

コロンビアエメラルド原石(ムゾー鉱山、コスクェス鉱山、チボール鉱山)、K18YG

3つのエメラルドが印象的なピアス。
「それぞれ異なる鉱山で採れた石を使っているので、色の違いが楽しめます」

 

ギャラリー展覧会情報

Honoka's Emeralds / ホノカエメラルド

2021年1月27日(水)~2月2日(火)
伊勢丹新宿店 本館6階アートギャラリー
※イベントは終了いたしました。

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