初音ミク × <西川> 創業450年以上の歴史を誇る老舗寝具メーカーのDesign Laboで開発の舞台裏に迫る!

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「百貨店ならでは」にこだわったアイテム展開を行なった今回の「初音ミク × イセタン」コラボレーション。その中でも室町時代創業の寝具メーカーである<西川>は代表的な存在。そんな老舗中の老舗である<西川>で、今回のプロジェクトのデザインチームを率いる川井 浩史チーフに、日本橋の東京オフィス内にあるDesign Laboにてお話を伺いました。

まずは今回のコラボレーションアイテムのデザインについて、どのように取り組まれたのかお伺いできますか?

今回は「羽毛肌掛けふとん」と「ボルスター型クッション」の二つを提案させていただきました。チーフである僕とクッション担当、そしてふとん担当のデザイナーの3人で取り組みました。彼女たちに僕の知っている知識を伝えて、彼女たちが解釈をしながら一緒にデザインを仕上げていきました。

初音ミク×イセタンの西川コラボレーションアイテムのイメージ画像
コラボレーションアイテムは 三越伊勢丹オンラインストア で好評販売中。

川井さんは以前から初音ミクをご存知だったのですね。

そうですね。実際プレイをしていたわけではないのですが、実は私も若い頃に宅録*をして音楽を作っていました。ですから、2000年代に初音ミクが登場した時に、当時SNSの流行の波に乗って自主制作の音楽を作る人達や、イラストレーション・フィギュアなど、幅広い分野で一般の人たちの発表の場になっていっていることは理解していました。

*:宅録=専門のスタジオを使用せず、自宅に機材を揃えて収録を行うこと。

当時の初音ミクに対する印象は?

個人の方による二次創作で、多様な人たちが多様なカタチの初音ミクを作るというオープンなクリエーションの輪が世界まで広がっていることが新しいなと感じました。
ソフトやコンピューター、そしてソーシャルネットワークなどの発展を背景に、制作と同時に発表の場があるということはすごいことだと思います。僕らの若い頃の自宅で制作していた世界とはちがうなと(笑)。
また、作ったものを発信するというクリエイターの方の勇気がすごいですよね。
誰しも自分が作ったものを見せるということは少なからず恥ずかしい気持ちがあると思いますが、自己満足で終えるのではなく、他人に見せて共感してもらい、それが国境を越えて広がっていく。それはとても素晴らしいことだと思います。

余談ですが、初音ミクのカラーリングを見た時に、80年代にヤマハさんから発売されたシンセサイザーの名機DX7がデザインに取り入れられていることはすぐに分かりましたよ!
きっと開発をされた方は僕と同世代なのでは・・・。

カラーリングから初音ミクと80年代の繋がりを分析する川井氏の画像
カラーリングから初音ミクと80年代の繋がりを分析する川井氏。

クッションのデザインに80年代のテイストが入っているのは、そういった背景がありますか?

その通りです。初音ミクは2000年代ですが、そのきっかけとなった80年代を思わせるノスタルジックなカラーにしたらどうかと。いきなりキャラクターから入るのではなく、当時のニューミュージック・・・今でいうところのシティポップの影響を受けたグラフィックやカラーリング・アイコンを調べるところから始めました。
ボルスター型クッションはインテリアのアイテムですので、ポップな明るめの印象にまとめています。

ボルスター型クッションのデザインを決めるために作成した資料の画像
デザインを決めるために作成した資料を特別に見せていただいた。

羽毛ふとんはいかがですか?

ふとんはやはり就寝時に使用するアイテムなので、キャラクターもシルエットにするなど落ち着いた雰囲気にすることを心がけました。
初音ミクの登場から16年ということで、初音ミクはもちろんクリプトン*さんのキャラクターたちは長年愛されているので、お客さまの層も幅広いでしょうから、キャラクターも特定せず復数のメンバーにしようと担当のデザイナーと話をしました。

*:クリプトン・フューチャー・メディア=初音ミクを生み出した会社。

これらのアイテムを選んだ理由を教えてください。

たとえばクッションは、スクエア型のものはよく見かけますよね。それにスクエア型はソファーなどリビングで主に使うアイテムですが、こちらのボルスター型は枕の後ろに入れて、寝る前や朝起きた時にベッドでくつろぐためのアイテムです。
そうしたことから寝具との親和性も考えてこのボルスター型を採用しました。

次にふとんですが、<西川>という名前が付く以上、代表的なアイテムであるふとんは外せないかなと。
また、最近のプリント技術の向上で、複雑なイラストレーションや色の変化も再現できるようになってきたというのも一つの理由です。例えばタオルケットなどパイル地のものにはどうしてもきれいにプリントできませんが、ふとんはその点で適していると言えます。
ふとんの質や値段は本当にピンキリですが、今回は比較的手に届きやすいものを選んでいます。

初音ミクの部屋での西川のアイテムのイメージ画像
「初音ミクの部屋」(伊勢丹新宿店での企画展時に登場)でも存在感を放っていた<西川>のアイテム。あなたの部屋もミク仕様にしてみては?

制作を進めるうえで苦労されたことは?

うちの社内では初音ミクを知っている人は少なかったのと、最終的な商品を作る商品部のチームは、どうしても現実的なロットや販売のポテンシャルがどのくらいあるのかということを気にしますので、そこは僕の方からもコンテンツの魅力やチャレンジする価値など企画の説明を説得の意味も含めて話しました。

「メディア芸術」と呼ばれるゲームやアニメーションなどのコンテンツとのコラボレーションについて、どう思われますか?

キャラクターやコンテンツとのコラボは初めてではなく、過去にもコラボアイテムを作ってきた経験はありましたし、今でもキャラクターライセンスはたくさん取扱っています。
有名なキャラクターは生活のいたるところにいますし、決して特別なものではないと考えています。
また、今やアニメーションとハイブランドがコラボレーションするなど、日本のコンテンツは世界に認められています。
そのうえで、今回の初音ミクは大変人気のあるコンテンツですし、弊社のアイテムとの掛け合わせは面白いのではないか、とお話が来たときに感じました。

西川の川井 浩史チーフのインタビューのイメージ画像

どのようなコラボレーションでしたら、今後も取り組んでいきたいですか?

そうですね。<西川>のアイテムについていえば、必然性があるものの方が皆さまに受け入れてもらえるのではないかと考えています。
つまり、アニメーションやゲームのシーンで実際に使用されているものを再現したアイテムなどですね。そういった取り組みは面白いと思います。
あとは、組み合わせの意外性。今回の初音ミクと伊勢丹さんの企画もそうだと思いますが、「伊勢丹が初音ミクとコラボする!」という驚きが話題を呼ぶと思います。

川井さんのデザインチームの目指すものは?

特に大きな会社になると自分たちだけではモノづくりをすることはできません。
しかし、そういった中でもさまざまな意見に翻弄されず、最初に言い切ったものを最後まで貫き通すことをデザインでは大事にしたいですね。
そのためには、「なぜそうなのか」という説得力のある理論構築が必要になります。
僕も伊勢丹さんには月に1回以上は必ず訪れていますし、リビングフロアだけでなく地下から最上階まですべてのフロアをチェックしています。
会社のデスクやネットだけでは得られない情報をインプットすることが大事だと思います。
見る力を養うということですが、しかし単に見れば良いということではなく「大事なことは何か」を汲み取ることが一番難しいですね。

西川の東京オフィス4階のDesign Laboのイメージ画像
<西川>東京オフィス4階のDesign Labo。時間に合わせて光や音が調整されるなど心地よく働ける環境が整っている。地下には仮眠ができる「ちょっと寝ルーム」も。
Design Laboの一角にあるデザイン室のイメージ画像
Design Laboの一角にあるデザイン室。ここから<西川>のデザインとアイデアが生み出されている。

私たちも川井さんのデザインチームと<西川>さんのミライを楽しみにしています。

ありがとうございます。<西川>のアイテムはほぼすべてインハウス(内製)で根幹となるデザインを行っています。これからも、皆さまのより良い睡眠をデザインで支えていきたいと思います。

お話を伺った方

川井 浩史のプロフィール画像
川井 浩史
西川株式会社
イノベーション・マーケティング戦略事業部
ブランド戦略部 デザイン企画担当
チーフ

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