黒子のバスケ<Kui Co.>×ISETAN
7つのカラーストーンジュエリーが誕生するまで

「黒子のバスケ」アニメ放映10周年を記念したコラボレーションを開催。今回、企画の目玉となる「キセキの世代」そして黒子 テツヤの高校の相棒・火神 大我をイメージした7つのジュエリーの誕生秘話を、ジュエリーデザイナーで<Kui Co.>代表の秋山 有希氏に、企画を担当した東(三越伊勢丹メディア芸術)がお話を伺った。
<Kui Co.>と伊勢丹との出会い
秋山氏(以下、秋山):<Kui Co.>も今年で7年目になりますが、ブランドのローンチイベントは伊勢丹でやらせていただきました。以来、毎年お邪魔しています。最近は主にカラーストーンを扱っておりまして、それで今回ご縁をいただけたのかな。
東:今回の企画にあたり、ジュエリーブランドのサポートや企画運営を手がけているNew Jewelry LLC.にご相談したところ、秋山さんをご紹介いただいたのです。「黒子のバスケ」はキャラクターの色が彼らの名前にも入っていますし、完全に特徴の一つになっているので、彼らのイメージカラーを体現するようなジュエリーを作りたいと思いまして。
秋山:そうなのですね!ありがとうございます。
東:もともとカラーストーンをメインで?
秋山:パーツとして使うことはありましたが、カラーストーンをメインにしたジュエリーはここ3、4年でしょうか。その頃ニューヨークで色石を取り入れたデザインを売り出したところ、まだカラーストーンを扱っているブランドが少なかったこともありますが、すごく反響をいただきまして。それからカラーストーンがメインになりました。
世界最大級のジュエリーマーケット“ジャイプール”
東:<Kui Co.>のジュエリーはインドで作られていると伺いました。
秋山:そうです。インドのジャイプールの職人さんとご縁があって巡り合うことができまして。インドは、約5000年前からジュエリーを作っていたそうなのです。タージマハルなど建築の中にもカラーストーンがふんだんに埋め込まれたりしています。特にジャイプールという街は、街全体がジュエリー産業で成り立っているところで、石をカットするところから最終的に形にするところまで、職人さんが手仕事で行っています。
東:今回のジュエリーもインドで作られているのですか?
秋山:はい。石を見つけるところからインドの職人さんとやりとりをします。
東:石もインドのもの?
秋山:原石の産地としてはインドではないものもあります。ジャイプールが世界最大級のマーケットなので、原石や半加工品が、インドのジャイプールに集まってくるのです。研磨する職人さんも大勢いらっしゃいます。

東:マーケットが確立されているのですね。
秋山:そうですね。石の粒の状態では、インドから世界中にたくさん渡っていますが、直接やりとりをすることで、より大きい石を入手できたり、オリジナルのカットができたりと選択の幅が広がります。今回の「黒子のバスケ」のジュエリーもそうしたメリットを活かしたデザインになっています。
東:伊勢丹でもジュエリーのバイヤー達がインドに出張に行っていました。
秋山:一昔前だとインドのジュエリーは廉価品のイメージがあったのですが、インド人ってやっぱり数字に強い。データなどの加工が本当に早いのです。
例えば、遠隔でやりとりする際に3Dモデルを作るのですが、当たり前のようにササッと作ってくださるのです。日本の職人さんですと、作業工程がアナログであったり、加工について細かく打ち合わせをした上で制作に着手するため、時間がかかる場合も多いのです。
東:新しい技術を取り入れるのが早いのですね。
秋山:3Dモデルがあればいろんな角度から確認できます。なので、現代の技術も取り入れてインドのジュエリーはクオリティを高めているという部分もあるかなと。

家族でドハマリした「黒子のバスケ」
東:秋山さんは「黒子のバスケ」はもともとご存知だったのですか?
秋山:いえ、実は最初は詳しくは知らなかったのですが・・・、お話をいただいたのが夏休みというタイミングだったこともあって、アニメを拝見したところ、横で観ていた子どもと一緒に大いにハマりまして!子どもは来年中学受験を控えているのですが、バスケ部に入りたいと言い出して、クリスマスプレゼントもバスケットボールに決まっています!
東:そんなドラマみたいな展開に!
秋山:はい。家族ともども「黒子のバスケ」一色の夏でした。リアルイベントにも足を運んだりして。
東:イベントも?ハマっていますね。笑
秋山:子どもが行きたがったこともありますが、ファンの皆さまがどのようなアイテムを手に取っているのか拝見したかったのです。
東:そうしてデザインのインスピレーションを得たのでしょうか。


秋山:はい。これだけ人気が長く続いている作品ですし、ファンの方の熱量もすごく高いので、やはり長く使っていただけるものをご用意できたらいいな、というのはその時点から考えていました。なので、お石をバスケットボール型などにカットするというよりは、普段のジュエリーとして使っていただけるようなものができたらと。
東:出来上がってきたものを見て、ちょっと感動しています。

秋山:お石の色味は、キャラクターの色が表現されているのですが、特に青峰とか火神とかは、髪の色の濃淡の部分を石のカットによる輝き方の加減で可能な限り忠実に表現したいなって思いました。
東:実はこんなにきれいにキャラクラーの色と石の色が合わせられるか、最初すごく心配していたのですけど。本当にイメージ通りです。カットもそれぞれで変えていただいたのですよね。それって重ねて付けたりしたときに、キャラクターそれぞれの違いが出たら面白いかなと。ちょっと無理なお願いをしてしまいました。
秋山:日本ではコストをかけないと難しいかもしれないですね。対応が可能な企業も限られますし、オリジナルカットでこんなにバラエティーがあると・・・。そこはインドだからこそですね。

キャラクターごとにこだわりの詰まったジュエリー
東:そうしましたら一つずつ見ていきましょう。まずは黒子から。
秋山:はい、カットのデザインは迷うまでもなく六角形に決めていました。
東:幻の“シックス”マン!
秋山:石の種類は“カルセドニー”と言います。色は天然のブルーです。
東:この透明感のある色味に、黒子のキャラクター属性がよく現れていますよね。黒子が透明のシックスマンとして試合に出場しているかのような。
秋山:だからほかのジュエリーと並べたときも相性がよくて。
東:本当にそうですね!


秋山:次に火神ですが、石の種類は“ガーネット”です。お石は最初からこれしかないな、と思っていたのですけれども、1センチサイズで探そうと思うとなかなか見つからないのですよ。
東:ガーネットでこのサイズ感、価格帯となると確かに・・・。
秋山:ジャイプールの中でもほんの数軒しか良いガーネットを扱っているお店がなくて。そのうちの一軒から仕入れることができました。ですから、クオリティに関しても自信を持ってご紹介できるアイテムです。
東:火神の赤ってどちらかというとちょっと茶にも近い深めの赤というか、赤司とはまた違う赤を出さなくてはいけないのですが、火神のイメージにピッタリの石だなと感じました。
秋山:お石の意味合いも*「真実・情熱」なんです。
東:まさに火神ですね!

東:黄瀬はいかがでしょうか。
秋山:こちらはシトリンですね。比べていただくと、やはり一番華やかな輝きを放つお石なので、キャラクターにもぴったりなイメージかなと。
東:カットがすごく綺麗ですね。
秋山:中にインクルージョンが含まれることもあまりないので、カットの美しさで光り輝くお石ですね。黄瀬くんのスター性みたいのが表現されているように思います。
東:この黄色の色味は元気をもらいますね。
秋山:そうですね。お洋服にも合わせやすいので、人気なお石です。


東:次は緑間をお願いします。
秋山:“ペリドット”は「夜会のエメラルド」と言われているぐらい夜の光の中でも輝く石と言われています。
東:明るいグリーンカラーがとても美しいですよね。カットも火神とはまた少し違う感じですね。
秋山:こちらも石の仕入れとしては大きいものも見つけるのが難しかったのですが、今回、このサイズでご提供できることになりました。身につけた時の存在感があり、楽しんでいただけると思います。こちらのお石の意味は、*「人間関係をサポートする」とか、*「平和をもたらしてくれる」という意味があるそうです。
東:なるほど、緑間がチームメイトに真ちゃんと呼ばれて慕われている感じとか、誠実なイメージに結びつきますね。

秋山:続いて青峰の“アイオライト”ですが、こちらも鉱物の性質上大きな粒がなかなかないのです。けれどもマーキス型であれば、お色味とサイズと楽しんでいただけるのではと思い、デザインを決めました。
東:カットがキャラクターを表していますよね。青峰はシャープなイメージのキャラクターなので。
秋山:お石の意味は*「道を示す」とか*「人生の道標」なんです。
東:青峰は黒子や火神を導くような役割を担っているキャラクターですものね!
秋山:お石の意味ありきで決めたわけではないのですが、偶然の必然というのがあるなと、すごく不思議な気持ちです。

秋山:次は紫原の“アメジスト”。紫原のキャラクター的にも石を大きくデザインしたいなと思って制作しました。
東:ボリュームのあるサイズ感が紫原にピッタリですね。このカットもありそうであまりないですよね。
秋山:三角形というのはやっぱりリズムがある形なので、一つでもバランスよく見えます。細かい話ですが、辺が直線じゃなくて少し曲線になっているので、柔らかい雰囲気にもなっています。お石の意味合いとしては、*「心の平安、安らぎ」などですね。
東:なるほど、確かに紫原ってお菓子が好きだったりと、癒してくれる雰囲気がある気がします。

秋山:最後は赤司ですが、お石自体は黒子と同じ“カルセドニー”をベースに着色しています。着色ならではの発色の美しさで店頭でも人気の高いお石です。
東:赤司の華やかさやカリスマ性等をしっかり色で表現していますよね。
秋山:表面に三角形のローズカットっていう面のカットが入っているので、光が当たったときにその面がキラキラと輝くカットになっており華やかな印象を与えます。カルセドニーの意味は、*「自信」*「達成能力」です。
東:中学時代のキャプテンで、もっとも強いキャラクターのイメージがある赤司にぴったりですね!ジュエリー一つひとつにちゃんとドラマがあって感動しました。今まで三越伊勢丹メディア芸術の取り組みの中で、カラーストーンはあまりチャレンジ出来ていなかったのですが、これだけ色をフィーチャーしている作品なのでカラーストーンにトライしたくて・・・素敵なカタチにしていただいて感謝しています。
ファンの方へ一言
東:アニメ化10周年という節目のアニバーサリーイヤーなのですよね。原作も含めればそれ以上の歳月に渡り応援していらっしゃるファンの方に、本当にアニバーサリーとして残るようなアイテムを伊勢丹で作れないかと考えて企画したジュエリーです。それをこのように形にできたことが大変うれしいですし、末永くご愛用していただけたらと思います。
秋山:そうですね。私も同意見です。長く使っていただけるデザインと品質だと思いますので、皆さまが作品やキャラクターを愛していらっしゃるのと同様に、ジュエリーも愛してくださることを願っています。
東:ありがとうございました!

©藤巻忠俊/集英社・黒子のバスケ製作委員会
©「黒子のバスケ」アニメ10周年プロジェクト
*:石の意味には諸説ございます。
※取材は感染対策を十分行った上で実施しています。