「ポーの一族」×三越伊勢丹
エドガーとアランの永い旅に思いを馳せて。機能性とデザイン性を兼ね備えた大人のための旅行バッグブランド<EMILYSSA/エミリッサ>が三越初登場。
豊富な海外渡航の実経験に基づいた機能性と、旅行先でもおしゃれを楽しみたい大人のためにデザイン性も兼ね備えた<EMILYSSA/エミリッサ>の旅行バッグ。そんな<エミリッサ>を運営する株式会社Kokihanada代表の志太 瑛巳里氏に、今回『ポーの一族』をイメージした3種類のバッグのデザインを依頼。そのこだわり抜かれたもの作りの背景を、日本橋三越本店の担当バイヤー石井が渋谷のオフィスで伺いました。
原点は、祖母から受け継いたトートバッグ
石井:本日はよろしくお願いいたします。まずはブランドについてお伺いしたいのですが、志太さんはどうして<エミリッサ>を立ちあげようと思われたのでしょうか。
志太氏(以下 志太):実は<エミリッサ>の前にはセレクトショップをやっていました。ロサンゼルスへ留学する機会があり、その時にできたお友達がファッションのお仕事をしていて、買い付けのやり方などを学校に通わずとも学べたのです。そこで、日本に帰国した際に、自分用に買っていた服を少しずつ売っていこうと。
ですが、ファストファッションの波が日本にも来て価格面でまったく勝てなくなり、次の展開をどうしようか悩んでいたとき、自分が不便を感じていた旅行バッグを作ろうと思ったのです。今年で6年目になりますが、コロナ禍の3年はほぼ活動ができなかったので、これから再スタートですね。
石井:どういった点に不便を感じていたのですか?
志太:祖母が使っていたハイブランドのトートがあって、機内持ち込みにちょうどいいサイズ感と薄さで、私も長く使わせてもらっていたのです。
ですが祖母が購入してから30年以上経ち、流石にボロボロに・・・。同じようなものを探したのですが見つからなくて。そこで自分で作ろうと<エミリッサ>を立ちあげて、最初に作ったのがこちらのバッグです。
志太:最初はもの作りに関する知識はゼロどころかマイナスで、革にすればいいのかナイロンにすればいいのかも分からない状態でした。革屋さんの門を叩いては門前払いされたりするなかで、とにかくバッグを作りたいといろいろな人に言っているうちにご紹介いただいたのが今のメーカーさんです。
石井:生地に高級感がありますよね。
志太:旅は軽量性が一番大事なので生地はナイロンにしようと決めました。こちらのタイプは真珠粉を入れて光沢感を出しています*。既製の生地サンプルもたくさん見せてもらったのですが気に入るものがなくて、ならば自分で作ろうと。カジュアルでもセミフォーマルでも持てるようなナイロンバッグを作りたかったのです。
*:今回のコラボアイテムの生地とは異なります。
大人が日常で使えるデザインに
石井:<エミリッサ>のバッグは、ハイブランドも御用達のメーカーさんが手がけており非常に質が良いというのは以前から感じていました。
『ポーの一族』の読者は大人の方が多いので、堅牢性と機能性を兼ね備えたアイテムが求められていると思いましたし、小学館さんとも「作中でエドガーとアランの二人がさまざまな土地や時代を巡っていることから旅に関連したアイテムを作りたい」と話していて、志太さんのことを思い出したのです。
志太:このようなコラボのお話は初めてだったので、なぜうちに声をかけてくれたのだろうと思っていました(笑)。でも、すぐに単行本を買って読んでみたら「旅だな」と納得しましたね。
石井:好きなシーンはありましたか?
志太:ヨーロッパの文化が好きなので、エドガーとアランの雰囲気や服装など見ていてとても楽しかったです。
石井:作品以外で参考にされたものはありますか?
志太:宝塚は以前に舞台化されていたこともあり、スタッフと一緒に有楽町の宝塚に行って、どんなアイテムが販売さているのかチェックしましたね。
そのうえで、いわゆるキャラクターグッズのようなものではなく、「大人が普段使えるデザイン」にしたいと考えました。バラがとにかく印象的な作品ですから、赤と緑を取り入れながら落ち着いた配色にまとめつつ、萩尾先生が描かれたバラの意匠を金の刺繍でアクセントに入れています。
石井:小学館さんからも「大人のファンの方が持ち歩けるようなコラボ商品を三越と作りたい」と仰っていただいたのが発端としてあるなかで、今回のアイテムはとてもぴったりだと感じています。
志太:ちなみに金具も既製ではなくオリジナルの馬蹄のデザインで、今回のコラボバッグにもこの金具を使用しています。
石井:『ポーの一族』でも馬車は象徴的ですよね。
「あったらいいのに」を形にした機能性あふれる3つのコラボレーションバッグ
志太:今回は3種類のバッグをご用意しました。
一つ目のトートバッグは、もともとは「グランピング施設内で使うポーチを作ってほしい」というリクエストから生まれたものです。
その施設は、少し離れたところに温泉やワイナリー、乗馬クラブなどがある施設でして、施設内をこれ一つで動けるような仕様にしました。ポーチ部分にアメニティを入れていただきつつ、背面を開くとトートにもなるのでお財布や必要なものを入れていただけます。
石井:今回のコラボレーションではバンパネラの二面性をイメージして2色バージョンにしていただきました。
石井:二つ目のポーチも、内と外で色味が分かれているのですね。
志太:5つポケットがあり、いろいろな使い方ができるポーチです。
私は海外に行った先で日本円と外貨を分けたり、レシートやパスポートを入れたりしています。
石井:5つも?それなのにかさばらない感じがしますね。コンパクト感がすごくいい。
志太:よく雑誌の付録についているポーチってありますよね。意外と無駄が削ぎ落とされて使いやすかったりして、結構参考にしています(笑)。
石井:三つ目はボディバッグですね。
志太:はい。こちらは旅行の際に、よくパスポートやお財布だけをアウターの下に隠し持つバッグから着想を得ています。
志太:私の友人がお財布を盗まれたり、母もパスポートを盗まれたりしていたので、貴重品を肌身離さず持てるようなバッグがほしくて。
ですが既製のものはカジュアルなものが多いので、せっかく旅行先できれい目な格好をしているのにバッグだけカジュアルになるのが残念に思い、こちらを作ったのです。
志太:パスポートはもちろん、カード入れと小銭入れ、お札も折れば入れられるようにしています。また、裏面はケース越しにスマートフォンを操作できます。
石井:本当だ、すごい。
志太:旅行先では地図アプリを見たり、お買物リストを見たりしたい時って頻繁にありますよね。でもバッグから出すと盗難や紛失のリスクがあるので、肩にかけたまま操作できるようにしたかったのです。
石井:貴重品はバッグから出すとリスクが高いですからね。
志太:旅行に行く際には本当に推せるアイテムです。百貨店の販売員さんのバッグとしても良いと思うので、いつかプロデュースしたいとか思ったりしています(笑)。
石井:いいですね!これはほしいです。今は業務用のスマートフォンも持っていますから。
『ポーの一族』の香りを感じながらお出かけしてほしい
石井:本当に日常で使っていただける機能性の高いアイテムたちですね。「これが欲しかった」というのが形になっている。旅に頻繁に行かれるからこそ思いつくアイデアですね。
志太:今回の取り組みで、ファンの方を想像しながらそこに向かって何かを作っていくことがとても楽しく感じました。これからもこうしたお話があれば挑戦していきたいですね。
石井:それでは、最後に作品のファンの方に一言メッセージをお願いします。
志太:生地はもちろん、縫製や金具も含めて日本製にこだわって作っているので、時と場所を選ばず長くお使いいただけると思います。『ポーの一族』の作品を感じながら一緒に楽しくお出かけしていただけたら嬉しいなと思います。
石井:ぜひ、旅行にも持って行っていただきたいですね。ありがとうございました。
お話を伺った方
当時セレクトしていたブランドが日本に続々と出店をし始めたタイミングで現在の鞄ブランド<エミリッサ>の構想を練り始める。
セレクトショップの買い付けや、元々旅が好きで国内外さまざまな土地や国に行ったなかで実際に旅をしていて不便に思ったことをデザインに落としこみ、旅をテーマに場所や服装を選ばす、ありそうでなかった機能を兼ね備えた日本製のバッグブランド<エミリッサ>を2017年にローンチ。
現在は製品も作りながらOEMにも力を入れている。