もし初音ミクが銭湯を好きだったら!?銭湯・サウナカルチャーを牽引するブランドが手掛ける初音ミク × 銭湯アイテム

渋谷の銭湯「改良湯」にて、<Chain&co./チェーンアンドコー>クリエーティブ・ディレクターのRYO USHIJIMA氏(写真右)に、三越伊勢丹サウナ部の創設者の一人でもあるCCO(Chief Comment Officer)の田代(写真左)が、制作の舞台裏を伺いました。
ブランドについて教えてください。
5年ほど前にhotel tokyo、こにやまこにたろう、そして僕の3人組から始まったブランドです。最初はデザイン会社としてスタートしましたが、今ではデザインに加えてプロダクトの制作も行っています。
銭湯に着目したきっかけは?
デザイン会社としてスタートしてしばらく経った頃に、初めて挑戦することばかりで気持ちが沈んだ時期があり、気持ちを切り替えるためにアメリカに行きました。そこでロサンゼルスにある美術館に立ち寄った際、バルーンアートを金属で再現した作品に出会って、ある素材を異なる素材で表現する面白さを感じました。
一方、僕は小学校のときからずっと銭湯に通っていたので、銭湯という文化にもともと思い入れがあり、日本へ帰国して銭湯へ行った時に、ふとロッカーのキーをアクセサリーにしたら面白いのではないかと。そこでアクリルという異素材で制作したのがこちらの「銭湯ブレスレット・アンクレット」でした。

こちらのアイテムが始まりだったのですね。
そうです。最初は資金もあまりなかったので、小ロットで作ったのですが、ECサイトですぐに売れて。雑誌の出版社さんから掲載させてほしいというオファーがあり、それをきっかけに出会った銭湯ブランドさんが、ちょうど渋谷での銭湯・サウナ系のイベントを企画していて、そこに出品させていただいたんです。そこでも約200個がすぐに売れたので、それから横展開で銭湯・サウナのアイテムを作り始めました。
今回の初音ミク企画に參加したきっかけは?
「伊勢丹サウナ館*」に出展した時に、伊勢丹バイヤーさんに見つけていただいて。色の使い方やプロダクトの世界観が初音ミクに合っているとのことでお声掛けいただきました。
*:伊勢丹サウナ館 = 三越伊勢丹サウナ部が手掛けたリアルイベント。これまでに3回開催され、約60ブランドが集まる人気のイベントとなっている。
初音ミク企画の話があった時の感想は?
構想段階からワクワク感がありました。僕自身、元チューバ奏者でして、音楽学院に在学中は新しい音楽を聴いておきたいと思い動画配信サービスもよく見ていましたし、「初音ミク -Project DIVA-」もプレイしていました。実は初音ミクの曲をチューバで“吹いてみた”動画を投稿していたこともあります。ですから「この企画はやりたい!」と思いましたね。
アイテム化はどういったプロセスで?
日本を代表するカルチャーとして、DTM*の枠で収まらないアイドルとしての初音ミクを大事にしたいという思いで開発に挑みました。まずは「勉強させてください」とお時間をいただき、初音ミクの動画を見返したり、ゲームでは「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」はもちろん、ちょうどその頃ゲームセンターで初音ミクコラボがあったので足を運んで実際にプレイしてフルコンしたりするなど、初音ミクを本気で好きになるところから始めました。
*:DTM = デスクトップミュージック
それから大阪の「初音ミク JAPAN TOUR 2023 〜THUNDERBOLT〜」にも行って、ファンの目線で初音ミクを体感しました。実際に足を運んで改めて感じたのは、ファンの人たちが初音ミクをバーチャルなのに「人」として認識していた点です。初音ミクという架空のキャラクターをバーチャルアイドルへと昇華させたファンと、クリプトン・フューチャー・メディアさんの凄さを感じました。なので、キャラクターアイテムではなく、「初音ミク」というアイドルのファンが欲しいものが作れたらと、自分なりに解釈をして誕生したのが今回のアイテムです。
実際に制作されたアイテムを見せていただけますか。
まずは冒頭でも話に上がった「銭湯ブレスレット・アンクレット」です。
こちらは2018年からブラッシュアップを続けているシリーズをベースに、初音ミクの「01」をレイアウトしました。デザインとしてはシンプルですが、実は紫外線を浴びると透明な色がサイバーな紫色に変わるカラーシフターの素材を採用しました。

SENTOU bracelet/anklet COLOR SHIFTER 2,090円 商品を見る
次は、光る「KIFUDA」です。銭湯の下足札としてよく見かける木札をイメージしたアイテムで、今回は木目の代わりに電子回路のデザインを配しています。銭湯ブレスレットを手首につけ、鞄にこちらをつけるとやんわり銭湯コーデを演出できます。

光り方が改良湯さんの雰囲気に合いますね。こちらも工房で作っていると聞きました。
そうです。レーザーカッターで切って、色入れして、面取りして、磨いて・・・と結構手作りです。安いからといってあまり海外の工場に発注したくなくて。
Tシャツのデザインも斬新ですね。
動画配信サイトの画面に着想を得て、流れていくコメントも含めて一からデザインしました。初音ミクがもし銭湯が好きだったらという“もしもシリーズ”として作りました。

最後にタオルですが、こちらも“もしもシリーズ”の一つです。「初音の湯」という銭湯があったらいいなと。銭湯やライブの時に使っていただき、洗濯して干す時に広げると・・・ネギのように見えるタオルになっています。

初音ミク × イセタンの会場にもお越しいただきましたが、いかがでしたか?
もう、ヲタクカルチャー = ダサいというレッテルが貼られていた時代ではないと思います。そういったステレオタイプな垣根を崩しにかかっている三越伊勢丹とクリプトンさんの想いを感じられる空間でした。企画のために作られた楽曲が流れていたのにも驚きましたね。
今後、目指していきたいことはありますか。
以前働いていた滋賀のボードゲームカフェでは、サードウェーブコーヒーが飲めるコーヒースタンドがありました。そこに集まる人はもともとボードゲームにしか興味がなかったはずなのですけれど、コーヒースタンドがあるのでサードウェーブコーヒーを頼む。するとどんどん舌が肥えていくんです。このように、あるカルチャーにしか興味がなかった人が知らぬ間に違うカルチャーの良さに気づいていく。そうした動きを自然に作り出すクリエーティブをこれからも展開していきたいと考えています。
今まで“ディグ”してきたものと、さらに別の“ディグ”していたものからエッセンスを抽出して繋げていく。僕たちはこれからも人生を豊かにするカルチャーをディグりつづけたいと思います。

私たちも<チェーンアンドコー>のミライを楽しみにしています。
三越伊勢丹さんからは今後もアニメ・ゲームなどさまざまなコンテンツのお題をいただき、そのコンテンツを全力で好きになったうえで「ファンならコレが欲しい!」を具現化するアイテム作りでご一緒できると嬉しいです。そのコンテンツのファンの方々が三越伊勢丹さんのアイテムを買うことにより、ファッションに興味がなかった人でも知らぬ間にファッション性の高いモノを手にし、目が肥えていく。スッと文化とファッションの距離感が近づいていく場が三越伊勢丹さんでもあると思っているので、今後どのようなコンテンツにフォーカスするのか、どのように落とし込むのか、これからの展開も本当に楽しみです。
お話を伺った方

インタビュアー

取材協力
改良湯
人・文化が交差する銭湯として、世界中から多種多様な人と文化が集まる渋谷にある銭湯。炭酸泉風呂やサウナなどもあり、心も身体も整える場所として人気のスポット。
住所:東京都渋谷区渋谷東2-19-9
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