~お茶のこころを伝える~ 父から子への手紙 令和五年・春

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季節を五感で感じ、自然と一体となることで人生を豊かにしてくれる「茶の湯」の世界。
お茶をたしなむ父から愛する子にあてた手紙には、相手を思い遣るさり気ない心づかいや、現代人が心豊かに人生を送るためのヒントが散りばめられています。
お作法やしきたりはちょっと横において、暮らしの中で楽しむ「茶の湯」の世界を覗いてみませんか。

 

父から子への手紙 令和五年・春

筆のイメージ画像
 

その後いかがお過ごしですか。
こちらは三月になり急に柔らかな空気を感じるようになってきました。花々が咲きみだれる春本番はもうすぐそこです。
仔犬を飼い始めたとのこと、さぞ癒されることだろう。お母さんに送られてくる君からの短い動画を毎日楽しみに拝見しています。
そう言えば動物をテーマとしたお茶会を若い頃に続けたことがあります。干支に因む動物ならば道具も豊富に見つかるが、「猫」の時には苦労したことを覚えています。
可愛いだけでなく文学的、哲学的なことも織り混ぜて、なかなか頭を使う作業なので君も一度やってみるとよい。
春はとにかく心が弾むものだね。お元気で。
父より

 
  • 犬のイメージ画像

     

     
 

子から父への返信

こちらも雪溶けに春の兆しを感じるようになってきました。お二人ともお元気ですか。
犬と暮らすようになり帰宅が楽しみになってきました。いずれ猫も飼いたいと思いますがまずは自分の干支である犬にしました。生後半年ですが毎日元気に走り回っています。

お父さんが子供の私たちにしてくれた動物をテーマとしたお茶会を覚えています。
たしか犬は主人でない人に吠える、という内容の掛軸でした。(「犬は主にあらざるに吠ゆ」)
今年の干支の「卯」ならば長い耳や飛翔、波文様や白い毛をイメージさせたものでしょうか。童話から亀の香合と合わせるのも面白そうですね。
来年は「辰」ですから鯉と滝を取り合わせたら仕事運が上がりそうです。
ほかの動物にもそれぞれ縁のある言葉や意匠があるでしょうから一度「猫」について調べてみようと思います。
どうぞお元気で。

 
  • 通次 智子作・今岡 三四郎作の作品画像

     

    通次 智子作 青釉追い兔茶碗
    今岡 三四郎作 鹿香合、梟香合
 
  • 浅見 与し三作の作品画像

     

    浅見 与し三作
    白猫香合、三毛猫香合、とら猫香合、黒猫香合
 
 
 
 

~お茶のこころを伝える~
日本橋三越本店 美術部 茶道・工芸担当 三宅 慶昌

動物を扱った茶道具はたくさんあります。干支のものはもちろん、近年のブームで猫やパンダなどかわいらしい意匠も増えました。テーマに沿って深くストーリーを組み立てていく作業は楽しいものです。
第7回目となるこのシリーズですが、父からもらった手紙に対してここまでお茶について語れるようになった子の成長を皆さまはどうお感じになりましたか。今後が楽しみです。

 
茶陶展覧会のご案内

還暦記念 五代 眞清水蔵六 茶陶展
□2023年3月21日(火・祝)~3月27日(月)[最終日午後5時終了]
□日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊

萩 新庄貞嗣 作陶展
□2023年3月29日(水)~4月3日(月)[最終日午後5時終了]
□日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊

利茶土の茶陶 in Tokyo 2023 ―今古未来に通ず―
□2023年4月5日(水)~4月10日(月)[最終日午後5時終了]
□日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊

※諸般の事情により、営業日・営業時間、予定しておりましたイベントなどが変更・中止になる場合がございます。必ず事前にホームページ等を確認してからご来店ください。

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三宅 慶昌
日本橋三越本店 美術部 茶道・工芸担当
大学時代に成城大学名誉教授・清水 眞澄先生(現・三井記念美術館館長)に師事し、主に日本美術についての研究、造詣を深め、博物館学芸員資格取得。1991年株式会社三越に入社。新入配属として日本橋三越本店美術部の工芸・茶道具を担当し、以来30年にわたり茶道工芸を中心に作家とお客さまとの橋渡し役を務めている。
また、入社とともに茶道入門、知識と人脈を広げ、人間鍛錬の糧として茶の湯の精神を学んでいる。
プライベートでは、妻と娘二人の父であるが、ともに独立し、たまにSNSで娘たちと交流するのが楽しみ。