夫婦、家族、愛について。

1965年の活動開始から、今年で55周年を迎えるブランド〈Yumi Katsura/ユミカツラ〉。日本のブライダルの先駆者として、今なお精力的な活動を続けるブライダルファッションデザイナー・桂由美さんを訪ね、ブライダルのこと、夫婦や家族のこと、半世紀以上の活動を経て考える「愛」について…お話を伺いました。
55周年の記念すべきショーのテーマは、“Brilliant White Debut”
──55周年おめでとうございます。2月に創作活動55周年を記念してホテルオークラ東京で開催されたショー「2020 Yumi Katsura Grand Collection」が、大盛況だったと伺いました。
桂: 今回は純粋、清純、神聖、希望、心機一転…など。白色が持つイメージを誕生、七五三、成人式、新たなビジネスを起こされる方の起業式、そして人生のハイライトともいえる結婚式やその先に続く15年、30年、55年という節目、新たな旅立ちを「白」でお祝いしようという“Brilliant White Debut”というテーマを披露させていただきました。大変うれしいことに、多くの皆さまよりお祝いの言葉をいただきました。
──今回、〈ユミカツラ〉プロデュースの特別なパールネックレスを三越伊勢丹オンラインストアに特別にご提供くださいましたが、そのパールもまた「白」ですね。
桂:
30年目の結婚記念はパール婚と言われていますが、前回のショーでは結婚30周年を迎えた片山さつきさんに本真珠を施したドレスを着ていただき、ご夫婦でランウェイを歩いていただきました。
夫婦の愛、家族の愛…繋がりゆく絆を語るには、珠を連ねるパールが欠かせないですね。
今でも忘れられない、真珠にまつわるエピソード
──桂さんご自身のパールにまつわるエピソードなど、ありますか?
桂:
ありますよ!(笑)
私が日本ではじめてブライダルのお店をオープンする前のことですけれど。世界各国のブライダル、特に欧米のブライダルがどういうものなのか、同じ欧州でもイギリスやイタリア、フランスではそれぞれ婚礼のしきたりが違うという話を聞いていたので、これは、自分の目で見て確かめなければ!と。それで欧州を中心に一年をかけて20カ国ほど視察に行ったのです。
出国の前、たまたま私が長期視察に行くと聞きつけたある女性誌の編集部から、「そんなに長く海外にいるのなら、ちょっと外国の女優さんなどにインタビューをしてきてくれませんか?」と頼まれたわけです。取材ということなら雑誌社がアポイントを取ってくれるかと思いきや、それも私にやってほしいということで…。
──ということは、桂さんが交渉をされたのですか?
桂:
ええ、そうです。当時は私も駆け出しのデザイナーですから、私が会いたいと言ってもなかなか会ってくれないだろうと思ったのですが、日本からの取材だと言えばチャンスがあるかもしれない…そう思って、大使館に掛け合ってもらったのです。そうしたら、モナコのグレース・ケリー王妃が、日本からの取材ということに興味を持って、なんと会いたいと仰ってくださって! 大使館の方から、ほかの国の記者が37人取材を待ち焦がれているから、あなたはとてもラッキーだ、と激励を受けました。
グレース・ケリー王妃にオードリー・ヘプバーン、そしてソフィア・ローレン。インタビューさせていただいた女優さんはほかにもおりますけれど、この3名は特に印象的ですね。取材のとき、日本からの贈り物として選んだのがパールのネックレスでした。イヤリングとセットにして、3つ日本から持って行っていたのです。海外で勉強する身の私としてはとても痛い出費でしたけれど、日本から持って行ったそのパールを彼女たちに喜んでいただけたのは、今でも忘れられない素晴らしい思い出です。
ブライダルにはパール。そこには日本の「美」がある
──なぜ、日本からの贈り物に真珠を選ばれたのでしょうか?
桂: 日本の宝石といえばやはり真珠ですよね。何を贈ろうかと考えたとき、ブライダルの視察で行くという意味でも、真珠が真っ先に思い浮かびました。
──ブライダルにはパールということですが、なぜブライダルにパールが欠かせないのでしょうか?
桂:
光り輝くダイヤモンドをはじめ、エメラルド、ルビーなど美しい宝石はたくさんありますが、ああいう宝石は華やかな夜のパーティー、つまりはイブニングにふさわしい宝石ですよね。
「白のドレスを着たときに合わせるパールはとてもエレガント」といつも私は申しておりますけれど、ウエディングドレスは純白ですから、パールも非常に上品な光を放ちます。ダイヤはキラキラと光り輝いて美しいのはもちろんですが、優雅さ、エレガントさを必要とする純白のドレスを着たときに、宝石自体が自己主張をしすぎないことが重要です。なので、パールの上品な輝きはウエディングドレスとぶつかり合わず、着る人をますます輝かせることができる、ブライダルに欠かせないものだと思っています。
日本の「美」とは優雅さ、だと思います。上品な光をまとうパールはまさに日本の「美」ですよね。
──日本の「美」を象徴するといってもいい真珠。実はお母さまとのエピソードもおありだとか…。
桂: ええ。私たちの頃は今のように成人式を派手にお祝いするような習慣がなかったものですから、私が大学を卒業したときに、母から一連パールのネックレスを贈られました。「大人の女性」になった証、お祝いの品でしたが、それはそれは素敵で、そのネックレスは今でも使っているのですよ。
──お母さまからのプレゼントを今でもお使いになられているとは!当時の桂さんの喜びが目に浮かぶようです。そんな桂さんのパールへのさまざまな思いが、このネックレスにも込められているということなのですね。今回のデザインのテーマやこだわりについてお聞かせください。
桂: 「シンプルイズベスト」という言葉があります。パールのデザインは今までもいろいろと試みてきましたが、結局、シンプルなデザインが一番パール本来の美しさ、上品でエレガントな感じが生きてくると思っています。
キーナンバーは「7」。そのこだわりはパールネックレスにも
──今回のシンプルを生かす一連ネックレスには、〈ユミカツラ〉のどのようなこだわりが込められているのでしょうか。
桂: 〈ユミカツラ〉ならではというのでしょうか…。いつもなにかやるときに、5、6、7、8…どの数字を選んでもいいということであれば、なんとなく「7」を取る。今までそうしてきたように思います。 55年前のいちばん最初の記念すべきコレクションは“7つの個性をデザインする”というタイトルでした。
──ブランド初のファッションショーから「7」を選ばれていたのですね。
桂: はい。7人の女優さんたちで、7つの個性を表現しました。この方はかわいらしくてロマンティックな衣装、エレガントでシックな印象の衣装はこの方に…という感じで。個性の異なる7人に合わせたドレスを着せて、大きな話題となりショーは大成功しました。それからなんとなく「7」にこだわっているのですが、今回のネックレスも留め具から7つ目のラッキーセブンの場所にブルーダイヤモンドをあしらいました。
──ブルーダイヤモンドにもブライダルにかかわる特別な意味があるのだとか。
桂:
ヨーロッパに長く伝わる言い伝えがありまして、「花嫁は4つのものを身に着けると幸せを呼ぶ」と言われているのです。
ひとつは「サムシングオールド」で、母親から受け継いだ古いものを身に着ける。具体的には髪飾りとか場合によってはネックレスなどですけれども、それが母から娘への幸せのバトンタッチということですよね。
2つ目が「サムシングニュー」。これから始まる新生活を象徴するものといえば、大体がウエディングドレス。3つ目は「サムシングボロー」、借り物をひとつ身に着けなさいということですね。お金持ちの親しい方や裕福なおばさまなどからティアラや髪飾り、イヤリングなどの金属製のものを借りて身に着け、お金に困らないような生活をあやかる、という意味があるようです。
最後が「サムシングブルー」。白のドレスは花嫁の純潔を表していると言われますが、白いドレスを着た中に青いものが少しあることで白が余計に引き立つのです。どこかに青いものを身に着けるということなのですが、ブーケのリボンやペチコートの裾の刺繍、靴のリボンなど、私共のブランドでもいろいろな「サムシングブルー」を施してきました。今回のパールネックレスにも、パールのよさを損なわず、でもどこかにブルーの要素を盛り込みたい、ということでブルーダイヤモンドを施しました。控え目ではありますが、今までとはちょっと違った印象でこれもまた幸せを呼んでくれそうですよね。
桂由美さんが考える、「愛」とは
──色々お話を伺いましたが最後に今回のテーマ「愛」について。この時代だからこそ思う「愛」、人とのつながりについてお聞かせください。
桂:
55年この仕事をしてまいりましたが、その間、日本に限らず、世界中で目を覆いたくなるような災害、痛ましい事故や事件が起こりました。そういった大変な目に遭われてそののち結婚をする方々は、きちんとした結婚をしたいと思う傾向にあり、伝統に則ったフォーマルな結婚式をされる方が多いそうです。また、そういう方々は離婚をするケースも少ないとも聞かれます。今は新型コロナウィルスの猛威で世界中が恐怖と悲しみに覆われていますが、その中で人と人との繋がりを改めて再認識していく、今はそういう時代なのかもしれないという思いもあります。
日本の絆…家族愛、夫婦愛、それは爆発的な炎のように燃え上がるものでなくとも、静かに長く、それこそ結ばれてからお墓に入るまでの繋がりや慈しみが日本人の愛のかたちなのではないかと思うのです。その日本の儀、日本の愛のかたちを私は誇りに思っています。
〈ユミカツラ〉プロデュース。特別なパールネックレス
〈ユミカツラ〉あこや真珠ネックレスセット
真珠サイズ:8.5〜9㎜ 217,800円、真珠サイズ:9.5〜10㎜ 605,000円
※耳飾りはイヤリングもしくはピアスからお選びいただけます。
三越伊勢丹オンラインストア限定でロンデル部分を他の金属と比べて希少性が高いプラチナ製にいたしました。ブルーダイヤモンドを施し、シンプルながらもデザイン性を追求、どんなシーンでも活躍します。ロンデルは留め具から数えて7番目の「ラッキー7」の場所に位置し、ヨーロッパの言い伝えで花嫁を幸せにするといわれるサムシングフォーのひとつ、「サムシングブルー」をブルーダイヤモンドで表現しました。
【品質のこだわり】
真珠の命である巻きが厚く、輝き(テリ)が美しい、傷の少ない真珠を愛媛・三重・長崎の三大産地から選りすぐり、色合いは人気の高いホワイトピンクをセレクトしました。8㎜以上の真珠は大珠と呼ばれますが、本商品は8.5㎜以上の大珠のみを採用しました。華やかな大珠は首元での存在感がひと際です。

1965年、日本初のブライダルファッションデザイナーとして活動開始。日本のブライダルファッション界の第一人者として業界を牽引しつつ、世界各国30カ所以上の都市でショーを行い、そのイベントを通じてウエディングに対する夢を届けることから『ブライダルの伝道師』とも言われている。その功績が認められ1993年外務大臣表彰を、1996年には中国より新時代婚礼服飾文化賞が授与される。1999年、東洋人初のイタリアファッション協会正会員となり、ローマオートクチュールコレクションに参加。2003年からは舞台をパリに移し、以降毎年パリオートクチュールコレクションを開催し、2005年にパリ店をオープン。2010年、全米ブライダルコンサルタント協会より世界に4名のみの称号である『名誉会員』の称号が授与され、2013年10月、アジア・クチュール協会の設立に際し、創立メンバーに選任されるなど、グローバルな創作活動を展開。2019年「令和元年度 文化庁長官表彰」受賞。また、非婚化・晩婚化による少子化問題にも力を注ぎ、2007年からは「恋人の聖地」を認定・育成する運動を開始。さらに現状の結婚式に魅力を感じない等の理由から結婚式を挙げていないカップルに対して、生まれ育った地域の魅力を活かし家族の絆を見直すことをモットーとした市民参加型の結婚式「ふるさとウエディング」の推進や夫婦の絆を深めるためのアニバーサリーウエディングの推進活動など多岐にわたり活躍中。