~お茶のこころを伝える~ 父から子への手紙 令和六年・夏

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季節を五感で感じ、自然と一体となることで人生を豊かにしてくれる「茶の湯」の世界。
お茶をたしなむ父から愛する子にあてた手紙には、相手を思い遣るさり気ない心づかいや、現代人が心豊かに人生を送るためのヒントが散りばめられています。
お作法やしきたりはちょっと横において、暮らしの中で楽しむ「茶の湯」の世界を覗いてみませんか。

父から子への手紙 令和六年・夏

先日はたいへんお疲れさまでした。
無事に生まれた我が子を大切に抱いて3人が肩を寄せ合うようにして帰っていく後ろ姿は今でも忘れられません。長いようで短かった3カ月間、久しぶりに共に暮らせたことはお母さんもとても喜んでいました。

3時間おきにミルクを飲ませ、おむつを替えてむずかる子を寝かしつけることは、この年になると体力的につらいことでしたが、いよいよ帰る日の前日に、なんと朝まで続けて寝てくれたことは我が初孫の大物振りが垣間見えたように思いました。

その後の生活はいかがですか。

遠く離れた地で暮らすあなた方については心配が尽きることはありませんが、どうか健康でありますよう祈っております。

落ち着きましたらまたお茶を飲みに来てください。 父より

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子から父への返信

お父さん お母さん

3人無事に帰宅いたしました。3カ月間お世話になり本当にありがとうございました。

予定日より1カ月早く、2620gと少し小さく生まれご心配をおかけしましたが今ではぐんぐんと成長し、嘘のように夜もよく寝てくれています。
体力的なこともありますが何よりも、お二人から精神的なサポートをいただいたことに心から感謝しております。

お宮参りの後、お茶室でお祝いのお茶会をしてくださいました。
久しぶりのお父さんのお茶をいただいたことと、道具の取りあわせにお二人の温かい気持ちが込められていたことが本当に嬉しく、胸が熱くなりました。

子どもが大きくなったらお茶のお稽古に通わないかなと密かに思っています。他人の心が分かる子に育ってくれたらこれに勝る喜びはありません。
その時はお父さん、ご指導をよろしくお願いいたします。

お二人お元気でお暮らしくださいますように。

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~お茶のこころを伝える~
日本橋三越本店 美術部 茶道・工芸担当 三宅 慶昌

このたびは初めて赤ちゃんの誕生により家庭が大きく動いたようです。それぞれの手紙の行間から子どもを中心とした家族の動き回る様子が見えてきますね。

今は余裕がないとは思いますが、いつか今回のことをテーマにお茶会ができるとすばらしいと思います。初めてわが子(孫)を目にしたときの感動、抱き上げたときの思い、声、匂い、感触など題材に事欠きません。

今この時の一瞬を大切にしたいものです。

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三宅 慶昌
日本橋三越本店 美術部 茶道・工芸担当
大学時代に成城大学名誉教授・清水 眞澄先生(現・三井記念美術館館長)に師事し、主に日本美術についての研究、造詣を深め、博物館学芸員資格取得。1991年株式会社三越に入社。新入配属として日本橋三越本店美術部の工芸・茶道具を担当し、以来30年にわたり茶道工芸を中心に作家とお客さまとの橋渡し役を務めている。
また、入社とともに茶道入門、知識と人脈を広げ、人間鍛錬の糧として茶の湯の精神を学んでいる。
プライベートでは、妻と娘二人の父であるが、ともに独立し、たまにSNSで娘たちと交流するのが楽しみ。

展覧会のご案内

七代 浅見 五郎助 襲名記念展
□2024年6月26日(水)~7月1日(月) [最終日午後5時終了]
□日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊
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